野菜選びのポイントは、種と苗で違う
藤田先生によれば、野菜を種から栽培する場合は、育てやすさに注目すると良いのだそうです。
「種の時点では、どのように育っていくか、まだわかりません。『育てやすい種類の野菜かどうか』に注目して選びましょう」
一方、苗を買う際は、育てやすさだけでなく、「良い苗を見極めること」が必要なのだといいます。
「苗の場合は、同じ種類の野菜であっても、買ったものによってしっかりと育つかどうかが変わってきます。つまり、苗選びのポイントを知っておくべきなのです」
苗を選ぶ際は「葉」を見ると、良いものがわかるとのこと。
「葉がしっかりと育っているか、見極める必要があります。たとえば、サニーレタスであれば、双葉がついていて、本葉(真ん中の葉)が5~6枚の苗を選びましょう。トマトは、双葉があって本葉が7~9枚程度のものを選べば、立派に成長する確率が上がります」
野菜によって違いがあるようですが、葉の生育状況をしっかりと見るということですね。
「加えて、葉の表裏をよく観察して、変色していないかをチェックしましょう。色が変わっている場合は、病気にかかっていたり、根に問題があったりする可能性が高いのです」
また、苗を購入するタイミングにも気を付けてください。
「4月中旬までは寒いことが多いので、できれば下旬に買うのをおすすめします。そうすれば、寒さが厳しい時期を過ぎているので、安心して植えられるでしょう。中旬と下旬でたった10日程度の違いですが、野菜にとっては大きな環境の変化なのです」
苗から育て始めるのは4月下旬から、と覚えておきましょう。もちろん、第1回でお伝えしたように、寒さ対策はしておいた方が良いですね。
簡単に育てられる、おすすめの野菜とは?
春から家庭菜園を始め、種から育てる場合は、どのような野菜がおすすめでしょうか。
「『ほうれん草』『小松菜』『ラディッシュ』『ミニチンゲンサイ』ですね。これらは、植えてから1ヵ月程度で収穫できる野菜で、病気や寒さにも強く、初心者にうってつけだといえるでしょう」
早く収穫できるうえに、比較的簡単に育てられるのは魅力的です。
「苗から育てる場合は、『サニーレタス(リーフレタス)』がおすすめです。穏やかな気候で栽培するのが最適ですが、短期間であれば、猛暑や氷点下5℃の厳しい環境にも耐えてくれます。したがって春先の不安定な気温にも強いのです。また、およそ30日程度で収穫できるので、難易度は低めといえるでしょう」
ただし、上で紹介した野菜に共通して、注意するポイントもあるのだとか。
「これらはほとんどが葉物野菜のため、虫害を非常に受けやすいです。育てる際は、防虫ネットや自然農薬で、害虫対策を怠らないようにしてください」
毎日の心がけと、家庭菜園のやりがい
家庭菜園をするうえで、意識しておくべきことがあると藤田先生はいいます。
「毎日の心がけとして、野菜の状態をしっかりと観察し、気になるところがあったら迅速な対応をすることが大切です。もし、しおれかけていたら、水をあげる量を調整する。初心者は水をあげ過ぎることが多いので、『土が乾いたら水をやる』ように徹底しましょう。虫や病気から被害を受けているなら、適切な農薬を使う。とにかく野菜の変化を見逃さないよう、常に気を配っておきたいものです」
そうした心がけのもと、毎日の水やりや観察を続けていくうちに、愛着が生まれ、深い喜びを得られるのでしょう。
「種を植えて芽が出てきたときや、野菜を収穫するときは、私もいまだに感動します。初心者の方であれば、その感動はもっと強いものになるはずです。目に見える形で努力が報われるのは、本当にうれしいことですからね」
これが、まさに家庭菜園のやりがいです。
「さらに、家族との仲が深まります。みんなで同じ目的を持ち、一所懸命に作業することで、今までよりも強固な絆が生まれていきますよ」
たしかに、共通の趣味として、楽しみながら家庭内のコミュニケーションを深められそうですね。また、今は家庭菜園を始めるにはぴったりの状況とのこと。
「少し前まで、シニア世代にブームがきていました。今はコロナ禍で在宅時間が増えて、若い世代の間でも盛り上がってきています。老若男女で楽しまれているため、家庭菜園用品が手に入りやすい環境にもなっているでしょう」
春になり、暖かくなってきたら、家庭菜園を始めるのには最適なタイミングです。幅広い世代で親しまれて、以前よりも身近になっている今、ご自宅のベランダや庭で、新しい趣味をスタートしてみてはいかがでしょうか。
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