マイホームの夢を叶える「狭小住宅」という選択肢 [第1回]

“小さくても住みやすい家”は建てられる!

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土地代、維持費が抑えられる

 狭小住宅とは、約15~25坪、場合によってはそれよりも小さな土地に建てられる家のことです。いびつな形の敷地や傾斜地など、建築困難な場所に建てられる住宅も当てはまります。

 そんな狭くて小さいというイメージが先行しがちな狭小住宅ですが、メリットもあります。

 まず、マイホームを建てる場所の選択肢が増えるでしょう。都市部や駅周辺など、利便性の高い人気のエリアは、土地を確保するのが難しい。けれども、狭小地であれば、希望するエリアの土地を購入できる可能性が高まるのです。地価の高い都心部であっても、狭ければ、その分土地代は安くなります。

 また、家を建てると、固定資産税や都市計画税などを毎年払わなければなりません。これらは土地の広さに比例して課税されるため、小さい分、税金を抑えることができます。

 そのほか、修繕が必要になった場合も、1つ1つの部位が小さいので費用があまりかからなかったり、冷暖房費をはじめとする光熱費も節約することができたりすることも、狭小住宅ならではのメリットです。

家族で肩を寄せ合いながら……

 狭小住宅の良さは、経済的、物質的な得だけにとどまりません。これまで多くの狭小住宅の設計を手掛けてきただけでなく、自身も5人家族で18坪の家に住んでいるという島崎さんは、その一番の長所を「家族との距離が近くなること」だと語ります。

「コンパクトで身の丈に合った生活を営むことこそが贅沢であると、今の私は考えています。家が小さくても、家族で肩を寄せ合って暮らせることは、幸せなことではないでしょうか。私自身、18坪の狭小住宅で暮らすことで、家族の表情がよく見え、より仲が深まっていると感じています」

 島崎さんは、狭小住宅での生活に対するネガティブなイメージを変えるため、そうした暮らしを「ちびいえライフ」と呼び、小さく豊かなライフスタイルを提唱しているそうです。

限られた空間で快適に暮らすには

 島崎さんは、坪数が少なく狭い場所でも、工夫次第で快適に過ごすことは可能だと話します。

「土地が狭くても、高さや深さをつくることで空間を確保したり、広さを感じられるようなデザインや間取りにしたりすれば、快適な住まいを建てることは可能です。また、家族構成やライフスタイルは人それぞれなので、住む人に合わせた家づくりを意識することも大切でしょう」

 さらに、狭小住宅に強い設計事務所や工務店を選ぶことも、重要なポイントだといいます。

「一口に料理人といっても、専門分野や得意なジャンルがあるように、設計士や建築家にも得手不得手があるのです。ぜひ、狭小住宅への見識が深く、豊富な経験を持つ設計事務所や工務店にご相談されることをおすすめします」

 家を建てたあと、快適な暮らしを実現できるかどうかは「住む人の覚悟」で決まるそうです。

「これまで私が手掛けた狭小住宅で、引き渡し後に『狭い』と言った方は1人もいませんでした。むしろ、『思ったより広く感じた』という方がほとんど。それは、小さく住むことに対して、覚悟を持っていたからだと思います」

 気持ちの面でもそうですが、実際に引っ越しの準備をする際にも、覚悟が必要になってくるといいます。例えば、限られた空間を広々と使うコツは、まず、荷物を少なくすること。

「引っ越す前に、いる物といらない物を取捨選択しましょう。家に置くものを厳選することで、自分らしいライフスタイルが明確になるかもしれません」

 次回の記事では、島崎さんが手掛けた狭小住宅の施工事例を紹介しながら、限られた空間を最大限に活かすデザインや間取りのアイデアをご紹介します。

≪お話を伺った方≫

島崎 衛さん

一級建築士・管理建築士。株式会社サオビ 一級建築事務所 代表取締役。明治大学工学部建築学科、千葉大学大学院デザイン科学修士課程を卒業。コンセプトワーク・デザイン・コストまでトータルにプロジェクト全体を俯瞰するマネージメントを信条としている。クライアントとは、じっくり話し合える家族や友人のような身近な関係でありたいと考える。自身設計18坪の狭小住宅で小さく豊かな暮らしを、夫婦と子供3人の、5人家族で実践中。

文◎八木麻里恵
人物写真◎加々美義人
画像提供◎株式会社サオビ 一級建築事務所

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