ツインデミックを防ぐ!感染症に負けない部屋作り[第4回]

予測不能な感染症の流行に備えるセルフケア

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「コロナ対策=インフルエンザ対策」と考えてOK

 新型コロナウイルスとインフルエンザで、取るべき対策は異なるのでしょうか。

「新型コロナウイルスもインフルエンザも呼吸器感染症ですので、口から出る飛沫などで伝播していくという経路は同じです。ですので基本的には『コロナ対策=(イコール)インフルエンザ対策』と考えて問題ありません。これまで言われてきた通り、密を避ける、こまめな手洗いやアルコール消毒、マスクをするなどの基本的な対策をしていれば大丈夫です」

 今年の6月頃、オーストラリアなどの北半球が冬を迎えた時期にインフルエンザがコロナ禍前と同じような形の流行曲線を描いたことを考えると、日本もこの冬はツインデミックが予想されるのでしょうか。

「コロナ禍になってから昨年も一昨年もインフルエンザの同時流行の懸念は言われていましたが、日本ではマスクの着用が定着したり、外出を控えるなどしていたこともあって、あまりインフルエンザの罹患は見られませんでした。今年は入国緩和や旅行支援も始まり、政府もマスクはもう外していいと言い始めているので、そうした中で今年は日本でも北半球のように流行するのか、注視しています。

 現在、オミクロン株による陽性者数が増加傾向(第8波)にあります。ワクチン接種は重要なセルフケアのひとつです。現在オミクロン株対応の2価ワクチンが接種できますので、まだの方はぜひ接種をお勧めします。また、インフルエンザワクチン接種も受けることを強く推奨します。インフルエンザはワクチンを打ってもかかることはありますが、重症化および死亡リスクを低減させると報告されています。
 コロナワクチンとの同時接種もできますので、できれば、年内に接種をお済ませください」

 新型コロナウイルスもインフルエンザも、取るべき対策は先ほど先生も言われた通り、

・人がいる場所に出る際はマスクを着用
・密閉・密集・密接を避ける。特に飲食の際には注意が必要
・定期的に換気する
・不特定多数の人が触ったところに触れたら手洗いやアルコール消毒

 などが重要です。外出時には基本マスクを着用しましょう。屋外などで人との距離が取れる時にはマスクを外すこともできますが、マスクの着用は有効な感染対策です。また、いつでもどこでも手指消毒ができるよう、携帯用のアルコール消毒薬を持ち歩いたり、手洗いで手荒れしないようにハンドクリームを使うなども心がけながら、飛沫感染や接触感染に備えていきましょう。

 また、うがいは、風邪の予防効果として賛否が分かれています。コロナウイルスは唾液からも検出されますので、万が一自身が新型コロナウイルス感染症だった場合(無症状もある)ウイルスの含まれているうがい水を吐き出すことになりかねず、周囲をウイルスで汚染させる可能性があるので、避けた方がよいでしょう」

発熱した場合はまず新型コロナウイルスの検査を

 免疫力を高めると謳っている機能性食品やサプリメントについては、意識して摂った方がよいのでしょうか。

「機能性食品やサプリメントに頼るのではなく、バランスのよい食事をしっかりとることが免疫力を維持あるいは高めることに有効であることは言うまでもありません。合わせて、適度の運動、十分な睡眠、活動的でストレスを軽減させる生活を送ることも有効です」

 やはり食事も運動も生活リズムも、適度なバランスが大切ということですね。

 それでも感染症にかかってしまった時は、どのような点に気をつければよいのでしょうか。例えば発熱した場合、新型コロナウイルスなのかインフルエンザなのか、判断に迷いそうです。

「発熱などの症状だけで、コロナなのかインフルエンザなのかの判断をするのは難しいです。まずは抗体検査キットなどを使って新型コロナウイルスの検査をして、陰性だった場合はインフルエンザを疑う、というような流れが想定されますね。ただ、同居する家族にインフルエンザだと診断された人がいたり、新型コロナウイルスに感染した人がいるなどで発熱した場合は、ほぼ同じものに感染したと思って検査を受けるとよいでしょう」

 同時流行に備えて医療機関が逼迫しないように、発熱外来は高齢者や乳幼児など重症化リスクの高い人のみに限定するなど、熱が出た場合の対応を都道府県によってはこれまでと変更している場合もあるようです。お住まいの地域では発熱した場合の対応としてどういう流れになるのか、あらかじめ確認しておくと安心です。

 いよいよ本格的にインフルエンザが流行しやすい季節が到来。定期的に部屋の換気を行う、適切な温度と湿度を保つといった、家の中でできる対策をしっかり行い、感染症に負けずにこの冬を乗り切りたいですね。

≪お話を伺った方≫

菅原えりささん

東京医療保健大学大学院医療保健学研究科感染制御学教授。 東京iCDC専門家ボードの感染制御チームに参画。


文/中原絵里子
画像/Shutterstock

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