シリーズ 男のリフォーム 「ガレージ」本格派のこだわり 第5回

狭くても、知恵と工夫で快適空間づくりができる。EV時代対応の環境整備も忘れずに

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ガレージは建築物としてみなされる

 ガレージの計画を立てる前に、まずちょっと難しい法律の話を考えなければなりません。屋根付きのガレージは、基本的に「建築物」とみなされ、建ぺい率や容積率にも影響し、固定資産税の対象となります。

 下記は、固定資産税の対象とみなされる「建築物」の条件です。自治体によって見解の差異があるようですが。いくつかの要件を満たして建てれば、固定資産税の対象から免れることもあります。

・基礎が打たれ、そこに固定されていること
 → 物置のように基礎が打たれていない場合は建築物とはみなされません。
・屋根があること
 → 屋根がなければ、もちろん建築物とは見なされません。
・3方以上を外壁などで囲まれていること
 → 屋根と柱だけのカーポートが建築物とみなされないのは外壁がないため。

(c) 大崎慎一

「都会の狭小住宅でビルトインのガレージの場合、ご近所の配慮でシャッターなどを設けないと申し上げましたが、実は開口部が出入り口から横の部分の一部にまで広がっているガレージの実例があります。外側に普段乗るクルマや、あまり運転に自信がない方のクルマを入れるようにすれば、出し入れも楽ですし、大切なクルマをこすってしまうこともないのでおすすめです」と森口さん。

 こうした建て方をすれば、ガレージ部分は「建築面積」に組み込まれない可能性がありますね。

基準を満たせば建ぺい率もクリアできる

 建ぺい率の問題も考えておかなければいけません。戸建ての住宅を建てられた方はご存じでしょうが、土地の面積に占める建築面積の割合がそれぞれ決められています。これをクリアするために、いろいろな工夫がなされているようです。
 自治体によって基準は異なることもありますが、法律で建ぺい率の緩和措置が取られることもあります。

・外壁のない部分が連続して4m以上であること
・柱の間隔が2m以上であること
・天井の高さが2.1m以上であること
・地階を除く階数が1であること

 こうした基準を満たしていれば、ガレージの柱から1mまでの部分は建築面積に算入されません。特に、母屋とは別にガレージを作る場合や、2台以上のクルマを入れられるガレージを建てるときは役に立ちますね。設計や施工をする業者さんはさまざまなノウハウをもっていますので、こういったことを相談してみるといいでしょう。

費用的にも有利な
プレハブ構造の既製品が主流

 ガレージを建てるときに、まず具体的にしなければいけないのは、どう建てるかということです。設計家に依頼するのか、久我さんのように自分で設計して建ててしまうのか、また既存のユニット・プレハブのガレージにするのか。

「母屋とは別に建てる場合、多くの方がプレハブの既製品を選びますね。2×4工法のイギリス風のキットなどもありますが、最近は倉庫などを建てるときに使う建築資材を組み合わせて、比較的安価で、現代的な住宅の外観に似合うようなデザインのガレージを作る方が多いようです。費用的にも、既製の部材なので手に入りやすく、価格的にも抑えやすいのが魅力です」

 プレハブのガレージはさまざまなメーカーから売り出されています。なかには、積雪地地帯向けに、2mもの積雪にも耐えられるような構造のものなど、地域特性に合わせたものもありますので、ぜひ検討してみるといいでしょう。

電気の容量にも余裕をもって

 ガレージは、自動車という、燃料や火気のあるものを入れるため、原則的に壁材などは防火使用のものを使わなければなりません。雰囲気を出すために木材などを内装に使いたいという方もいらっしゃるでしょうが、むき出しの木材を見せていいのは、壁・天井の面積の10分の1までと定められています。それ以上の部分を木材にしたい場合は、不燃処理をした材料を使わなければいけません。

「ガレージはガソリンや軽油といった可燃物をタンクに入れたクルマをしまうスペースなので、火気もない方がいいですね。ガスコンロなどは設置してはいけません。あと、換気も必要です。現代のクルマだと、そうガソリン漏れが起きたりはしませんが、用心にこしたことはありません」

 逆に、導入しておいたほうがいい設備はあるのでしょうか。

「水栓は設けた方が絶対にいいですね。ガレージから少しだけクルマを出せば洗車ができますし、車内の掃除なども水が出るととても楽です。外に給湯器を設置して、お湯が出るようにする方もいるようです。電気も引いておくべきでしょう。照明、電気工具や掃除機などの器具を使うための電源は、絶対にあったほうが便利です」

 ビルトインならば問題ありませんが、母屋とは別に建てる場合は、別途電気を引き込む必要があります。将来、本格的な整備ができるようにリフトを置きたいのなら電気の容量に余裕があるほうがいいでしょうし、夏場・冬場にガレージを居場所にするなら、エアコンの設置も考えておくべきでしょう。

「古いクルマは高温多湿が苦手です。特にゴム類などが劣化しますから、そのためだけにエアコンを入れる方もいますよ。今後、プラグインハイブリッド車やEVを導入する可能性はありませんか? 近い将来に購入予定があるなら、ぜひ専用電源を入れることを考えてください。世界の潮流はEVにシフトして、ヨーロッパのメーカーも近いうちにガソリンからEVにシフトしていきます」

 プラグインハイブリッド車やEVは災害時の非常用電源にもなりますから、今後需要は高まっていくでしょう。将来性を考えてガレージのプランを作っていくのも重要なポイントです。

 次回は、理想のガレージにするために検討するべきポイントをさらに伺っていきます。

(第6回に続く)

□ お話を伺った方

森口将之さん

モビリティ&モータージャーナリスト。
移動や都市という視点から自動車や公共交通を精力的に取材。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。著書『パリ流環境社会への挑戦』(鹿島出版会)『これでいいのか東京の交通』(モビリシティ)『富山から拡がる交通革命』(交通新聞社新書)など。

文◎坂井淳一 写真◎末松正義 森口将之
取材協力◎久我敏徳 大崎慎一

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