マイホームの夢を叶える「狭小住宅」という選択肢 [第3回]

事前確認必須! 見逃せない注意点

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土地探しは、プロに相談

 土地を購入したからといって、自由に家を建てられるわけではありません。
 建築基準法に則った規制が存在するため、土地から探す場合は、まず「建ぺい率」「容積率」「斜線の制限」を押さえておく必要があるでしょう。

建ぺい率

土地面積に対する建築面積の割合のこと。土地面積が100㎡で建築面積が60㎡であれば、建ぺい率は60%となる。行政によって、地域ごとに建ぺい率の上限が定められている。

容積率

土地面積に対する延床面積(各階の床面積の合計)の割合のこと。土地面積が100㎡で建築面積が120㎡であれば、容積率は120%となる。建ぺい率と同様、行政によって、地域ごとに容積率の上限が定められている。

斜線の制限

建物の高さに関する規制のこと。高い建物は日当たりで周囲に影響を与える可能性があるため、高さ制限・道路斜線制限・隣接斜線制限・北側斜線制限・日影規制などのルールが設けられている場合がある。道路幅や道路との距離によっても、大きく異なる。

「容積率だけ見て『広い家が建てられる』と思っても、斜線規制によって高さが制限されてしまうこともあるため、注意が必要です」

 狭小住宅はさまざまな建築制限を受ける可能性があり、数字を見るだけではわからないことも多いため、「必ず専門家に相談してください」と島崎さんはいいます。

「不動産業者の方からもアドバイスをいただくと思いますが、設計のことはその道のプロに聞いたほうが間違えずに済むでしょう。土地を購入してから後悔しないためにも、ぜひ探す段階で、狭小住宅が得意な専門家に相談することをおすすめします」

地下室はコスパが悪い!?

 建築基準法によると、地下室は延床面積の3分の1未満であれば容積として計算されません。そのため、狭小住宅で空間を確保する方法として、地下室の設置は有効な手段のひとつです。

 しかし、島崎さんはコスパの面から、地下室の設置はあまり提案しないようにしているといいます。
 
「地下をつくるには、地盤の調査や補強工事など、さまざまなコストがかかります。また、湿気や防水対策など、こまめなメンテナンスも必要です。限られた予算の中で家を建てるならば、地下室の設置はコスパが悪いといわざるをえません」

 かわりの手段として、島崎さんはロフトを設置する他、法的面積緩和など、敷地のポテンシャルを最大限引き出す提案を行っています。

「ロフトの場合、高さが1.4m以下で、面積がその階の2分の1以下であるなどの条件を満たせば、延床面積に含まれません。容積率が低くても、ロフトを収納場所として活用するといった工夫をすれば、間取りを広く確保することができるのです」

駐車場スペースの考慮もお忘れなく

 狭小住宅は幅が狭く、住居とは別に駐車場のスペースを確保するのが難しいでしょう。
 その場合は、住居内に駐車スペースがある「ビルトインガレージ」を取り入れるのが一般的です。

建設費が割高になる!?

 狭小住宅というと、土地面積が小さい分、建築費も割安になるイメージがあるかもしれません。この認識は誤りで、実際は、広々とした土地に建てるよりも割高になるケースもあるのです。

 まず、狭小住宅の場合は狭い地域に建て込むことになるため、手間がかかる場合があります。また、全体面積が小さいものの、水回りは通常住宅と同じため、面積で建築費を割ると割高に見えることがあります。

 狭小住宅を検討している方は、そうした案件を得意としている専門家に相談した上で、コストも含め、今一度、メリット・デメリットを洗い出してみてはいかがでしょうか。

≪お話を伺った方≫

島崎 衛さん

一級建築士・管理建築士。株式会社サオビ 一級建築事務所 代表取締役。明治大学工学部建築学科、千葉大学大学院デザイン科学修士課程を卒業。コンセプトワーク・デザイン・コストまでトータルにプロジェクト全体を俯瞰するマネージメントを信条としている。クライアントとは、じっくり話し合える家族や友人のような身近な関係でありたいと考える。自身設計18坪の狭小住宅で小さく豊かな暮らしを、夫婦と子供3人の、5人家族で実践中。

文◎八木麻里恵
人物写真◎加々美義人
画像提供◎株式会社サオビ 一級建築事務所

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