『魔法のリノベ』作者・星崎真紀さんに聞くガーデニングの楽しみ[第4回]

日々の楽しみ「家庭菜園」と理想の庭

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家庭菜園は楽しい!

 東日本大震災を契機に、庭に果樹を植え、家庭菜園も本格的に始めた星崎さん。

「それまでも、トマトくらいは植えていたんです。木なりで完熟させたトマトって、本当に美味しいんですよね。どんどん伸びるし、脇芽を摘まないと実もなりにくくなるんですけどね。締め切りで手入れができなくて1週間放っておくと、ジャングルのようになっていたりします(笑)」

 ご実家が家庭菜園をされていたといいます。

「祖母が毎日畑仕事をしていたんです。私はその畑で穫れたトウモロコシが大好きでした。いつかは自分も家庭菜園をやってみたいと思っていて、震災をきっかけに始め、いまでは合計3畳分くらいの広さの畑をつくっています」

 星崎さんにとって家庭菜園の楽しさは2つあるそうです。

「一つは、土をつくったり、石灰を撒いたり、一から始められるという点ですね。もう一つは、やっぱり収穫したものが美味しく食べられるということ。1年で収穫できるものを中心に、温かい季節だけやっています。トマト、ナス、ゴーヤ、今年はトウモロコシもつくってみました。それから、柑橘類の木の果物もあります。ジャガイモもつくっていましたね。1年ごとにサツマイモを植えたり、里芋を植えたり、かわりばんこに楽しんでいます」

 それほど広くない畑でも、お子さんが独立されて家庭の人数が少なくなったいまでは、余るほど穫れるそうです。

「近くに住んでいる母に分けたり、あとはご近所さんと物々交換したりしています。私とは違う作物をつくられているから楽しいですね」

ガーデニングは完璧を追い求めない

 元々植えられていた「昭和な庭の木」にいろいろ足して庭づくりをしている星崎さん。

「植えるのは、多年草が多いですね。それも、開花時期が長いもの。植えっぱなしでも毎年花を咲かせる多年草の一種で宿根草というのがあって、それも植えたいと思いました。その次は、リーフガーデンをやりたいと。最初はギボウシを植えて。冬になると葉が枯れてしまうので、ツワブキとか、冬でもかわいいヒューケラをメインにしたりと、試行錯誤しながらでした。最初の1年は配置がうまくいかなくて、何度も植え替えたりしました」

 かつては放置されていた庭も、本当に素敵な風景になりました。星崎さんは、野菜や花を育てるために、ノートをつけているそうです。

「肥料のタイミングも植物によって違うので、ちゃんとノートを付けないと分からなくなっちゃうんです。何月何日に苗を植えた、施肥をしたという記録ですね。人には見せられないですけれど。家庭菜園をされている方の話をいろいろ聞くと、中にはエクセルでピシッと表をつくって、植えた木や花、野菜の苗の記録をしっかり取っている方もいるそうです。そんな本気の方に比べると、私は根が雑な性格なので適当です(笑)」

 逆に言うと、完璧を求めなくてもガーデニングは楽しめるということではないでしょうか。

「そうですね。いまは、調べることも簡単にできますしね。それでも、1冊しっかりした園芸なり家庭菜園なりの本を買っておくことはおすすめします。作物ごとにあれもこれもと調べなくても、1冊で全部調べられますから」

長く、ずっと続けられるガーデニング

 今後、星崎さんはいまのお庭をどんな風に変えていきたいとイメージされているのでしょう。

「できるだけ労力を使わなくて済む庭ですね。雑草取りをしなくてはいけないスペースを極力減らして。でも、花々の世話をして身体を動かす、外に出て身体を動かすというのは、精神的にも身体のためにもとてもいいと思います。動けるうちは少しでも楽しめるような庭にしたいですね」

 星崎さんは、ガーデニングに「終わり」はないと言います。

「こんな風な庭になったらいいなと思って花や木を植えるんですけど、なかなか思った通りにはなりません。植えた後の手入れも大事です。こまめに切り戻したり、花ガラを取ったり、肥料を適正な時期にあげたりとか。ちゃんと世話をしてあげないと、キレイに育たないんです。ガーデニングというのは、一つの作品を作って、それでできあがりではないですね。最初のデザインは大事ですけど、そのデザインができるまでは何回かやらないとわからないですし。
 やっぱり絵描きなので、フレームで見たときの構図にこだわる感じはあります。手前にこれが来て、柑橘の葉っぱ越しにリーフガーデンが見えて、赤くなってたらキレイだな、みたいな。自分が生活をしている中で見る場所ってあるじゃないですか。ダイニングの窓からとか、玄関を出たときに見える角度とか。全体を良くするというより、自分がその庭を眺める場所から見たときに、いい構図になるっていうところにこだわっています。外から見たときの美しさより、生活の視野の中の美しさを大切にした庭がいいですね」

 星崎さんは、この先、まだまだ『魔法のリノベ』を描き続けることになっているそうです。

「時間が取れない日々が続くと思うんです。この作品は、他の作品よりも何倍も手がかかります。リフォームのアイデアを考えて、設計図を描いて、プロの方に見ていただき、ダメなら直す。その上で『描く』時間もしっかりかけなくてはいけませんので。
 でも、余裕ができたら、バラも植えてみたいと思っています。虫にも病気にも弱いし大変だとは聞いているのですが。今年、試しに1本だけ植えているんです、この忙しいときに(笑)。無理のない範囲で、長く楽しんでいけたらいいと思っています」

 丁寧に調べ、手間と時間をかけて育てるという意味では、作品を描くことも、ガーデニングも同じかもしれません。マンガ『魔法のリノベ』から伝わってくるものと同じように、星崎さんのお庭もきっとますます素敵になっていくことでしょう。

LIXILのウッドデッキ・タイルデッキ

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素足で庭に出る。ごろりと寝転んで空を見上げる。ここちよい風を感じる。ウッドデッキ(人工木)・タイルデッキは、暮らしの中に自然に親しむ時間をつくってくれます。

≪お話を伺った方≫

星崎真紀さん

『黄昏シティグラフィティ』『ひみつな奥さん』『ステージママの分際で!』『虎蛇とブー子』など、数々のヒット作品を描く。『魔法のリノベ』はドラマ化をきっかけに新作も発表。
2022年10月17日にコミックス5巻が発売。Amazon Kindleをはじめ、各電子書籍サイトでも読むことができます。

文◎坂井淳一(酒ごはん研究所 )
写真提供◎星崎真紀

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