底冷えする古い家をリフォームで暖かく[第3回]

断熱リフォーム「前」「後」の違いを比較

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暖かさの確保は窓の断熱リフォームから

 今回は「リフォーム後の家」として、HEAT20のG2基準でリフォームされた家のしくみをご紹介します。

「HEAT20」とは、一般社団法人「20年先を見据えた日本の高断熱住宅研究会」の略称です。日本を8つの地域に区分し、各地域に合わせてUA値(=外皮平均熱貫流率)やグレードの基準値が設定されています。地球温暖化やエネルギーに関する問題に対応するために、住宅の省エネルギー化を目指し、健康で快適な住まいの普及を目指しています。

断熱リフォームを行った家。心地よい暖かさ

サッシの枠は樹脂製。見た目的にもおしゃれ

「リフォーム後の家」に足を踏み入れると、まず「昔の家」とはくらべものにならないほどの暖かさに驚きます。こちらも「昔の家」と同じようにエアコンは20℃で設定されていますが、「昔の家」のように激しく吹き出す風ではなく、とても静かで送風程度です。それなのに、半袖でも大丈夫なくらい暖かく、心地よいのです。こうした違いはどのように生まれてくるのでしょうか?

「まずは窓の断熱に注目してください。内側にもう一枚サッシが取り付けられていて、ペアガラスが入っているのがわかるかと思います」

 二層構造になっていて、なおかつペアガラスが使われているので外の冷気をしっかりと断熱できます。さらに内サッシの枠はアルミではなく樹脂製。樹脂素材は熱伝導率が低いので、外気の寒さが家の中に伝わりにくいです。手で触ってもそれほど冷たくないことがわかります。

断熱材で家全体をすっぽり包み込む

「外張り断熱」でリフォームした家の構造。壁の中には断熱材(ウレタンフォーム)が入っている

 窓以外の断熱構造についても見てみましょう。

「壁は、家の柱や壁などの外側から断熱材で家をすっぽりと覆う『外張り断熱』で施工されています。本来の壁の上を断熱材が入った壁が覆っていて、二重構造にすることで寒さをしっかりとシャットアウトしています」

古い家とリフォーム後の家の構造を断面図にしたもの

「上の写真右側が昭和55年基準の家の断面図を現したものです。断熱材には50mmのグラスウールが使われていて、壁、天井、床に入れられています。ただ、昔の家にはこうした断熱材すらも使われていない家が実際には多いです。そうすると床の基礎部分の開口から冷気が入ってくるので、冬はスリッパなしではいられないほど床が冷たくなります」

 それに対して写真左側がリフォーム後の住宅の断面図です。一見しただけでも断熱材の量が圧倒的に違うのがわかります。

「壁は約45mmのウレタンフォームが既存の壁の外からカバーするように施工されています。それに加えて床には90mm、天井には約250mmのグラスウールが施工されています。断熱材で家全体を丸ごと包んでいるような感じです。天井に断熱材を入れることで、冬の寒さだけではなく、天井からくる夏の暑さも防ぐことができます」

 こうした家の構造の断熱に加え、家の温度を快適に保つのにもう一つ大切なポイントがあります。それは「換気システム」です。現在、建築される家には建築基準法で24時間換気の設置が義務づけられています。ただ、換気することで部屋の熱が逃げてしまうこともあるそうです。

交換型の換気システムのしくみを図版で示したもの

「一方的に排出するのみの換気システムの場合、暖かくなった部屋の空気が換気することで外に出ていってしまいます。同時に、隙間から冷たい空気も入ってきてしまうのです。でもLIXILのリフォーム後の家につけられているのは『熱交換型の換気システム』です。外の空気と中の空気が換気扇の中で交差し、外の空気が暖められて部屋の中に入ってくるため、部屋に冷たい空気が入ってこないのです」

古い家とリフォーム後の家の温度差

「昔の家」に入っているときのサーモグラフ

「リフォーム後の家」に入っているときのサーモグラフ

 古い家とリフォーム後の家の温度差は、サーモグラフで見るとよくわかります。

左が「昔の家」、右が「リフォーム後の家」。窓から熱が逃げているのがわかる

「上が昭和55年基準の『昔の家』に入ったときのサーモグラフです。サーモグラフは低い温度ほど青い寒色系で示されますが、全体的に青っぽく窓辺はさらに温度が低くて真っ青になっているのがわかります。それに対して下の『リフォーム後の家』では、ほとんど黄色で占められていて、温度の低い青い部分はかなり少なくなっています」

 室温の差は体の表面の温度にも影響を与えています。

「『昔の家』では体の表面の温度は黄色系が多く占めますが、『リフォーム後の家』では、体の表面は赤っぽく変わっています。体感が明らかに上がっているのがわかります」

 次に、0℃に設定された屋外側から2つの家の窓の温度を比べてみました。

 左の「昔の家」の窓が赤くなっているのは、断熱性の低い掃き出し窓から室内の暖気が出ていってしまっているからです。よく見ると軒下からも熱が逃げているのがわかります。それに比べて右の「リフォーム後の家」は窓まわりが青く、室内の暖気が漏れていないのがわかります。

断熱リフォームをすることで音の問題も解決

 断熱リフォームには、寒さ、暑さを遮断し、家の中を快適な温度で保つという役割以外にも、もう一つ大きなメリットがあるといいます。

 それは「音を遮断する」こと。窓、壁、天井、床を断熱することで、音も遮断してくれるのです。実際に外で防犯アラームを響かせて、内窓を開けた場合と閉めた場合で音の大きさを比較してみたところ、内窓を閉めたほうが明らかに音が小さくなるのがわかりました。

「内窓を閉めただけで40デシベルほど音が小さくなるという実験結果が出ています。これは外の騒音を防ぐという効果もありますが、同時に、家の音を外に漏らさないという効果もあります。外からの騒音が気になる方、ペットを飼ってらっしゃる方や楽器を弾く方、お子さんが小さい方など、家の内外の音が気になる人にも実は断熱リフォームはおすすめなのです」

 最終回では、古い家をリフォームするときに知っておきたい補助金などについてご紹介していきます。

(第4回に続く)

≪お話を伺った方≫

門脇一彦

LIXIL HOUSING TECHNOLOGY
ZEH推進営業部 関西ZEH営業部
住まいStudio大阪 ディレクター
「住まいStudio大阪」でお客さまのご案内を担当。「みなさんに最新の断熱のしくみを体感していただければと思います」


文◎濱田麻美
写真◎梅田雄一

リクシルオーナーズクラブ(年会費無料)