簡単なのに本格的! スパイスから作るカレー[第4回]

【お肉不使用】ほうれん草とパニールのサグカレー

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インドで人気のサグカレー

 カレーの聖地・インドは、ヒンドゥー教徒がおよそ8割。ほかにもイスラム教やシーク教、仏教など、さまざまな宗教の信者がいます。戒律で肉食を禁じているものもあり、インド人の3割近くがベジタリアンだといわれています。

 当然、ベジタブルカレーは大人気。日本でもよく知られているのは「サグカレー」といわれる、ほうれん草を使った緑色のカレーでしょう。

 ちなみにこのサグカレー、インドでは「サグ」という菜の花のようなからし菜の一種を使ったカレーのことなのですが、日本では、ほうれん草や青菜を使ったカレーを一般的にサグカレーと呼んでいます。インドではほうれん草のことは「パラク」といい、ほうれん草のパラクカレーには、あまりお肉を合わせないようです。

 そして一口にベジタリアンといっても、スタイルはさまざま。インドではラクト・ベジタリアン(乳製品は食べる)、ラクト・オボ・ベジタリアン(玉子や乳製品などを食べる)というベジタリアンも少なくありません。動物を苦しめない牛乳や玉子はOKという解釈です。

 今回は、お肉の代わりにたんぱく質が豊富な乳製品・チーズを使います。インドの代表的なチーズ「パニール」を使ったほうれん草のカレーは、インドでも一般的だそうです。

新しく使うスパイスは
青唐辛子とカスリメティ

 今回のスパイスのポイントは、青唐辛子です。4月の末くらいから、国産の青い唐辛子が八百屋さんに出回ります。この唐辛子が熟すると赤い唐辛子、それを乾燥させたものが鷹の爪、粉にしたものがレッドチリパウダーです。青唐辛子は赤唐辛子にはないシャープな香りと辛みがあり、エスニック料理によく使われます。青唐辛子がない場合は、レッドチリペッパーで代用しましょう。

 ホールスパイスは、新たにカスリメティ(フェネグリーク)を使います。
 女性ホルモンのバランスを整え、女性の悩み(更年期障害、月経痛、PMSなど)の解消に役立つといわれます。また、血中のコレステロールを下げたり、血糖値を下げる効果もあるといわれるスパイスです。

ほうれん草とパニールのカレー

【材料】(4人分)

  • ほうれん草
    300g (およそ3把)
  • 青唐辛子
    2~3本
  • タマネギ
    中玉2個
  • ニンニク
    3~4片
  • ショウガ
    1片(30gくらい)
  • トマト
    中1個
  • パニール
    お好みで
  • 食用油
    100cc

  • 大さじ1
  • 生クリーム
    適量(仕上げ用)
    • ■スパイスA

    • ブラックカルダモン(ホール)
      2粒
    • グリーンカルダモン(ホール)
      4粒
    • ベイリーフ
      2~3枚

      ■スパイスB

    • ガラムマサラ
      大さじ2
    • カスリメティ
      小さじ2
    • カイエンペッパー
      小さじ1

【作り方】

[1]塩(分量外)を加えたお湯でほうれん草を茹でる。なめらかなペーストにするため、おひたしより柔らかく茹でます。茹でたら固く絞り、さらにペーパータオルなどで水気をよく拭き、ザクザクと刻んでフードプロセッサーへ(ハンドミキサーでもかまいません)。刻んだ青唐辛子を一緒に入れ、なめらかなペースト状にします。

[2]鍋に食用油を入れ、熱したら中火にして「スパイスA」を入れます。パチパチと音がして香りが出てきたら、みじん切りにしたタマネギ、にんにく、しょうがを入れます。タマネギが透き通って少し色が付くくらいまで炒めましょう。

[3]ざく切りのトマトを入れ、軽く火が通ったところで「スパイスB」を入れます。

[4]グツグツしてきたら、「1」のほうれん草のペーストを加え、塩で味を調整します。一口大に切ったパニールを加え、温めればできあがり。器に盛って、お好みで生クリームをひとたらししましょう。

できあがり

【ポイント】

 ホールスパイスが苦手な方は、パウダースパイスのみで作ってもかまいません。また、カスリメティや青唐辛子が手に入らなくても、美味しくつくれます。

 パニールは、今回はエスニック食材屋さんで買ってきたものを使いましたが、手作りすることもできます。牛乳を沸騰させてレモン汁か酢を入れると固まります。これを水切りし、さらに重石を載せて水分を抜けばできあがりです。基本は「カッテージチーズ」と同じです。時間があればぜひご自分で作ってみてもいいでしょう。

 乳製品を摂らないベジタリアンの方には、スパイスをまぶして揚げた皮付きのジャガイモに置き換えてもいいでしょう。インドではそういう料理があるそうです。ジャガイモの代わりに厚揚げを使っても、日本らしくていいかもしれません。

 本シリーズでご紹介してきたカレーは、日本のお米で食べても美味しくいただけますが、インドや東南アジアのさらっとしたお米や、中でも香りのいいジャスミンライス、バスマティライスなどで食べると、より本格的なインドらしさを味わえます。雑穀米や玄米でカフェ風に仕上げるのもいいですね。もちろん、ナンや全粒粉生地を焼いた薄焼きパンのチャパティなどで食べるのもいいでしょう。

 カレーはインドの歴史や習慣が積み重なり、そこにヨーロッパや日本の文化が混ざり合って積みあがってきた世界に通用する文化的な料理です。自分らしいカレーを目指しながら、楽しみましょう!

文・写真◎坂井淳一
「今日は何を呑もう」から考える「酒ごはん研究所」主任研究員。ライター・フードジャーナリストとして多数のメディアに執筆。飲食店のレシピ開発やコンサルティングも行う。男性も料理をしよう、という「イエメシオトコ。」活動を展開中。料理のほか、住宅、旅行、アウトドアやIT、ガジェットなど幅広いジャンルをカバーする。

 

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