新築5年目にシロアリ診断を
シロアリに関する著書もある南山和也さん
放置され崩れ落ちた空き家。柱、床などいたるところにシロアリ被害の痕跡があった(写真◎三星雅人)
ご存じの通り、シロアリは集団で木を食い尽くす昆虫です。
名前にアリとつきますが、ゴキブリの一種で、木材の主成分の一つである「セルロース」をエサとする生き物です。セルロースのにおいを頼りに動き回り、ひとたび「セルロース=木材」を見つけると、仲間を呼び集めてむさぼり食べ尽くしてしまいます。
地球規模で考えれば、シロアリは森やジャングルなどで枯れた木を食べ土に還す益虫といえなくもありませんが、人間界においては、私たちが暮らす木材でできた家を食い荒らす恐怖の害虫にほかなりません。
もし家がシロアリに狙われれば、侵食が進んでもろくなった家は台風や地震などの自然災害で倒壊してしまう恐れも。
「我が家はまだ新しいから大丈夫」「リフォームしたばかりだから心配ない」、とも言い切れないようです。
公益社団法人日本しろあり対策協会の理事で、しろあり防除施工士や蟻害腐朽検査員の資格をもつ南山和也さんは、「新築から5年目は、一度、専門業者にシロアリ被害の診断をしてもらうことをおすすめします」といいます。
南山さんは、シロアリ被害予防や駆除のプロ集団、株式会社テオリアハウスクリニックの代表取締役でもあり、数々の被害現場を見てきました。
シロアリはどこからやってくる?
現在は新築時にシロアリと腐朽の対策が義務付けられており、すぐに被害にあうことはないでしょう。ただ、「家は人間と同じで、健康な状態を維持していくために、定期的にお医者さん(=シロアリ専門業者)に診てもらう必要があります。シロアリは家主に気づかれないように静かに家を蝕みます。新築5年目が最初の健康診断だと思ってください」と南山さんはいいます。
「耐震や水まわり、床下断熱などのリフォームをした際、基礎や柱の土台補強工事などをした際に、シロアリが生息する地中と家を結ぶ通路ができてしまい、被害にあうこともあります」
古くないから大丈夫とはいえないのです。気がついたときには被害が進み、床が抜けたり、柱の中がボロボロになっていたりすることもあるのです。
シロアリが好む家とは
では、どのような家がシロアリ被害にあうのでしょうか。
シロアリに狙われるのは古い家というのは早計で、シロアリは特に湿気の多い浴室、流しなどの水まわりといった場所が大好きです。たとえ築年数が長くても、家全体が乾燥していれば、シロアリにとっていい住環境ではありません。
そして湿気に加え、シロアリのエサである木材が家の側にある場合も、シロアリをおびき寄せてしまう要因に。
築年数の長短に関わらず、以下のような条件が一つでもあれば、シロアリ被害に注意が必要です。
- 雨漏りが原因で壁や床、柱に水がしみている
- 排気口が少ない、もしくは床下が低く風の通りが悪い
- 押し入れがカビ臭い
- 近くに川や井戸がある
- 建物の周辺に廃材や家具を放置している
- 枕木や木製の柵がある
- 庭に植木や盆栽を高密度で置いている
- 近所で古い家を解体した
コンクリート住宅でも被害?
コンクリートなら頑丈だし、シロアリのエサである木材ではないので安心かというと、油断はできないようです。
「実は築年数の浅い建物は、コンクリートそのものに水分が含まれており、その湿気がシロアリにとって心地よい環境をつくってしまうことがあります。シロアリの通り道である『蟻道』をコンクリート上につくり、家の内部に侵入してくるのです。また、シロアリの強力なアゴで直接コンクリートに穴を開け、その先にある住宅の木材に被害をもたらすことも」
キッチン、浴室、トイレなどが被害を受け、気がつくと床がブカブカになったり、柱の中がスカスカになったりしてしまうこともあります。コンクリートの住宅に住んでいるから安心というわけではないのです。
一度、家の保証書を出してシロアリ対策の項目を探してみましょう。防蟻の保証期間は5年です。人間の健康診断を見返すように、新築住宅、あるいはリフォームした住宅の方は、保証書をもとに家の健康診断のスケジュールを立てて、マンションの修繕計画のように、ご自宅のメンテナンスを見直す。こうしたことで、家の寿命を延ばすことにもつながるのです。
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