この夏、酷使したエアコンのメンテは今すぐに!【第1回】

冬前にエアコンのメンテナンスが必要な理由

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今、大掃除をすれば次の秋までニオイ知らず?

溜まりに溜まったエアコン内部のホコリ(写真左)も、プロが掃除をするとご覧のとおり(写真右)。写真提供:カジタク

 集合住宅はもとより、住まいの断熱性向上やエアコンの性能アップなどにより、北国でも暖房の主役はエアコンというケースが増えています。冬のエアコンの本格稼働前に、この夏の酷暑のなかフル稼働したエアコンのメンテナンスをして、冬も快適に使えるようにしておきたいものです。

「エアコンの掃除依頼は夏前にピークを迎えますが、実は、冬前に大掃除をした方が効率的なんです」

 こう語るのは、エアコンクリーニングやお掃除、家事などの代行サービス「カジタク」を提供するアクティア株式会社でトレーナーを務める鈴木健吾さん。プロのお掃除集団をトレーニングする、いわばプロの中のプロです。

 エアコンは外の空気と室内の空気を「熱交換」によって、夏場は冷気を、冬場は暖気を吹き出します。冷気を吹き出す際に、温度差からエアコン内部に結露が発生しやすく、それがホコリと結びついてカビが発生してしまうのです。
 エアコンにはホコリが内部に入るのを防ぐフィルターがあります。取り出して掃除機でホコリを吸い取ったり、水洗いしたりするなど定期的な清掃を行うことが必要ですが、エアコンは高いところに設置されているので、わかっていても億劫でつい放置しがちです。

「何年もクリーニングされない方もいますが、そうするとフィルターでホコリを防ぎきれなくなり、エアコン内部にホコリが入り込んでしまいます。エアコンの吹き出し口からなんだか嫌なニオイがするときは、内部に溜まったホコリを栄養にカビが発生している証拠でもあります」

 ホコリが溜まると機械に負荷がかかるので電気代もかさみますし、何より故障の原因にもなりかねません。

「暖房の運転では結露は発生しません。つまり、冷房の使用を終えた秋以降にクリーニングをすれば、次の冷房運転が終わるまで約1年間はカビの発生を抑えつつエアコンを使用することができます。これが、夏前よりも冬前にクリーニングしていただくほうが効率的な理由です」

 エアコンクリーニングの依頼のピークは、夏場の運転に備える梅雨時が多いといいます。除湿運転をする際、何か変なニオイがするといった症状が起きるからです。しかし、夏前にプロがクリーニングしても、こまめなフィルターの掃除や室内機の乾燥運転を怠ると、ひと夏で再びカビが発生し、そのカビが室内にばらまかれる可能性もあるのだそうです。

フィルター掃除機能付きでもメンテナンスは必要

カジタクのトレーニングセンターに設置された各社の最新機種。進化するエアコンの機能に対応した最適な清掃の研究がなされている。

 最近のエアコンには、フィルターの自動掃除機能が付いている機種が増えました。エアコンのスイッチを切った後でもしばらく運転しているのは、フィルターの掃除や結露を防ぐための乾燥運転を行っているからです。

「電気代を気にしてか、スイッチの2度切りをしてこの運転を止めてしまう方もいらっしゃいますが、これはしないほうがいいです」

 では、掃除機能が付いているエアコンならフィルターの掃除は必要ないのでしょうか。

「この機能を過信せず、やはり定期的にフィルター掃除はした方がいいです。

 実際、掃除機能付きのエアコンでも、フィルターを外すとかなりのホコリが溜まっていることがわかります。フィルター外側のホコリが付着している部分を掃除機で吸えば十分です。それでも取り切れない場合や、黒い汚れがあるようならシャワーで水洗いしましょう。その時は内側(裏側)からシャワーをかけてください。
 黒い汚れはカビです。水洗いで落ちないときは中性洗剤を使って洗い落としましょう」

「ゴミ箱」もフィルター同様、簡単に外すことができる。機種によっては室外に放出するものもある。

 最近のお掃除機能付きエアコンには「ダストボックス」が付いている機種もあります。自動でフィルターを掃除した際、ここにゴミを集める仕組みになっています。簡単に外せるので、この清掃もお忘れなく(ダストボックスが満杯になってしまっていると、フィルターのホコリが落とせなくなってしまう)。また、一部機種ではホコリを室外に放出させるものもあります。このタイプには「ダストボックス」はありません。

「フィルターを外す作業は脚立や台に乗って行うことが多いと思います。踏み外して転落しないように、十分に注意してください」

室外機のメンテナンスは不要?

 そもそもエアコンは室内機と室外機からなり、それが配管でつなげられています。配管には温度調節を行う冷媒ガスが入っていて、室外機でガスを圧縮して循環しながら「熱」を運びます。言ってみれば、冷媒は血液であり、室外機は血液を循環させる心臓のようなものです。

室外機は基本的にはメンテナンスの必要はないが、周囲に物を置かないこと。たまに水洗いしてファン周辺の汚れを落とすこともお忘れなく。

「基本的に、室外機はメンテナンスの必要がないように丈夫にできています。ただ、冷媒ガスを効率よく機能させるために、室外機の周辺には物を置いたりせず、空気の流れを妨げないようにしましょう」

 室外機は防水なので濡れても大丈夫です。室外機のファン周辺をきれいに水洗いするのも効率よく運転させるポイントだとか。
 ただし、注意しなければならないこともあります。近年、大型台風などで水害が頻発しています。風雨にさらされる程度ではまったく問題ありませんが、水没した室外機を使うのは非常に危険です。買い替えが必要です。この夏、もし被害を受けた方がいらしたら、メーカーや販売店などにご相談を。多くの場合、火災保険対象ですので、保険会社にも確認してみてください。

※水害、水没によるトラブルに関しての問い合わせや苦情は、アクティア側での責任を負いかねます。

 第2回は、プロのエアコンクリーニングの工程をご紹介します。

≪お話を伺った人≫

アクティア株式会社 鈴木健吾さん

ハウスクリーニング、宅配クリーニング、家事代行、整理収納、片付けなど家事の宅配サービス「カジタク」を提供しているアクティア株式会社で、サービスのプロを育てるトレーナーを務める。お掃除のプロ中のプロ。

文◎三星雅人
撮影◎村越将浩

リクシルオーナーズクラブ(年会費無料)