『魔法のリノベ』作者・星崎真紀さんに聞くガーデニングの楽しみ[第2回]

コロナ禍で加速したガーデニング熱

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ステイホームで再スタート

 東日本大震災をきっかけに、自宅の庭の手入れをご自身で始めるようになった星崎さん。

「がんから復帰して、仕事も再開できるようになってからは、ガーデニングや家庭菜園を楽しみつつ、家のこと、自分の身体のことと相談しながら仕事をしている状態でした。ですから大幅に庭をいじることもなかったんです。
 3年前、新型コロナウイルスの流行が始まった頃です。ちょうど『魔法のリノベ』の連載も一段落した時でした。ステイホームと言われて、外に出かけることもできない。やることがないとなにか気持ちが落ち着かないというか、不安というか。そんなことで“庭のリノベ”をしよう! と思い立ちました」

「東の森」を切り開く

 星崎さんがまず取りかかったのは、庭の東側でした。

「芝生が生えている部分ではなく、東側に大きな木が数本植えてあったんです。家族内では『森コーナー』って呼んでいたんですけれど、木の周辺が草ぼうぼうの状態なのを放置していたんです。そこをなんとかしようと」

 星崎さんは草を刈って切り開き、レンガ敷きの小径をつくろうと考えました。

「せっせとホームセンターに通いました。車で行って、レンガや砂利を買って運ぶんです。私一人で持てる重さは限度がありますから、何度も繰り返すんです。一回にレンガを50個とか。レンガは1個で2kgくらいでしょうか、50個買えば100kgですよね。砂利だって一袋10kgや20kgはあります。ものすごい重労働でした」

 草を刈ってから、道をつくるために先が尖ったショベルで土を掘り、ならしたそうです。

「実はこれがとんでもなく大変で……。というのも、家を建てるときに古家を取り壊しましたが、そのときのがれきなどはすべて処分されているはずだったのに、一部土の中に残っていまして。道具も大して揃えていない状態で始めたので、最初のうちはちょっと作業するだけで疲れ果てて倒れていました。整地ができたのは、1日に1〜2mでしたね」

 その小径はおよそ5m。整地した小径に10年は雑草が生えないと謳う防草シートを敷き、その上に砂利やレンガを置いて完成したそうです。

「同じような小径をもう1本つくりました。その後は、ちょっと周辺を掘ってはレンガを並べたり土を入れたりして、花壇とか家庭菜園のスペースをつくっていきました。そうしているうちに、どんどん楽しくなって、欲が出ちゃったんです。『なんだ、私、できるじゃん!』って(笑)」

物干しスペースをレンガ敷きに

(左)Before (右)After

「他にも気になっていた場所があったんです。物干し台を置いてあるところで、もとは土だったのですが、芝生がいつの間にか浸食していました。ここの芝生を剥がして防草シートを敷くだけでも良かったのですが、整地して、レンガ敷きにすれば絶対に芝生は生えないぞ、と」

 およそ3m×4mほどのスペースを整地してレンガ敷きにすることを思いついた星崎さん。

「簡単だと思っていたのですが……とっても大変でした。まず、芝生を除去して整地したところが、平らにならないんです。最初は板でならしました。次は、グラウンド整備をするときに使うような整地用の道具を手に入れて、それで平らにならして。けれど、レンガを並べている途中で平らになっていない場所に気が付くんです。レンガをどけて整地からやり直しです。何度もやり直して、ちょっとでこぼこしているけれど、まあだいたい平らになったかな、というくらいにまでは仕上げました」

昭和の庭木は強い

 そこまでの大工事をして、元々植えられていた木や草にダメージはなかったのでしょうか。

「それが、案外丈夫でしたね。小径をつくった横にはアジサイがたくさん植えられていました。その根元近くもずいぶん土を掘り返したり削ったりしたんですが、それで木が弱ったということはありませんでしたね。ツツジやサルスベリなども元気です。こうして見ると、昭和の時代から庭に植えられているものは、とても丈夫で、よく選び抜かれた植物なのだなあと思いました」

 星崎さんは元々植えられていた植栽に少しずつ手を加えながら、庭の風景をデザインしていったそうです。

 どんな植物を植えて、どういった庭にしていくのか、また家庭菜園ではどんな野菜を育てているのか、それは次回にご紹介します。

≪お話を伺った方≫

星崎真紀さん

『黄昏シティグラフィティ』『ひみつな奥さん』『ステージママの分際で!』『虎蛇とブー子』など、数々のヒット作品を描く。『魔法のリノベ』はドラマ化をきっかけに新作も発表。
2022年10月17日にコミックス5巻が発売。Amazon Kindleをはじめ、各電子書籍サイトでも読むことができます。

文◎坂井淳一(酒ごはん研究所 )
写真提供◎星崎真紀

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