マイホームの夢を叶える「狭小住宅」という選択肢 [第2回]

間取りやデザインで、広さを演出する

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20坪を最大限に活かした家づくり

 まずは、延床面積(各階の床面積の合計)20坪、2階建て+ロフトという間取りの戸建て住宅を見てみましょう。空間を広々と使いながら、快適に暮らすための工夫が至るところに施されています。

●無駄な空間をつくらない

 間取りを見ると、各階とも階段を中心に回遊できるようになっています。
 行き止まりがなく、通路のためだけの廊下がないので、無駄な空間がありません。

●収納や家具を壁付けにする

 棚やキッチンなどが、すべて壁付けされています。
 また、空間の至るところに造作収納があり、限られた空間の中でもしっかりと片付けスペースが確保されています。

「収納やキッチンを壁付けにすると、部屋を最大限広く使うことができます。また、収納にあえて扉や仕切りを取り付けないようにすると、使い方の自由度が高まるのです」

●ロフトを設置して高さをつくる

 ロフトをつくることで、空間が増えるだけでなく、高さが出て、開放感を演出することができます。

●部屋を壁で仕切らない

 障子とガラス間仕切りを取り入れ、明るさを保ちながら他の空間との区分けをしています。壁で仕切ると、光を遮断して圧迫感が生まれるだけでなく、空間の使い勝手が狭められてしまいます。

●窓から、ちょうど良い明るさを取り入れる

 狭小住宅は隣家との距離が近いことも多いでしょう。そのため、光を取り入れるためのさまざまな工夫が施されています。
 北側の天井に勾配が付いており、開放感がもたらされているのです。また、天窓や台形の窓を設置することで、わずかに差し込む優しい光を最大限に活かすようになっています。

 一方で、日差しが強すぎる場合は調整できるのが理想でしょう。
 写真を見ると、南側の窓の日当たりが良いため、脱着式のルーバーを取り付け、季節による日照変化や近隣からの視線を調整できるようになっています。

スキップフロアで空間を広々と使う

 狭小住宅で高さを出しながら開放感を演出する手法に、「スキップフロア」があります。
 スキップフロアとは、部分的に段差を設けたり、数段の階段をつけたりして「中2階」「中3階」といった中階層をつくる間取りを指すものです。

 壁やドアではなく、高さで空間を緩やかに区切ることができるので、空間の広さを確保しやすいことがメリットでしょう。
 ここでは島崎さんが手掛けた事例を見ながら、スキップフロアを活かす間取りやデザインをご紹介します。

●階段を使って、視覚に抜けをつくる

 階段の一歩に壁をつくらないようにすることで、視覚に抜けができるので、圧迫感がなくなるという手法です。また、オープン階段にすると、広さを演出できるだけでなく、下階への採光効果が期待できます。

●段差を付けて意識的に空間を仕切る

 壁やドアがなくても、部屋の一部に段差を設けるだけで、空間を仕切ることが可能です。
 より区切りを明確にしたいなら、移動式の間仕切りやカーテンなどを取り付けると良いでしょう。

●吹き抜け部分をつくる

 室内がより広々と感じられるほか、下階にも明るさを取り入れることができるのが吹き抜けです。
 空間を贅沢に使っているようで、おしゃれな雰囲気にもなりますね。

 次回の記事では、狭小住宅を選ぶ際の注意点をお伝えします。

≪お話を伺った方≫

島崎 衛さん

一級建築士・管理建築士。株式会社サオビ 一級建築事務所 代表取締役。明治大学工学部建築学科、千葉大学大学院デザイン科学修士課程を卒業。コンセプトワーク・デザイン・コストまでトータルにプロジェクト全体を俯瞰するマネージメントを信条としている。クライアントとは、じっくり話し合える家族や友人のような身近な関係でありたいと考える。自身設計18坪の狭小住宅で小さく豊かな暮らしを、夫婦と子供3人の、5人家族で実践中。

文◎八木麻里恵
人物写真◎加々美義人
画像提供◎株式会社サオビ 一級建築事務所

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