
片付けができない子どもでも、「仕組み」さえつくれば、片付けの習慣が身につくそうです。どのように行えばいいのでしょうか。前回に続き、延べ750軒以上でお片付け訪問・相談を行った石牟礼ともよさんに伺いました。
おもちゃはいつの間にか増えてしまうため、置いていいスペースを決めて収納することが大事だといいます。
「以前にもお話ししましたが、おもちゃは色もカラフルですし、量が多すぎると部屋全体がごちゃごちゃしてしまいます。部屋の収納スペースは限られているので、おもちゃの量に合わせて収納を考えるのではなく、収納に合わせて持つ量を決めるようにしましょう。お子さんに『ここに入るだけのおもちゃにしようね』と話すと、お気に入りのおもちゃを考えながら選ぶものです。
子どもは成長に応じて、遊び方がころころ変わります。当然、おもちゃの入れ替わりも激しいものです。だからこそ、今よく遊んでいるおもちゃは取り出しやすい場所に、もう遊ばなくなったおもちゃは、メインの場所から外して念のためとっておくといったように、収納場所を分けます。おもちゃスペースが満杯にならないよう、親御さんがある程度コントロールしてあげるといいですね」
収納の仕方にもポイントがあります。おすすめは、子どもが出し入れしやすいよう、ワンアクションでしまえる場所に収納すること。
「親が几帳面な家庭では、引き出しの中にふた付きの箱があり、さらにその中が細かく仕切られていて……、といった収納を見かけます。このような収納は、しまう場所が細かすぎるため、子どもには向きません。片付け上手な親のための収納スペースといえます。ふだん遊ぶおもちゃは、棚の一番手前に置けば十分。パッと出せてパッとしまえることが、片付けが習慣化する秘訣です」
ぬいぐるみをまとめて入れられるバッグや、重くても子どもが出し入れしやすい、キャスター付きのおもちゃ入れなどのツールも便利です。
親の工夫で、子どもが楽に片付けられる仕組みをつくってみるのもよさそうです。この点について石牟礼さんは、次のようなエピソードを話してくれました。
「私も娘が小さい頃に、2段のカラーボックス3台にキャスターを付けて、おままごとの道具などを入れていました。高さが娘の腰と同じくらいで、即席カウンターキッチンにもなったのです。それに、2段のカラーボックスは押し入れの下段にジャストフィットする高さで、おもちゃを戻し、押し入れにしまうまでが、娘にとっては遊びになっていました」
片付けられた状態を維持するためには、モノを一時的に置く「一時避難の場所」を用意しておくことも大事です。
「例えば、冷蔵庫に隙間がないと、おかずが余ったときに困ります。隙間を空けるため、入れ替えたり詰めたりして、いちいち整理しなくてはいけません。でも、あえて空きスペースをつくっておけば、そこにしまうことができます。
これと同じで、『とりあえずモノをどかすための場所』が各部屋にあると便利です。お子さんがダイニングテーブルで勉強する家庭なら、食事前にとりあえず勉強道具を置いておける台を用意する、といった具合です。遊び途中のおもちゃをしまう箱なども有効です。最終的には元の場所に戻すけれど、作業途中のモノを一時避難する場所があれば、急いで片付けたいときも、続きをしたいときも、便利なのです」
石牟礼さんのお子さんの子どもの頃の作品。
ここからは、親が気をつけたい片付けのポイントをご紹介していきます。
まずは、子どもが幼稚園や学校でつくった「作品」。「かさばるし、かといって捨てにくい」と、置き場に困る方は多いようです。
「ひな人形や兜など、季節ごとのオブジェや絵画を、よくお子さんが持ち帰ってきますよね。その作品もだんだん増えて、やがて保管場所に困るようになります。子どもが頑張ってつくってきたので、捨てるにも忍びなく、どうしようか迷うと思います。そんなときは、子どものギャラリーコーナーをつくってあげるとよいです。スペースを決めて作品を飾り、新しい作品を持ち帰ってきたら入れ替えます。古い作品は写真に収め、お子さんに聞いてから処分するのです」
常に見えるところに飾ると子どもも嬉しいし、ちょっとした癒やしの空間になりそうです。
学校の書類をまとめて入れられるゼット式ファイル。
もう一つ、かさばるモノといえばプリント類でしょう。保育園に幼稚園、小学校、塾や習い事のお便り、スケジュール表など、子どものプリント類は意外とたくさんあります。しかも子どもが2人以上いる家庭では、それぞれ混ざったりと、ルールがないと管理も大変。
そんな家庭に向け、石牟礼さんは「子ども一人ひとりにファイルをつくることを提案している」と言います。
「ファイルはポケットファイルではなく、金属製の平らな留め具で書類を挟むゼット式ファイルがおすすめ。書類を上に重ねていくだけで、勝手に日付順に並びます。年度が終わって書類を捨てるときは、そのままゴッソリ捨てられるし、ファイルはすぐに空になります。子どもによってファイルを色分けし、書類の種類をラベルに書いて貼っておくと、一目で何のファイルかわかります」
ちなみに、プリント類と同じように、お子さんが2人以上いる家庭では、子どもが管理する空間も個別に与えるといいそうです。
「その子専用の引き出しを与えるのです。面白いことに、収納や整理整頓には性格が表れるようで、子どもによって使い方が異なります。三つ子がいるお宅では、こまごまとしたモノをしまう引き出しが一人ひとりに分けてありました。すごく几帳面に整理している子もいれば、とりあえず必要なものを入れておく子、あまりモノを持たない子がいて、引き出しにも個性が出ていました。こういった様子を見ても、片付けは人それぞれで、一つだけの正解はないのだなと思います」
3回にわたって「子どもに教えたいお片付け術」について考えてきました。
片付けは、子どもの自立心、自己肯定感、決断力、判断力を高めることができます。子育てに上手に採り入れていきたいですね。
整理収納アドバイザー。愛知県犬山市出身。整理収納アドバイザー1級、ライフオーガナイザー1級、福祉住環境コーディネーター3級。片付けを仕事にして10年。お片付け訪問・相談実績は延べ750軒以上。整理収納・ライフオーガナイズの知識と、家事代行業の経験を生かし、「ママだけが頑張らなくていい、家族が自分で自分のことを完結できる家づくり」をサポートしている。
文◎濱田麻美