シリーズ男のリフォーム ワイン好きの憧れ! 自宅に本格セラーをつくる [第3回]

眺めたいときに眺められ、飲みたいときに飲めるワクワクがたまらない

空間
その他
関心
ライフスタイルインテリアリフォーム事例

ワインセラーは店舗設計に強い業者に任せる

 アーネスト・シンガーさん、由美子さんご夫妻は、ワインセラーの施工にあたっては、地下室のリフォームも同時に行ったこともあり一般住宅の設計事務所に依頼したそうです。しかし、もし私たちが本格ワインセラーをつくるのであれば、違う方法がいいのかもしれません。なぜなら、ワインセラーは一般住宅とは違うさまざまなノウハウが必要だからです。

設計を一般住宅の施工業者に依頼できたのはアーネストさんがワインのプロだから。私たちが設計を依頼するならノウハウ豊富な店舗設計が得意な業者のほうがベター。

 アーネストさんは、ワインを輸入するだけでなく、静岡県の富士山ワイナリーで甲州種のぶどうを使った「Shizen」ワインをつくり、ワインのプロを育てる学校「アカデミー・デュ・ヴァン東京」のファウンダー(創設者)のひとり。いわばワインのプロ中のプロです。

 さらに奥様は、フラワーコーディネイトの会社を経営するインテリアのスペシャリストです。ですから、一般住宅の施工を得意とする方に依頼しても、機器やワインセラーのスペックをはじめ、設計図の段階で細かい部分まで精査し、きちんと説明できるので、滞りなく半年くらいで完成したそうです。

 しかし、由美子さんは「みなさんがセラーをつくられるのであれば、ワインセラーの設計やレストランなどの店舗設計が得意な方に依頼する方が安心できると思います」とアドバスします。

 私たち一般人が、店舗設計のプロを探すのも大変と思われるかもしれません。けれど、行きつけのレストランや、よくワインを購入するショップなどに紹介してもらうなどすれば、そう難しいことではありません。

 店舗設計のプロは、さまざまな制約の中でワインセラーをつくったノウハウをもっています。また、冷蔵設備や壁の防カビ建材などを扱う業者も知っているので、一般住宅の建築業者よりもリーズナブルかつ早く部材などをそろえることもできるそうです。

ワインセラーをつくるにはいくらかかる?

 ワインセラーをつくるには、一体いくらくらいの予算を見ればいいでしょう。
「地下室全体をリフォームした中のことなので、セラーだけの価格というのは正確にだすことは難しいですが、ざっくりと600万円くらいではないかと思います」という由美子さん。

ラベルが見やすい棚を導入し、壁の色までこだわったワインセラー。ワインの開栓のグッズやポスターなど装飾品にもこだわっている。

 冷蔵設備の性能や、壁も特別な色を指定するなど、こだわった上ですが、コストもきちんと考えていたと由美子さん。
「例えば、ワインを収納する棚は、一点ものではなく、ボトルを少し斜めにおけるようになった汎用の丈夫なものを入れました。こうしたことでコストを抑えることはできました」

 店舗設計を得意とする業者に問い合わせてみると、ほぼ同じ金額が返ってきました。1000本のセラーだと、最低6畳くらいのスペースが必要になります。専用の空調機が1台で150万円から200万円程度。防カビなどの設備や電気工事、地下ではない場合、部屋の壁に断熱材などを入れる必要もあり、工事費などを含めて約500万円から、とのことです。

本格ワインセラーは
ワイン専用冷蔵庫に比べて本当に高いのか

 1000本のワインセラーで500万~600万円という予算は、フォームとしてはかなり高額だと感じるかもしれません。ワイン用冷蔵庫として代表的なメーカーの最上級機種は、70万円程度で販売されています。

10万円以上もする高級ワインもずらりとならぶシンガーさんの本格ワインセラー。

 ワインの収納本数は180本ほどですので、一般の住宅のセラーとしては満足いくものかもしれませんが、第1回でお伝えしたとおり、ワイン用冷蔵庫は振動の問題もあります。
 扉を開け閉めするたびに庫内の冷気が逃げ、温度や湿度の変化が起きてしまいます。実は、こうした冷蔵庫タイプのセラーは最上級機種でも、ハイクラスのワインの長期保温や熟成に最適であるとはいえないのです。

 現在、特にフランスの高級ワインは値段が高騰しています。1本10万円を超え、古いものだと数十万円、あるいは数百万円になるコレクターズアイテムもあります。そういった貴重なワインを保管するには、シンガー家のような「本物の」ワインセラーは必需品といえるのです。

今日はどんなワインにしようか
ワクワクする毎日

ワインのある幸福な毎日を過ごすアーネスト夫妻。

 高級ワインの保管には、ワインショップや倉庫会社などが行っているレンタルセラーサービスもあります。中には1本から預けられる所もありますし、1ケース12本くらいの単位で、とっておきのワインを預けるという方も増えているようです。

「コレクションをそうした倉庫に保存していると、普段は眺めることもできません。倉庫から取り出し家まで運ぶことで、どれだけ気をつかってもやはり外気に触れてしまいます。家に運んだ後も、おいしくいただくにはしばらく落ち着かせなければなりません。けれど、家にセラーをつくったことで、眺めることも、飲みたいときに手に取ることができます」とアーネストさん。お金には代えられない喜びを感じています。

 アーネストさんは言います。
「なんと言っても、より深くワインと関わり合う生活になりました。お客様をお迎えしても、ふたりでゆっくりワインを楽しむときも、さあどんなワインを飲もうかと考えてわくわくできるのは、本当に楽しい人生です」

 素晴らしいワインのコレクションが我が家にあるということは、より豊かな人生を過ごせるということ。さあ、思い切ってあなただけのワインセラーのある生活を始めてはいかがでしょうか。

お話を伺った方

アーネスト・シンガーさん、由美子さんご夫妻

1986年に日本でワインを輸入する会社を興し、現在ワイン商社(株)ミレジム代表取締役を務めるアーネストさん。夫人の由美子さんはパリでフラワーデザインを学び、フラワーアレンジメントやディスプレイ、さらには家具と花のコラボレーションなどを手がける。株式会社花千代代表取締役。

文◎坂井淳一(酒ごはん研究所) 撮影◎平野晋子

リクシルオーナーズクラブ(年会費無料)