シリーズ男のリフォーム ワイン好きの憧れ! 自宅に本格セラーをつくる [第2回]

本格セラーが必要なのは、ワインは振動、光、暑さと乾燥が厳禁だから

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庫内は11度、湿度は75%に維持

「我が家のセラーに、何本くらいのワインを収納するかということから考え始めました。地下室の中の一部をセラーにするのでどのくらいのスペースを割り当てるのかということと、収納したい本数などですね。

2つのスペースの上にそれぞれ冷却設備を設ける。

 そして、ワインを保存するために必要な要素。ワインの保管は11℃から15℃くらいで一定しているのがベストです。さらには湿度も重要です。75%くらいが理想とされていますので、加湿器も導入して、適度な湿度を保てるようにしました」
 こう語るのは、奥様の由美子さんです。

 ワインは高温にさらされるとすぐに傷んでしまいます。急激な温度変化も禁物です。また、通常、ワインはコルクの栓が使われていますが、保管場所が乾燥していると空気が入ってしまいます。

 加えて、長期熟成させるために振動を避ける、光を避けるといったことが必要です。よくワイナリーのセラーが地下にあるのは、適度な温度と湿度を保ちやすく、振動や光の影響を受けにくいからなのです。

「日本の場合、特に夏の暑さはヨーロッパと比べてもかなり厳しいですから、地下にセラーを設けるといっても、冷却設備がなければ長期保管は無理なんです」(アーネストさん)

デイリーワインとコレクションスペースとでは、それぞれ独立した温度設定を行える念の入れよう。

 実際、シンガー家のワインセラーは、2つに分かれた空間の、それぞれ奥の上部に独立した冷却器を設置して、それぞれ室外に設けたコントローラーで温度を設定できるようになっています。

 冷却器と湿度を保つための設備に加え、壁にカビが発生しないように処理をすることも必要です。映画などで、ヨーロッパのお城のワインセラーなどが出てきますが、古いワインがカビだらけに、ということもよくあります。

 時折、コルクにカビが出ているワインがあります。コルクの上だけなら品質に問題はないのですが、やはり印象はあまりよくありません。壁に防カビ性の高い素材を使っておくと、リスクも避けられるのです。

レストランのセラーを参考にしてデザイン

 機能面を抑えたところで、プランニングで最も楽しい作業に取りかかります。それは「どんな空間にするか」というデザインです。シンガーさんご夫妻は、レストランやワインショップを訪れて、さまざまなワインセラーをリサーチしたそうです。

ワインを選びながら、個性的なエチケット(ラベル)について話すのも楽しい。

「お店によっては、単に倉庫のように木箱に入ったワインを積み重ねていくところもあります。けれど、店の中心にワインセラーをつくったりしているレストランがたくさんありました。そうしたレストランのセラーの写真を撮って、自分のセラーはどんな空間にするかと考えていきました」(由美子さん)

 現代的なファインダイニングと呼ばれる高級なレストランでは、食事にとって重要な要素であるワインを積極的に見せていく傾向にあります。それは、料理とワインのペアリングを重視する店の姿勢をお客様に示すためでもあります。

 ソムリエがセラーに入って持ってきたワインのボトルをうやうやしく見せられると、ちょっと特別な気持ちになるものではないでしょうか。個人の家のワインセラーは、さらに一歩進んで、お招きしたゲストと一緒にワインを選ぶことも楽しめるのです。

「それまではデイリーワインを箱のまま積んでおく物置みたいな空間でしたけれど(笑)、お客様と一緒にセラーに入って、今日はどんなワインを飲もうか、そんなお話をする空間にしたかったのです」(アーネストさん)

 ワインセラーの扉を中が見えるガラス製にしたのも、そのためだそうです。確かに、1階から降りるエレベーター、または階段を降りたところにセラーのドアがあり、そこからずらっと並んだワインが見えることで、ワイン好きなゲストの心は高揚するでしょう。

ーネストさんが監修した『フランスのワインⅡ』。セラーの中にあるワインがどんなワインなのか、この本で調べることもできる。

 2つに区切られたそれぞれのスペースは棚でぐるりと囲まれ、エチケット(ラベル)が見やすいように上下の余裕がある棚になっています。
 2~3人が入る余裕もあり、中央には小さなハイテーブルを配し、その上にはアーネストさんが翻訳監修を務めたロバート・M・パーカー・Jr.氏のワインの本が置かれています。世界中のワイン愛好家がワインの評価基準として認めている100点満点で何点を与えるかという「パーカーポイント」で有名なワイン評論家の本です。
 中に入って棚に並べられたボトルを見ながら、ワイン談義に花を咲かせる、という趣向で考えられています。

ご夫妻の人生の中心にあるのがワイン

地下室にはセラーのほか、バーやビリヤード台もそなえるおもてなしの空間になっている。

 レストランのセラーをいくつも見て歩き、それらを参考にしてセラーをデザインしたシンガーさんご夫妻。
 バーカウンターやビリヤード台、ゆっくり座れるソファやご夫妻が世界中を旅して集めた調度の数々が並びます。レストラン以上に「見せる演出」にこだわったセラーを出ると、選んだワインを楽しむための空間が広がっています。

「多い年は一年の4分の1近く海外に行くような生活です。主人のワインビジネスの出張もあり、私の仕事もあり、ヨーロッパはもちろんのこと、東南アジアにもアメリカにも旅をします。そんな私たちの生き方が現れるような空間にしたかったのです」という由美子さん。
 まさに、おふたりの人生の中心にあるのがワイン、というメッセージが伝わってくるセラーとパーティルームです。

 次回は、そんなワインセラーのプランが決まってから、実際に施工をし、完成するまでのお話を伺います。

(第3回に続く)

お話を伺った方

アーネスト・シンガーさん、由美子さんご夫妻

1986年に日本でワインを輸入する会社を興し、現在ワイン商社(株)ミレジム代表取締役を務めるアーネストさん。夫人の由美子さんはパリでフラワーデザインを学び、フラワーアレンジメントやディスプレイ、さらには家具と花のコラボレーションなどを手がける。株式会社花千代代表取締役。

文◎坂井淳一(酒ごはん研究所) 撮影◎平野晋子

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