シリーズ男のリフォーム ワイン好きの憧れ! 自宅に本格セラーをつくる [第1回]

物置だった地下室をリフォームして「夢」を実現

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ファインワインには専用の「部屋」が必要

「ワインの長期熟成には、振動と温度変化は厳禁です。特に、ファインワインといわれる高価格帯のワインや古いワインは、温度変化に敏感なのです。冷蔵庫式のセラーは一時的な保管のためのもので、ワインを熟成させるような保管をする場合は、本物のセラー、つまりワイン用に温度や湿度をきちんと管理した『部屋』が必要なのです」と、この家の主、アーネスト・シンガーさんは言います。

ワインのプロ、アーネストさんは物置だった地下室をリフォームして、本格ワインセラーをつくった。

 アーネストさんは、ワインを輸入する「株式会社ミレジム」の代表取締役。フランス、イタリアを始め、世界中からワインを輸入し、日本のトップクラスのレストランでも、同社が輸入したワインを提供しています。
 そんなシンガーさんご夫妻の、ご自宅のワインセラーを見せていただきましょう。

 ワインショップで美味しそうなワインを見つけ、家に帰ってからどのくらいの時間で飲みますか? 実は、ほとんどのワインは買ったその日、または翌日に飲まれているのです。その率、なんと95%以上。

 仕事帰りに買ったワインで夕食を楽しむのは、確かに楽しいものです。けれど、お手頃なデイリーなものはともかく、上質なワインの場合、手に入れてから少し寝かせた方が美味しく飲めます。

 また、高級なワインの中には、熟成させることでより美味しくなるものがあります。年代物のワインは値段も高くなってしまいますので、ワイナリー(醸造所)が出荷するとすぐに手に入れ、自宅や貸しセラー、なじみのワインショップの倉庫などで保管してもらう愛好家も少なくありません。

ワインの保存にはしっかりとした温度・湿度の管理がかかせない。

 自宅で保管する場合、「ワインセラー」と呼ぶワイン専用の冷蔵庫を購入する方がほとんどです。すぐに飲んでしまうものなら12本くらいの小型のものを、ワインコレクションをある程度の期間保管したいのなら60本~100本、あるいはそれ以上入る一般的な冷蔵庫と同じか、それ以上の大きさのものがおすすめとされています。

 けれど、ワインをきちんと保管し、長期熟成させるには、冷蔵庫型のワインセラーは不向きなのです。なぜなら、モーターでコンプレッサーを駆動して庫内を冷やすため、どうしても微振動が発生するからです。
 また、家の中は1年を通して20℃以上あるのが当たり前。セラーのドアを開けると、適正といわれている12℃前後に設定していても、庫内の温度は一気に上昇してしまいます。

地下室をセラー付きパーティルームにリフォーム

 アーネストさんは、奥様の由美子さんとの結婚をきっかけに、都内の一軒家の自宅の地下をリフォームし、およそ1000本を収納するワインセラーを設けました。

「それまでは、地下室は単なる物置のような使い方で、デイリーに飲むワインを箱に入れたまま、ポンと置いているだけでした。すぐに飲んでしまうものばかりだし、地下ならそれほど温度が上がるわけではないので、大きな問題はありませんでした。それに、とっておきのファインワインは、会社の倉庫に保管していましたから」(アーネストさん)

大切なお客様をもてなすパーティルームの一角に本格ワインセラーを設けた。

 けれど、「花千代」というフラワーデザインの会社を営み、洞爺湖G8サミットをはじめ世界の首脳会議後の晩餐会場でフラワーコーディネイトを手がける由美子さんとの結婚を機に、自宅にアーネストさんのお客様やワイン生産者などを招いてホームパーティを開いておもてなしをする機会が増えたのだそうです。

「インテリアなどの仕事も手がけていますので、私が中心になってリフォームの計画を立てました。お客様はワイン愛好家やその道のプロばかりですので、それならばきちんと温度管理をできる本格的なワインカーヴ(セラー)もつくろうと主人に提案をしたのです」(由美子さん)

 そういったお客様ならば、おふたりのワインコレクションを眺めることだけでも話は広がりますし、素晴らしいワインをその都度会社の倉庫から出してこなくても、地下の本格セラーに入って選び、そのまま抜栓して楽しむことができるというわけです。

お客様も入れる「見せる本格セラー」

 1階から階段を降りていくと、シャネルレッドに塗られたパーティルームがあります。バーカウンターがしつらえ、その奥のガラスの扉の向こうがワインセラーです。

ただのワイン倉庫ではなく、ワインを選ぶために入ったお客様が楽しめるセラー。

「ワインの棚が見えるようにとガラスの扉を選びました。紫外線などはカットされ、ワインに悪い影響がないようにしてあります」と由美子さん。

 室温を11℃ほどに調整した8畳ほどの庫内は、正面と右手奥の二つにスペースが分かれています。

「正面は、扉に近いので、きちんと冷やしているといっても、やはり扉を開けると温度は少し上がります。なので、主にデイリーに飲むワインを収めています」(アーネストさん)

 デイリーといっても、選び抜かれたワインが並んでいるのですが、右手にはさらに選び抜かれた珠玉のワインコレクションが眠っていました。

「奥の棚は扉から離れていますから、出入りをしても温度変化が起きないのです。こちら側には本当に貴重な私のコレクションを置いています。普段では滅多に飲まない大きなボトルのものや、1700年代のワインまであります。こうしたワインは実にデリケートですので、振動も温度変化も極力避けなければいけないのです」とアーネストさん。

 ため息が出るようなワインたちが眠る本格セラーをつくるためには、どんなプランニングをなさったのでしょう。次回はそんなお話を伺います。

(第2回に続く)

ワイン愛好家垂涎のコレクションがずらりと並ぶセラー奥の棚。

お話を伺った方

アーネスト・シンガーさん、由美子さんご夫妻

1986年に日本でワインを輸入する会社を興し、現在ワイン商社(株)ミレジム代表取締役を務めるアーネストさん。夫人の由美子さんはパリでフラワーデザインを学び、フラワーアレンジメントやディスプレイ、さらには家具と花のコラボレーションなどを手がける。株式会社花千代代表取締役。

文◎坂井淳一(酒ごはん研究所) 撮影◎平野晋子

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