「玄関と洗面所の動線が短い」ということとは別に、この間取りにはもうひとつ優れている点があります。それは感染者を隔離しやすい間取りであるということです。万が一家族が新型コロナウイルスに感染し、自宅で療養することになった場合、感染者と他の同居者は可能なかぎり生活空間を分けることが推奨されています。
この間取りの場合、寝室の前に食事が用意されていれば、感染者は寝室と水回り(洗面所、トイレ、お風呂)だけで生活することが可能です。感染者が水回りを使用した後の消毒を怠らなければ、家庭内感染のリスクを抑えることができるでしょう。
「この間取りは一昨年設計した集合住宅の間取りです。コロナ対策を考慮して設計したわけではありませんが、中庭を囲む平屋系の間取りは、コロナ対策の理にかなっていると思います」
「玄関を入ると土間空間のワークスペースがあり、その奥に洗面所をはじめとする水回りが配置されています。コロナ対策を考えるなら『玄関と洗面所が直行動線』の間取りが理想的ですが、この間取りならワークスペースをレッドゾーンに含めてゾーニングすることができます」
ただ一点、この間取りには「洗面所を通らないとリビングに辿り着けない」という難点があると小木野さんはいいます。
「一般的に、洗面所を通らないとリビングに行けない間取りはありえません。将来的にはワークスペースとリビングの間に扉を設け、行き来できるようにしたほうが便利でしょう」
コロナ対策を目的としたゾーニングも、いき過ぎるとイレギュラーな動線になってしまうことがあるようです。リフォームなどを検討している人は、コロナ対策と「住みやすさ」を両立できる間取りを考える必要がありそうです。
(第3回に続く)
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