“おいしい趣味”のスタート[第1回]

春は、家庭菜園を始めるのに最適のタイミング!

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家庭菜園はどうやって始める?

 最初に、家庭菜園の手順を藤田先生に説明していただきました。

「まず場所を決めます。プランターを使った家庭菜園の場合は、ベランダや庭などにスペースを確保しましょう。できるだけ日当たりの良いところがおすすめです」

 次は道具ですね。

「『種・苗』はもちろん、それ以外に最低限必要な道具は、『プランター』『培養土』『じょうろ』『スコップ』『ハサミ』でしょう」(道具については第2回でも解説します)

 道具をそろえたら、プランターに培養土を入れ、種や苗を植えると「家庭菜園のスタート」です。意外と簡単に始められそうですね。

「家庭菜園を始めるのは、そこまで難しくないのです。ただ、そこがゴールではありませんよね。植えた後に、育てて収穫することが最大の目標です。そのためにしっかりと準備していきましょう」

スタートは春がベスト!

 藤田先生によれば、春は野菜を育てるのに適した時期なのだとか。

「4月に入れば、暖かくなり日照時間も増えるため、野菜を育てるのに適した環境が整うのです」

 寒すぎず暑すぎない季節だからこそ、野菜にも、作業する人にも負担がかかりづらいというところがポイントですね。

「また、春から育てるべき野菜に、初心者でも比較的簡単に栽培できる種類が多いことも特長です。だいたい、1ヶ月から2ヶ月程度で収穫できます」

 短い期間で形になるので、モチベーションも維持しやすいのでしょう。
「暖かくなってきて野菜が育ちやすい」「育てやすい野菜が多い」「季節的に作業しやすい」という点で、家庭菜園は春に始めるのがベストなのですね。

最大限注意すべきことは……

 春は野菜を育てやすい時期といっても、注意すべき点があるのだとか。

「春はたしかに暖かい季節ですが、まだ寒さが残っている場合もあります。朝晩で寒暖差が激しかったり、突然気温が下がる日があったりと、気候的に不安定な要素があるのです」

 急な冷えは、野菜に深刻なダメージを与えるおそれがある、ということですね。

「地域によっては、霜が降りることもあるかもしれません。暖かい土の中に種がある段階なら問題ないのですが、芽が出た後だと致命的です」

 春だからといって油断せずに、寒さ対策を怠らないことが重要ですね。

「野菜を寒さから守るには、プランター回りにいくつか工夫をすると効果的。たとえば、植えた野菜を防虫ネット等で覆うことをおすすめしています」

栽培環境が家庭菜園の未来を決める!

 藤田先生によれば「家庭菜園を始める場所で、野菜の育ちが変わってくる」とのこと。

「適した環境を用意してあげれば、結果的によく育ち、たくさん収穫できるでしょう」

 では、どのような環境を意識すると良いでしょうか。

「育てる野菜によっても違いはありますが、基本的には『日当たりが良く、風通しも良い場所』『栄養豊富で水はけの良い土』がそろっていると、野菜をつくるのに適した場所といえますね」

 日当たりや風通しが悪い場所や、栄養が無い土で栽培していると、野菜が十分に育ちません。水はけの悪いところでは、最悪の場合、根が腐ってしまうこともあるそうです。

 その一方で、一般的には「悪い環境」と考えられる場所でも、しっかり育てられる野菜があるといいます。

「ミョウガやミツバが良い例です。これらは日当たりが悪くても育つ野菜で、かなり手軽に栽培できます。もし、環境の改善が難しいようなら、その場所に適した野菜を選ぶのも、ひとつの手といえるでしょう」

 野菜に合わせて環境を変えるのも良し、逆に、環境に合わせて野菜を選ぶのも良し。無理ない範囲で、チャレンジできそうですね。

 次回は、家庭菜園を始めるために必要な道具について、さらに詳しく藤田先生にお話をうかがいます。

■お話をうかがった方

藤田智さん

恵泉女学園大学副学長・人間社会学部教授。専門は園芸学、野菜園芸学。家庭菜園や市民農園の指導、普及活動に積極的に取り組む。わかりやすい解説と軽妙な語り口が人気で、メディア出演・講義多数。主な著書に『NHK趣味の園芸 やさいの時間 藤田智の新・野菜づくり大全』『これで失敗しない家庭菜園Q&A』など。

文◎熨斗秀信
撮影◎平野晋子
写真提供◎Shutterstock

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