台風から「窓」を守る 第1回

「雨戸」「シャッター」は最強の窓割れ対策

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台風による窓割れ対策では
「飛来物への備え」が最重要

 高荷さんによると、台風による窓割れ対策の効果は以下のような順番になるそうです。

 (1)雨戸やシャッターを閉める
 (2)窓の外側からベニヤ板やプラダン(プラスチック製のダンボール)を貼る
 (3)窓の内側に飛散防止フィルムを貼る(もしくは窓を合わせガラスにする)
 (4)窓の内側にダンボールを貼る
 (5)窓の内側に養生テープを貼る

「この中で確実なのは(1)と(2)だけ。(3)は役立つ可能性があり、(4)以下は『やらないよりマシ』と思ったほうがいい」と高荷さんは断言します。なぜなら、台風による窓割れの原因のほとんどが、風圧や強風ではなく、飛来物が当たった時の衝撃によるものだからです。

「飛来物を窓から守れるのは、物理的にガードすることができる(1)と(2)しかありません。(3)~(5)は『窓ガラスの飛散防止』対策にしかならないため、飛来物からしっかりと窓を守るには、窓の内側にダンボールや養生テープを貼る対策では不十分です」

 飛来物を防ぐ対策としては、そもそも物を飛ばさないことが重要だといいます。

「ご自宅はもちろん、他所様の家に被害を出さないためにも、ベランダや庭に置いてあるゴミ箱や植木鉢など、固定されていないものはすべて屋内に取り込むようにしましょう。意外と見落としがちなのが物干し竿です。出しっぱなしは大変危険ですので、屋内に入れるか、もしくは地面に下ろして1つに縛り、外壁などに結んでおいてください。

 アンカーボルトなどで固定されていない自転車や犬小屋といった重量物も、台風時には風にあおられて飛んでしまう可能性があります。万が一飛んでしまった場合は住宅を破壊するほどの威力がありますので、こちらも屋内に入れるか、もしくは柱などにくくりつけておきましょう」

 また、意外と見落とされがちなのが、2階以上の窓だといいます。
「2階、もしくは2階以上の窓が割れて強風が室内に吹き込むと、屋根が吹き上がるリスクもあります。1階の大きな窓だけでなく、2階以上の窓にもしっかりとした窓割れ対策をおすすめします」

【優先順位1】雨戸やシャッターを閉める

右:シャッター標準タイプ/左:シャッター耐風タイプ

 それではここから、窓割れ対策をひとつずつ細かく見ていきましょう。
 まず、(1)の「雨戸やシャッターを閉める」は、最強の窓割れ対策だといいます。

「これができれば最良ですし、圧倒的に効果があります。メンタルに対する安心感も抜群です。浸水しない高さにある家に住んでいて、かつ、すべての窓に雨戸かシャッターが付いている場合は、台風による恐怖感をかなり軽減してくれます。

 台風のたびにバタバタしないためにも、雨戸やシャッターをリフォームで取り付けることは強く推奨したい防災対策ですし、賃貸住宅を借りる場合も雨戸やシャッターのある家をぜひ選んでいただきたいと思います」

 LIXILでは、近年大型化している台風にそなえ、TOSTEMブランド「シャッター 標準タイプ・耐風タイプ」の耐風圧性能をさらに強化。「標準タイプ」では、従来の1.5倍の強度を実現しました。また、沿岸地域・強風地域用の「耐風タイプ」では従来の約2倍にまで向上させ、「3kgの木材が時速55kmで衝突しても安心」といえる耐衝突性を実現しました。

 さらに、「取替雨戸パネル」には、優れた断熱性・防音性に加え、強風から窓を護「防護断熱タイプ」を新たに追加しました。

 雨戸やシャッターは、いまある窓に後付けでリフォームが可能です。工事も最短で30分からと大変お手軽です。台風による窓割れ対策になるだけでなく、防犯対策にもなりますから、ぜひご検討してみてはいかがでしょうか。

【優先順位2】ベニヤ板やプラダンを貼り付ける

 雨戸やシャッターの次に有効な窓割れ対策が、(2)の「ベニヤ板やプラダン(プラスチック製のダンボール)の貼り付け」です。

「窓のサイズにカットしたベニヤ板やプラダンを、ガムテープや養生テープで外側からぴったり窓に貼り付けることができれば、割れ防止の効果が期待できます。一度サイズを合わせておけば、毎回の作業は貼り付けるだけですので、それほど手間はかかりません」

 貼り付ける際には、「窓と資材の間に隙間をつくらない」ことが重要だといいます。

「隙間があるとそこから風にあおられる可能性があるため、窓枠にぴったりと貼り付ける必要があります。窓の外に打ち付け用の木枠がついている場合は、ネギや釘で打つとさらに頑丈になります」

 風が強く吹き込む方向に窓があり、構造上雨戸やシャッターの取り付けができない場合は、ベニヤ板やプラダンなどの資材を準備しておくとよいでしょう。

窓割れ防止は
「屋根の飛散防止」にもつながる

 2019年に相次いだ千葉県の台風被害で明らかになったように、窓が割れると風圧によって屋根が抜けることがあります。窓割れによる屋根の飛散にはどのような対策が必要なのでしょうか。

「屋根の飛散を防止するためには、『窓ガラスの飛散防止』ではなく『窓割れ防止』が必要になるため、基本的には(1)と(2)が必須と言えます。とくに、九州や四国など台風の強い風の影響を受ける地域、海岸沿いなどで強風被害が大きい場所に住居がある場合は、雨戸・シャッターは必須といえるでしょう。

 千葉県の台風では、2階の窓が割れたことで屋根が飛散したという被害も見受けられました。実際に屋根が抜けたのは納屋や空き家がほとんどでしたが、1階だけでなく、2階以上の窓の対策も怠らないようにしてください」

 第1回では、台風から確実に窓を守る方法をご紹介しました。
 とはいえ、急な台風接近時には、ここまでの備えをすることはできません。そんなときに応急措置として取り入れてほしいのが(3)~(5)の対策です。
 これらは次回、解説します。

※台風を含めた大型災害から家を守るLIXILの減災プロジェクトもご参照ください。

PATTOリクシル マド本舗

万が一窓ガラスが割れた場合は、プロに相談するのがベストです。もしもの時は「マド本舗」にご相談ください。

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LIXILより昨年新発売された玄関引戸。玄関はドアが多いですが、引戸なら土間スペースが確保できて広く使えるうえ、都会の狭小地でも土地を有効に利用できるなど、メリットがたくさんあります。また、非接触のリニアスライドは今の暮らし方にピッタリ合っています。

お話を伺った方

高荷智也さん

「自分と家族が死なないための防災対策」と「企業の実践的BCP策定」のポイントをロジック解説する専門家。大地震や感染症パンデミックなどの防災から、銃火器を使わないゾンビ対策まで、堅い防災を分かりやすく伝えるアドバイスに定評があり、講演・執筆・コンサルティング・メディア出演など実績多数。著書に『中小企業のためのBCP策定パーフェクトガイド』など。1982年、静岡県生まれ。

文◎八木麻里恵
人物写真◎加々美義人
画像提供◎Shutterstock/PIXTA

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