リビング
まずは、家族が一緒に過ごす時間が最も長いリビングから。リビングはあちこちにいろいろなものが置かれていて、片付けるにもどこから手を付ければいいのか悩んでしまう場所でもあります。
(写真提供:井田典子)
「私はもともと家事代行サービス会社に所属して、片付けの現場で働いていました。本当に雑然として、手が付けられないように見える家に伺ったこともあります。私たちはプロですからどう片付ければいいかすぐに判断できますが、片付けが苦手で、何から始めればいいか分からないという方もいらっしゃいますね」
そういう方も、部屋を小さく区切って1カ所ずつ短時間にやることで、きれいに片付けられるようになるそうです。
「一度にあれもこれもやろうとしてもうまくいきません。まずはテーブルの上のゴミを片付ける、といったことから一つずつ始めてみましょう。1カ所5分とか10分とか短い時間を決めてやってみると集中できますよ。
一つだけ注意があります。片付かない物があるからと、とりあえず別の部屋に持っていくのはやめましょう。そうやって移動させればリビングが片付いたような気分になりますが、それはただ見えないところに移動しただけ。家の中の物は溢れたままです」
書斎
本棚も、気付いたらもう新しく買った本を入れるスペースがないという状態になりがちな場所です。どんどん増えていく本はどう片付けていったらいいのでしょう。
「本棚の整理というと、ジャンル分けをしたり、きれいに見えるように大きさを揃えて並べたりと、まず考えるのは『今ある本をどうしまうか』ですよね。けれど肝心なのは、取っておきたい本と手放す本を分けて、数を減らすことです」
いつのまにか増えた本を、本棚に入らないからといって床や机に重ねて置いてあったりすると、それを整理するために新しい本棚を買って収納スペースを増やそうとしがちです。しかしそれは、前回教えていただいた靴箱の例のように、絶対にNGな行為。
「本当に残したい本だけ残して、今ある本棚に入るだけの数に絞りましょう。その後も、新しい本を買ったらそれを収めるために古い本を1冊手放すと決めれば、溢れかえることはありません。
もしも壁が見えないほど本棚が何台も並んでいる部屋があるならば、本棚そのものを減らすことを考えてみてはいかがでしょうか」
最近では、本を断裁して一気にスキャンし、1冊たったの数分で電子化できるスキャナーもあります。そうしたツールを使って冊数を減らす方法もありますね。
クローゼット
洋服でいっぱいのクローゼットは、第1回で「だ・わ・へ・し」の4ステップで整理する方法を学びました。おさらいをしつつ、さらに整理のコツを伺いましょう。
「まずは『だ(出す)』でクローゼットからすべての服を出します。次に『わ(分ける)』で、今後も着る物ともう着ないものに分けるのですが、そのときにまず、服のジャンル別に分けてみましょう。
例えばスーツ。シミがあったり型崩れをしていたり、形が古くて何年も着ていないものは潔く手放しましょう。また、似たようなデザインの服が2枚あったら、どちらかに絞るといいでしょう。
そうやって『へ(減らす)』を進めていきます。自分が1シーズンにどのくらい服が必要なのか、同時にクローゼットにどのくらい服が入るか、『し(しまう)』を考えながら整理していくといいですよ」
それでも、古いからもう捨てようとは思うものの、なんとなくまだ着そう、捨てる踏ん切りがつかない、という服はあるものです。
「そうした服は、一つ箱などを用意してまとめて入れておくといいですよ。その後1年間、着ることがなかったら、その服は手放してもいいのではないでしょうか」
キッチン
(写真提供:井田典子)
キッチンは食器や調理器具、食材などで常にいっぱいです。井田さんはどうしているのでしょうか。
「私は、基本的に食材はあまりストックしません。例えば乾物などをストックしているご家庭は多いと思いますが、私は乾物を買ってもすぐに戻して料理し、小分けにして冷凍してしまいます。
そうすれば、ストックしておいてその都度料理するより早く食べきりますし、ストックしておく場所も不要になります。食材のまま置いておくといつの間にか傷んでいることもあるので、この方法なら食材を無駄にすることもなくなりますよ」
食器や調理器具は、他の場所と同様に、まずはなるべく減らすことが肝心だそうです。
「カトラリーは引き出し一つに入るだけに減らしてしまいましょう。お鍋も、シンク下のスペースに入るだけに絞って収納しましょう」
また、大きなお皿などは重ねてしまっておくと下の方は使わなくなりがちですが、せっかく残すのであれば使いやすくする工夫が必要と井田さんは言います。
「100円ショップで書類を整理するプラスチックの箱やブックスタンド、ディッシュスタンドなどを買ってきて、縦に収納するといいと思います」
まずは引き出し一つから
家に溢れているものを整理すれば、シンプルで無駄のない生活ができるようになります。
「けれど、さあ家をまるごと片付けるぞと意気込んでも、実際に溢れているものを見ると、ハードルが高く感じて気持ちが折れそうになりますよね。最初はそんなに頑張りすぎなくてもいいんです。例えば『まずは引き出し一つ』と決めて、そこの物を減らし、使いやすく収納すれば、それだけで心も軽くなりますよ」
頑張りすぎず、まずはできるところから。それが「ゆる整理」の極意なのでしょう。
井田さんは収納スペースを増やさず、物を減らして収納することを「0円リフォーム」と呼んでいるそうです。お金をかけずとも、「ゆる整理」を続けていけば、リフォームをすることに匹敵するくらい家は快適になるかもしれませんね。
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