片付けが長続きする「ざっくり収納」[第1回]

片付けの「正解」は人それぞれ

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整理収納事例

「きれいに収納する」より大事なこととは

家族みんなの水筒は購入したときの箱に入れて引き出しに収納。(写真提供◎石牟礼ともよ)

 モノをそれに合ったケースなどにきっちり入れて、ラベルを貼って、整然と収納してあるお宅は素敵ですが、最初は真似をしてみても、続けることはなかなか難しいものです。

「細かく整然と収納した状態は、つくることはできても、維持できるかはその人しだいです。中が見えないような収納ケースなどに入れてしまうと、入れたら最後、ずっと使わないモノになってしまう可能性もあります。

 特に冷蔵庫などはパッと開けたときにすぐに何があるかを認識したいスペースです。それがケースやビニールに入っているだけで中身が思い出せなくなり、結局は使わないまま賞味期限が切れてしまうこともよくあります。収納は基本的に“見えている”ことが大事なのです」

 ただ箱に入れて、整然とさせるだけが収納ではないということですね。

「扉のある場所にケースを使うなら、透明な箱やビニール製品など、開けなくても中身が見えるものにするとよいでしょう。電化製品や調理器具などは、その商品の箱をそのまま使うのも手です。

 例えばわが家では、水筒の収納には買ったときの箱を使っています。縦に置けば箱に写真があるので中身が一目でわかりますし、横にして重ねても四角い箱なので丸い水筒をそのまま重ねるのと違って転がることがありません。中身を出し入れしやすいように、蓋は織り込むか切っておくと便利ですよ」

 一目でパッと何があるかわかる上に、機能的に収納できて一石二鳥ですね。

片付けが苦手な人のレベルに合わせる

 片付いた家を維持するコツは、家族の中で「片付けが苦手な人」にレベルを合わせることです。

ひざ掛けを使ったらすぐにしまえるかごを用意してソファーまわりをすっきり。(写真提供◎石牟礼ともよ)

「一人暮らしなら別ですが、家は家族みんなで過ごす場所です。自分一人が頑張ってもなかなか片付いた状態はキープできません。だからこそ、片付けは苦手な人のレベルに合わせることが大事です。例えば小さなお子さんがいるならば、お子さんでもラクに片付けられるしくみをつくってあげる。そうすると、自分で片づけるようになります。

 わが家では家族それぞれリビングでひざ掛けを使っているのですが、ソファーのすぐ横に蓋つきボックスを置いています。たたまずポンと入れられるので、ソファーの上にひざ掛けが出しっぱなしになっていることはなくなりました」

“自分のモノ”が一目でわかるようにする

自分だけの色を決めることで“自分のモノ”という意識をもたせる。

 家族みんなが自分のモノは自分で片付けるようにするには、それぞれに「自分のモノ」という意識をもたせることが大事だそうです。そのためには「色」を使うのだとか。

「家では片付けをしないお子さんでも、学校では自分のモノを自分で管理しています。ですからお子さんが進んで片付けるようにするには、『これは自分のモノ』という意識を身につけさせることが大事です。『自分のモノ』と認識させるのに便利なのが、『色』。自分の色を決めて、自分のモノが一目でわかるようにするのです。わが家の場合、先ほどお話ししたソファーで使うひざ掛けも家族それぞれの色を決めています。出しっぱなしにしておくと誰のか一目でわかってしまうので、みんな自然と片付けるようになりました」

 自分のモノを色で見分けるのは小さいお子さんでも簡単です。きょうだいがいればそれぞれの色を決めてあげると、競って片付けるようになりそうですね。

ラベルも中身が一目でわかるように

 隠す収納をするときは、収納グッズに中身を書いたラベルを貼ることも多いと思います。そのラベルに書きこむときに大事なのは、一目で直観的に中身を認識できるようにすることです。

「ラベルは文字でなくてもよいと思います。人によって文字認識の得意・不得意がありますから、得意な方は文字にするとわかりやすいでしょうが、文字認識の苦手な方は文字だと読まないことも多いのです。そういう方はラベルを色で分けたり、洋服や靴など中のモノを表すイラストのシールを貼ったりすると、直観的に中身がわかるようになります。

書類の内容ごとにファイルの色を替えてたてかけてもわかるように。(写真提供◎石牟礼ともよ)

 例えば、私は書類を整理するクリアファイルをジャンルごとに色分けして使っています。お金関係は黄色、緊急性の高いものは赤、もう処理した書類は青といった具合です。こうしておくとクリアファイルの色を見ただけで、必要なものがすぐ取り出せるのです」

 黄色はお金関係、赤は緊急性が高いなど、色から中身の内容をイメージしやすいのもポイント。クリアファイルは中身が見えるように柄や絵が入っていない、半透明のものがおすすめです。

「ざっくり収納」で大事なのは、「一目でわかる」ようにすることなのですね。

(第2回に続く)

≪お話を伺った方≫

石牟礼ともよさん

整理収納アドバイザー。愛知県犬山市出身。整理収納アドバイザー1級、ライフオーガナイザー1級、福祉住環境コーディネーター3級。片付けを仕事にして10年。お片付け訪問・相談実績は延べ750軒以上。整理収納・ライフオーガナイズの知識と、家事代行業の経験を生かし、「ママだけが頑張らなくていい、家族が自分で自分のことを完結できる家づくり」をサポートしている。

文◎濱田麻美
画像◎Shutterstock

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