底冷えする古い家をリフォームで暖かく[第2回]

寒いだけではない!? 古い家に潜むリスク

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建築健康悩み

冬の温度差から起きる「ヒートショック」

 第1回では、外気温が0℃で昭和55年の省エネルギー基準で建てられた「昔の家」に入り、実際の寒さを体感しました。実は昔の家はこのように「寒くて辛い」という以外にも、リスクがつきまとうといいます。1つ目のリスクは「健康」に関するものです。

高齢者は特に気をつけなくてはいけないヒートショック(画像:Shutterstock)

「古くて寒い家で特に気をつけなくてはいけないのが“ヒートショック”です」

 ヒートショックとは、“急激な気温の変化で血圧が上下し、主に心臓や血管などの身体にダメージを受けること”を指します。厚生労働省の調査によると、近年高齢者の不慮の溺水・溺死は「交通事故死亡者」数よりも圧倒的に多くなっています。

 どうしてヒートショックが起きるのかというと、人は暖かい場所から寒い場所へ行くとき、体の熱が奪われないように体内では血管が収縮し血圧が上昇します。そして、寒い廊下や脱衣所を通った後、お風呂などで体が温まると一気に血管が広がり、今度は血圧が急低下するのです。

 短時間で血圧が激しく上下することで、心筋梗塞、脳内出血、大動脈解離などの症状の原因になることがあります。

北側に位置することが多く、冷えやすい浴室

 もともと日本の家は日当たりのよい南側を長く過ごすリビングなどに充てるため、浴室やトイレは家の北側に設けられることが多いです。

 そのため、日当たりが悪い北側の浴室やトイレが冬は特に冷えていることが多く、暖かいリビングとの温度差が激しくなるのです。

 また、「昔の家」では空間の中でもトイレの寒さが際立っていました。浴室と並んでトイレでもヒートショックは起こりやすいと言われています。

気温がグッと下がるStudio大阪内「昔の家」のトイレ

 トイレも暖房設備が設置されていないことが多く、便器が冷たい上に排便するときにいきむので血圧が急上昇しやすい場所です。

 そして、排便した後は血圧が下がります。また、男性は立った状態で排尿すると腹圧がかかり、血圧が急に上がることがあります。浴室と同じで、こうした血圧の変化はヒートショックの原因となることがあります。

風邪、肩こり、腰痛なども……

寒さは肩こりや腰痛、頭痛などの原因にも……
(画像:Shutterstock)

 ヒートショック以外にも、寒い家に住むデメリットはいろいろ挙げられます。免疫力が落ちて風邪をひきやすくなる、寒いと筋肉が縮こまり肩こりや腰痛などの痛みが出やすくなる、寒さで空気が乾燥しやすくなるので肌がカサカサになるなど、体のいろいろな箇所にもトラブルが起こりやすくなります。まさに“冷えは万病のもと”なのです。

 こうした寒い家が人体に与える悪影響については、世界でも注目が集まっています。2018年にはWHOが「Housing and health guidelines」というガイドラインの中で、冬の間も室温を18度以上に保つべきだと勧告をしています。ヨーロッパ諸国は暖かい家で暮らすことは基本的人権だと考えられつつあり、こうした家に住むためのサポート制度もいろいろと設けられています。

 なお、「寒いと動くのが億劫になる」、「寒さが辛くて気分的に落ち込みやすくなる」など、寒さは体だけでなくメンタル面にも影響します。

「あたたかさ」というのは、体にも心にも大変重要なものなのです。

寒い家は暖房代がかかる

「昔の家」と「リフォーム後の家」の温度をサーモグラフで示したもの。
左上に冬場の電気代が表示されている

 もう一つ、寒い家には経済的なリスクもあります。

「昔の家」に入ったときに、暖かい空気が外に逃げていってしまうので、エアコンがフル稼働していました。当然、電気代もそれに応じてかかっていきます。住まいStudio大阪では、古い家とリフォームした家の実際の電気代も比較することができます。

「『昔の家』の暖房費は、年間で約28,000円になります。一方で『リフォーム後の家』の暖房費は年間で約9,100円です。なんと3倍以上も違いがあるのです。一部屋だけでもこれだけの差があるので、何部屋も暖房を使っている家はその差はもっと大きくなっていきます」

「最近では世界情勢や円安の影響もあり、電気代も値上がり傾向にあります。今後さらにエネルギー料金は上がっていくことも考えられるでしょう。また、古い家はエアコンだけでは十分に暖まらないことが多いので、エアコンに加えてこたつや電気カーペット、石油ストーブなどを使うお宅も多く、その分の暖房費も加算されます。古い家には健康面だけではなく、経済面に関するリスクも潜んでいるのです」

 第2回は古い家に潜むリスクについてご紹介しました。第3回では、「リフォーム後の家」に実際入って、そのしくみを見ていきたいと思います。

(第3回に続く)

≪お話を伺った方≫

門脇一彦

LIXIL HOUSING TECHNOLOGY
ZEH推進営業部 関西ZEH営業部
住まいStudio大阪 ディレクター
「住まいStudio大阪」でお客さまのご案内を担当。「みなさんに最新の断熱のしくみを体感していただければと思います」


文◎濱田麻美
写真◎梅田雄一

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