温度と湿度が低い状態でウイルスは最も活性化
冬場の室内が乾燥しやすいのは、温度が下がることで空気中の飽和水蒸気量が減るのに対して、暖房器具などで室温を上げると空気中に含むことができる水蒸気量が増えるにもかかわらず、水分量に変化がないため、相対的に湿度が下がるから。
では、湿度が下がるとウイルスにとってどのような影響があるのでしょうか。
「温度が低く、湿度も低い状態がもっともウイルスが活性化し、感染力を維持する期間も長くなると言われています。理化学研究所がスーパーコンピューター『富岳』で行ったシミュレーションによると、湿度が30%の部屋でせきをした場合と、湿度が60%の部屋の場合を比較すると、離れた場所まで届く飛沫量が倍になるという結果も出ています」
さらに空気が乾燥すると肌や粘膜も乾燥して免疫低下の原因となり、外部からの菌やウイルスの攻撃に弱くなって、喉の炎症などを起こしやすくなるのだそう。エアコンなどの暖房器具を一日中つけっぱなしにしていると、どうしても乾燥しやすくなるので注意が必要です。
どのぐらいの湿度を保つことが、新型コロナウイルスやインフルエンザの感染予防として望ましいのでしょうか。
「人が快適だと感じる湿度は40~60%だと言われていますが、ウイルス対策の観点では50~60%に保ちたいものです。ただ、室内の温度も湿度も空気の流れも、その部屋で過ごす人の人数によって変化します。人がその場にいるだけでも温度や湿気を発散していますから。人が出入りしたりする場合は同じ湿度をずっと保つことは難しいと思いますので、理想は60%ですが、多少幅を持たせて50~60%を目安に調整するといいですね。
湿度が高い方がウイルスは不活化しますが、あまりにも高いと不快ですし、カビや結露の原因にもなります。ですからジメジメしすぎず、人が健康的で快適な生活を送るのに適していると感じられる温度や湿度を保つのが望ましいですね」
加湿器を設置する場所、NGなのは?
50~60%の湿度を保つために、加湿の方法として、やかんなどでお湯を沸かす、部屋干しをする、お風呂のドアを開放するなどもありますが、やはり最も効率的なのは加湿器の活用です。短時間で室内の湿度を上げられて、一定の湿度を保ちやすいのが特徴です。
加湿器をより効果的に活用するために、どのようなことに注意すればよいのでしょうか。
「まず置き場所ですが、部屋の端ではなくできるだけ真ん中に置くとよいでしょう。窓際などに置くとすぐに冷やされて結露の原因になったり、カーテンや壁紙がカビやすくなったりすることも考えられます。換気扇や出入り口付近に置いていると、部屋の外に蒸気が流れてしまいます。
また、暖かい空気は部屋の上部に流れ、冷たい空気は下部に流れる性質がありますから、床に直接置くよりも、できるだけ高い場所に置いた方が効果的です。暖房器具の風が吹き出して降りてくる位置に加湿器を置いておくと、暖かい空気を湿らせてから部屋全体に回すことができるのでオススメです」
加湿器の数が限られている場合、どの部屋に優先的に置いた方がよいのでしょうか。
「やはり暖房をつけている時間が長いリビングは、湿度を意識した方がいいですね。寝室に加湿器を置く方も多いのですが、例えば寝入りまでの1時間だけタイマーで暖房をつけて自動で切れるように設定している場合、室内の温度が下がってくると飽和水蒸気量も減るのに一晩中加湿していると過剰になってしまい、それが結露の原因になることもあるので、注意が必要です」
多機能化する加湿器、選ぶ時のポイントは?
加湿器には、水を沸騰させて水蒸気を発生させるスチーム式や水で湿らせたフィルターにファンで風を当てて加湿する気化式、水に超音波を当てて振動させてミストをつくる超音波式、超音波式とスチームを合体させたハイブリッド式など、さまざまな種類のものがあります。それぞれメリット、デメリットがあるかと思いますが、どのようなことを意識して選ぶとよいでしょうか。
「便利な機能につい目がいきやすいですが、やはりメンテナンスがしやすいというのが一番だと思います。カビの発生を防ぐためにもフィルターのお掃除はこまめにする必要がありますし、タンクの水は毎日新しいものに取り替えなければなりません。そうした日々のメンテナンスのしやすさを考えると、シンプルなものがいいのではないかと思います」
いつ入れたかわからないような水で加湿するなど衛生管理を怠ると、カビや菌の温床になりかねませんし、ニオイの原因にもなります。水を継ぎ足しで使うのはやめて、毎日交換するようにし、使わない時は加湿器を乾燥させるように心がけましょう。
コロナやインフルエンザ対策として室内の湿度と同時に重要なのが「換気」です。次回は換気のポイントについてお話を伺っていきます。
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