簡単なのに本格的! スパイスから作るカレー[第3回]

ホールスパイスを使ったやみつき羊肉のカレー

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パウダースパイスと
ホールスパイスの違いとは?

 そもそもスパイスとは、フレッシュ(生)とドライ(乾燥)に分けられ、ドライを粉状にしたものをパウダースパイス、粉状にせずそのままのものをホールスパイスといいます。同じスパイスでもパウダーとホールでは特徴や役割が異なるので、料理によって使い分けることがポイントです。

 パウダースパイスは香り立ちが良く、料理に色付けもしてくれますが、香りが飛びやすいため、煮込み料理には向いていません。また、挽いてから時間が経つと香りが抜けてしまいます。それを補うために沢山入れると、今度は苦くなったり、舌触りが悪くなったりするのです。

 一方ホールスパイスは、香りが長時間持続するので煮込み料理に適しています。
 ホールスパイスを使う方法は二つあります。一つは、使うたびにグラインダーやミルなどで粉砕して、香りの高いパウダースパイスにする方法。もう一つは、ホールのまま使う方法です。その場合、最初に油でスパイスを炒めて香りを移します。カレーでは、作っている最中にパウダースパイスを追加して、両方の良さを引き出します。

5種類のホールスパイスと
ガラムマサラをミックス

 今回使うホールスパイスは5種類。カルダモンは2種類使いますが、1種類でもいいでしょう。2種類使った方がより複雑な味になります。ホールスパイスがスーパーに売っていない場合は、通販サイトやエスニック食材のお店で買うことができます。

 ホールスパイスで5種類も使うので、さらにパウダースパイスもあれこれ使うのは大変だと思われるかもしれません。そこで今回は、ミックススパイスの「ガラムマサラ」を使います。

【使うスパイス】

<ホールスパイス>

◎グリーンカルダモン
 一般的に「カルダモン」と呼ばれてパウダーになっているのはこのスパイスです。ちょっと胃薬みたいな香りがします。ホワイトカルダモンと呼ばれるものは、このグリーンカルダモンを漂白したものです。
◎ブラックカルダモン
 同じように「カルダモン」という名前が付いていますが、植物としては別種。ブラウンカルダモン、ワイルドカルダモン、ビッグカルダモンと呼ばれることもあります。グリーンより少しクセの強い香りです。
◎八角
「アニス」とも言われるスパイスで、星のような形のさやの中に入っています。さやから取り出して使います。中国や台湾の煮込み料理にもよく使われ、「ウーシャンフェン(五香粉)」と呼ばれるスパイスミックスのベースになっています。独特な甘苦い香りがします。
◎クローブ
 第2回の「キーマカレー」で使ったクローブを、今回はパウダーではなくホールで使います。
◎ベイリーフ
 フランス料理でベイリーフというと月桂樹の葉ローリエ(ローレル)を指すことが多いのですが、ローリエとインド料理のベイリーフはまったくの別物です。インド料理のベイリーフは、シナモンの仲間「カシア」という植物の葉です。日本ではほとんどが乾燥した状態で売られています。

<パウダースパイス>

◎ガラムマサラ
 カレーに使うさまざまなスパイスをミックスしたもの。使われているスパイスの種類や比率はメーカーによってさまざまで、カルダモン、コリアンダー、クミン、シナモン、クローブ、ナツメッグ、ブラックペッパーなどが使われています。カレー粉との違いは、ターメリックが入っていないこと。インドでは料理の仕上げにこのスパイスを使って香りを強調します。

メイン食材は健康にもいい羊肉を

 インドでは鶏肉または羊肉が一般的に食べられています。羊肉は日本ではあまり一般的ではありませんが、低脂肪、高タンパクの優れた食材です。羊はクセがあると思われがちですが、最近のラムやマトンは飼料の工夫がなされ、昔のイメージとは別物。スパイスで煮込むことで、一層美味しく食べられます。

 スパイスの多くは漢方薬にも使われるように、さまざまな効能があります。とくに消化に良いもの、身体を温めてくれるものがたくさん入っています。ですから、羊のカレーは、いわば「薬膳」のようなもの。医食同源・薬食同源といいますが、まさにそのひとつの理想型がこのカレーです。

羊肉のカレー

【材料】(4人分)

  • 飴色タマネギ
    中玉2個分
  • 生トマト
    大1個
  • ニンニク
    3~4片
  • ショウガ
    1片(10〜15g)
  • ガラムマサラ
    大さじ4
  • レッドチリペッパー
    大さじ1
  • 食用油
    大さじ3~4

  • 300〜400cc

  • 小さじ2
  • パクチー
    お好みで
  • オクラまたはししとう
    お好みで
  • 生姜
    適量(仕上げ用)
    • ■A

    • マトンまたはラム肉
      400g
    • ヨーグルト
      30〜50cc
    • ガラムマサラ
      大さじ1

    • 小さじ1

      ■B

    • ブラックカルダモン(ホール)
      2粒(※1)
    • グリーンカルダモン(ホール)
      6粒
    • 八角(ホール)
      2個(※2)
    • クローブ(ホール)
      12〜15粒
    • ベイリーフ
      4枚
    • ※カルダモンは、ペンチや肉タタキなどで軽く割っておきましょう。
      ※1ブラックカルダモンがなければ、グリーンカルダモンを4つ増やします。
      ※2八角はばらばらにしておきます。

【作り方】

[1]「A」の材料をボウルに入れます。まず羊肉にガラムマサラと塩をまぶしつけた後に、ヨーグルトを全体にまわすように入れ、30分ほど漬けておきます。

[2]鍋に食用油を入れ熱します。「B」を入れ、火を弱めて焦げないように炒めましょう。

[3]スパイスの香りが立ってきたら、飴色タマネギ、みじん切りのニンニク、みじん切りまたはすりおろしたショウガ、ざく切りのトマト、ガラムマサラとレッドチリペッパーを加えます。パクチーを入れる場合は、ここに根っこのみじん切りを入れます。

[4]全体が熱くなり、ふつふつとしてきたら、「1」の羊肉をヨーグルトごとすべて入れます。全体が煮えてきたら水を加え、さらに煮込みます。

[5]15分ほど煮込んだら、縦半分に切って種を抜いたししとうや、へたをそいでから斜め切りにしたオクラなどを入れます。パクチーの根以外の部分は、このタイミングでざく切りにしたものを入れてください。

[6]5分ほどさらに煮込み、塩で味を調えたら完成です。器に盛り、千切りにしたショウガを散らしましょう。

できあがり

【ポイント】

 ホールスパイスは、油で熱して香りを移してから取り出す方法もありますが、一緒に煮込んだほうが香りも味も引き立ちます。口に入れたときに、噛むとスパイスそれぞれの香りや味が広がるのも楽しいものです。ベイリーフは盛り付けのときに外しても良いでしょう。

 今回は、5種類のホールスパイスとガラムマサラに加え、辛みを増すために唐辛子(レッドチリペッパー)も入れました。さまざまなパウダースパイスを加えて、自分好みの味にアレンジするのも良いでしょう。

文・写真◎坂井淳一
「今日は何を呑もう」から考える「酒ごはん研究所」主任研究員。ライター・フードジャーナリストとして多数のメディアに執筆。飲食店のレシピ開発やコンサルティングも行う。男性も料理をしよう、という「イエメシオトコ。」活動を展開中。料理のほか、住宅、旅行、アウトドアやIT、ガジェットなど幅広いジャンルをカバーする。

 

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