生ごみを乾燥させてコンパクトにする方法
生ごみは新聞紙に包んで干し網へ(画像:鴨志田純さん提供)
家庭ごみの中で「食品残渣(ざんさ)」が占める割合は約4割と大きく、そのために可燃ごみの収集が週に2回ほどあるのが現状です。
食品残渣とは、食事をする際に発生する皮や種、骨、殻、コーヒーかすや茶葉などの生ごみのこと。そういった生ごみの70~80%ほどは水分なので、その水分を減量していくことができればごみを圧縮することが可能になります。
生ごみをコンパクトにするには、「とにかく乾燥させることが大事」と、東京・三鷹で「鴨志田農園」を営みながら、全国各地で生ごみの堆肥化や有機農業の仕組みづくりを実施する鴨志田さんはいいます。
「生ごみの水分量が60%を下回ると焼却処理が可能になります。その状態まで乾かして可燃ゴミに出すと焼却時の助燃剤の量の抑制にもつながりますし、乾いた状態なら臭いも抑えられます。なるべく乾燥させてから捨てることで生ごもの量を減らしていくことが大切です」
では、生ごみを乾燥させるには、具体的にどんな方法があるのでしょうか?
「単純に調理で出る生ごみを減らしたい場合には、吊り下げ式の『干し網』を使用することをおすすめしています。しっかりと水気を切って、新聞紙に包んでから干し網の中へ入れて外で干します。洗濯物のように表面が太陽光に当たって乾けば、中の水分もどんどん抜けていきます」
そもそも乾燥しているものを湿らせないことも重要だそう。例えば乾燥している玉ねぎの皮は最初から新聞紙に入れてしまう、三角コーナーにはなるべく水をかけないなどの工夫も大きなポイントに。
単身者や小世帯の場合は干し網でも十分ですが、家族構成によっては電気式の生ゴミ処理機を使用するのもおすすめのとのこと。通気性のある生ゴミ保管容器「生ごみカラット」なども販売されているので、生活スタイルに合った方法を取り入れることを推奨しています。
コンポストって?
生活スタイルに合った選び方と注意点
DIYで作成したコンポスト(画像:鴨志田純さん提供)
捨てる以外の生ごみの処理方法として注目を浴びているのが「コンポスト」です。
コンポストとは、枯れ葉や野菜、魚といった有機物を、微生物の働きで発酵・分解させ堆肥化したものと、その容器を指します。
「コンポストは基本的に、太陽光を当てることで生ゴミの水分を調節していきます。それに基材(土や発酵促進剤を混ぜ合わせたもの)を使って養分の調節をしていくことで、農業に使用できる堆肥を作り出します」
さまざまな種類があるコンポスト、導入する際の選び方のコツを教えてもらいました。
「1人が1日で出す食品残渣の量は約138グラム、だいたいお茶碗1杯分です(※)。家族の人数、ライフスタイルに合わせた処理能力によってコンポストを選んでみてください」
(※WFP,平成25年度食料需給表(概算値)総務省人口推計(24年度)より)
処理量も多い一般的な閉鎖式の緑色の「コンポスター」、サブスク方式で手軽に始められるコンパクトなバッグ式のコンポスト、そしてDIYで作る太陽光が入るタイプなど種類はさまざま。
「例えば、バッグ式のコンポストは、小型であるがゆえに卵の殻や骨は分解しづらいなど、それぞれに大きさや利点も違うので、ご自身の食生活に合わせて選ぶといいと思います。どこの自治体でも補助金が出るところが多いので、取り入れる際はお住まいの自治体で調べてみてください」
LIXIL「バイオ式生ゴミ処理器(コンポスト) ボカシオルガンコ2」
ヨーロッパにあるスロベニアで生まれたBokashi Organko2(ボカシオルガンコ2)は、
電気を使用せずに生ゴミを全て肥料にするバイオ式生ゴミ処理器「コンポスト」
https://parts.lixil.co.jp/lixilps/shop/campaign/bokashiorganko/
そして、コンポストを設置しようとすると、気になるのはやはり場所の問題です。庭がない賃貸マンションの場合はどのようにすればいいのでしょうか。
「ベランダなど、ちゃんと太陽光が当たる場所に設置できるか、悪臭が出ないようになっているかなどをしっかり考えていく必要があります」
「基本的な管理方法は、生ごみを投入したら表面をかくはんするような感じで乾燥させていきます。このときに、あまり深く混ぜると太陽光が当たらなくなり、水分も養分も多くなり腐敗してしまいます。
よくある失敗例としては、生ごみを三角コーナーに入れっぱなしにしておくと、ミズアブなどの虫が卵を産み付けてしまうことがあり、そのままコンポストに入れると大発生を招いてしまうことに。生ごみが出たらなるべく新鮮なうちに、できれば太陽光の出ているうちにコンポストに入れることが大切です」
また、コンポストを自宅に置くメリットには、防災機能も有しているということもあるそう。災害時には、臭いが出ない、雑菌が繁殖しない“コンポストトイレ”としても役に立つと教えてくれました。
できあがった「堆肥」はどうする?
特にコロナ禍になってからコンポストの需要は一気に増え、「コミュニティコンポスト」(コミュニティで共同管理をし、都市部での堆肥を有効活用する)というかたちで全国にも広がっています。
しかし、環境に良いからとコンポストを始めても、「できあがった堆肥の行く先がない」と困る人も多いそう。
「3人家族くらいで、1年間にできあがる堆肥の量は約120L、これは畑40平米分もの量になります。自宅や家庭菜園で使用しきれない場合は、近隣の農家さんとつながって、『野菜をサブスクで購入するので堆肥を使いませんか?』と交渉する方法もあります」
または、NPOや任意団体で行政の緑化を担当している団体といった堆肥を必要としているところに、「お互いのメリットを提示して、関係性を構築していくという手段もあります」と、鴨志田さん。
鴨志田農園では、契約した家庭から出た生ゴミを二次処理して堆肥化。その堆肥を使って作った野菜を届ける仕組みを構築しています。
「どうしても堆肥の行く先がない場合は、乾燥させて可燃ゴミに捨てたり、可能なら土に埋めたりするだけでもごみのコンパクト化に繋がります。無理のないところから始めてもらえたらと思います」
生ごみのコンパクト化を意識することは、自分の消費行動が「どう連環していくのか」を意識することにもつながります。コンポストを起点に、「ごみにしない、ごみを出さない」という生活行動を考える機会になるのかもしれません。
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