「ゆる整理」で家も心も軽く![第1回]

片付けのコツは「選んで残す」

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「捨てる」ではなく「選ぶ」から始めよう

 雑誌などで目にする、物が少なくスッキリと片付いたリビングやキッチンの写真。自分の家もそんな素敵な空間にしたいと思っても、現実の家は物で一杯で、どこから片付けていいのか分からなくなります。

 井田さんは、「いらない物を捨てて、最低限の物だけを残すミニマルな生活はスッキリするかもしれませんが、そこに執着しすぎると毎日『片付けなければ』という気持ちにせき立てられて、心に余裕がなくなってしまいますよね。捨てることは確かに大切かもしれませんが、それよりも自分が大切に思う物、必要な物を『選んで残す』考え方に切り替えてみるのがいいのではないでしょうか」と言います。

ラクラク!「だ・わ・へ・し」片付け術

 井田さんは、「だ・わ・へ・し」という言葉を使って家の整理や片付けの基本をアドバイスしています。これは「出す」「分ける」「減らす」「しまう」の4ステップの頭文字から取った言葉です。

「まずは、『だ(出す)』。片付けたい場所の物を、しまっている場所から全部出します。例えば洋服なら、クローゼットから全部出してみましょう。
 次に、『わ(分ける)』。出した服をよく眺めてみると、もう何年も着ていないものがたくさんあることに気づくと思います。サイズが合わずに着られなくなった服もあるでしょう。そういう「もう着ない服・着られない服」と「着たい服・着られる服」に分けます。
 その次は『へ(減らす)』です。もう着ない・着られない服は、人に譲るか、捨てましょう。
 そうして着ない服を処分したら、最後に『し(しまう)』。この時点で物がかなり減っていますから、残った服を取り出しやすく整理することができます」

 なかなか物を捨てられないという方にとって一番ハードルが高いのが、「へ(減らす)」のステップではないでしょうか。
 もう着ないとわかっていても、何度も捨てようかどうしようかと迷ってはクローゼットに戻した服があるはずです。
 その服には、着るたびに気分が上がったとか、楽しかったイベントのときに着ていたとか、お財布に厳しかったけれどどうしても欲しくて買ったとか、強い思い出が残っているからです。

 では、さんざん迷ったけれど結局捨てられないときはどうすればいいのでしょう。
「そういうときこそ頭を切り替えるべき」と井田さんがアドバイスをくれました。

「『へ(減らす)』は捨てることではなく、これからの生活に必要なものを『選んで残す』ことです。人にはそれぞれ大切な物、捨てられない物があると思います。しかし、現代の家ではそれをすべて残すことはできません。ですから、本当に残したい物はできるだけコンパクトに変える。使わない物や長い間しまったままの物は思い切って処分するのが良いのではないでしょうか。
 形を変えて保管する物とは、例えばもう着ないとわかっているけれど、思い出がありすぎて捨てられないお気に入りの服です。それを着ることはもうないのですから、スマホで写真を撮るなど、別の方法で思い出だけを残してはいかがでしょうか。子どもが学校で作った工作物なども同じで、取っておきたいけれど何年もずっと部屋に飾っているものではありませんよね。
 そうやって形として残したい物と、記録として残したい物に分けるだけで、物で溢れかえった家の中はかなり整理できると思います」

物を減らせば人生も変わる!

 井田さんは、物を減らすことで生活が変わると言います。

「何でも捨てて減らすのではなく、自分にとって必要な物や大切な物だけを選んで残すことで、生き方もスリムになります。一度不要な物を整理すると、必要な物や本当に欲しい物以外は買わなくなる方が多いようです。物を減らすことで、本当の自分も見えてくるのです」

「捨てなきゃ」「片付けなきゃ」と思いこまず、大切な物を「選んで残す」“ゆる整理”は、自分を見つめ直すきっかけにもなるのかもしれません。

 次回は、整理した「物」をどうやって片付けていくかについて伺います。

≪お話を伺った方≫

井田典子さん

整理収納アドバイザー。月刊誌『婦人之友』(婦人之友社)読者がつくる「相模友の会」会員。数々のTVや新聞・雑誌などのメディアに登場、スーパー主婦、片付けの達人として大人気。執筆活動をするかたわら、「モノ・時間・お金・心の整理」をテーマに各地で講演会を行なう。近著に、『井田家の40年 暮らしとお金のありのまま』(婦人之友社)、『今やるのが、いちばんハヤイ! 人生が整う「小片づけ」』(主婦と生活社)など。

文◎坂井淳一(酒ごはん研究所)
写真◎Shutterstock

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