「片付け」の気持ちよさを味わう
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日常生活での理想は、片付いた状態がずっと続くこと。そのためにも、子どもには片付けを習慣化させたいものです。
自ら片付けられる子どもを育てるうえでまず心掛けたいのは、「片付けの気持ちよさを味わわせること」と石牟礼さんは言います。
「例えば、朝起きて布団をきれいに整えながら、お母さんが『こうしておくと、寝るときふかふかお布団で眠れるのよ』とお子さんに話したとします。お子さんはお母さんと一緒に布団を整えて、夜になってふかふかの布団に寝て『気持ちいいな……』と感じることができれば、徐々にそれが習慣になっていきます。片付けや掃除も、お母さんが楽しそうにやっていると、率先してやってみようという気持ちが養われます」
手伝いをする子は片付け上手
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このように、子どもにお手伝いをさせると、自然に片付けが身につきます。ひょっとしたら子どもは、「片付けをしている」「お手伝いをしている」といった意識もなく、当たり前のこととして、すんなり受け入れるかもしれません。
そうなればしめたものですが、「お子さんに片付けを手伝ってもらったら、『ありがとう』とちゃんと伝えてください。お子さんもお母さんの役に立てたと思うと嬉しいものです」と、石牟礼さんは話します。
そのうえで、手伝いを通して親子でコミュニケーションを深めることが大切だとも言います。
「もしも料理をするときに、お子さんに野菜を洗ってもらえば、旬の野菜のみずみずしさを感じとったり、産地について話したり、野菜の部位の名前や、どんな花が咲くのか調べたりすることができます。部屋の掃除なら、どの順番で取り掛かれば一番きれいになるのか、自分で考えて工夫してもらうこともできます。
ふだんの生活には興味の源が詰まっています。なぜこうするの? どうしてこうなるの? という疑問から、知りたい意欲が生まれます。そして、片付けなどに取り組むことにも興味をもっていくのです。時間のないお母さんほど、お子さんにも戦力になってもらいたいと思いますよね。実はお子さんも同じで、『役に立ちたい』『役割を与えたら責任をもって取り組みたい』と思っているのです」
子ども部屋に大人のモノは置かない
子ども部屋があまりにも散らかっていると、ついつい片付けたくなってしまいます。しかし、子ども部屋は本人に管理させたほうが、片付けの練習になります。
「学校には一人ひとりにロッカーがあって、そこはお子さんが自分で管理していますよね。つまりお子さんは、ちょっとした空間なら自己管理できるのです。最初から部屋全体を片付けさせることは難しくても、お子さん専用の棚などを決めて、自分で管理させることをおすすめします。
その時に注意したいのが、親のモノを子ども部屋に置かない、ということです。仮にお子さんのクロゼットにゆとりがあっても、親の服を入れるのはNG。自分以外のモノがあると、お子さんは『自分のスペース』という意識がなくなり、『自分で管理しよう』という思いも削がれます。お子さんに管理してもらう空間には、本人の好きなモノ、必要なモノだけを置くようにします。自分の気に入った場所にすれば、自然ときれいにしようと思うものなのです」
「自立」させつつ、親も率先して片付けを
子どもが部屋を片付けようとしているとき、ついつい「こうしたほうがよい」と口を出してしまうことがあります。これも、やりすぎには注意が必要だと石牟礼さんは指摘します。
「お片付け訪問先のお子さんを見ていて思うのですが、よくできているお子さんほど、親御さんはお子さんの自主性を尊重し、自由にやりたいようにさせています。お子さんが何かにチャレンジするとき、親は『失敗させたくない』という思いで正解を教えたくなるものです。
しかし、子どもの失敗は『経験』です。『うまくいかない経験』をするからこそ、次はどうしたら成功するのか考える癖がつくし、工夫するようにもなるのです。ここは発想を変えてみて、『親の保護下で失敗させる』と考えてはどうでしょう。そのほうが、あとあと本人のためになりますよ」
また、石牟礼さんは、「お子さんに片付けを身につけさせたいのであれば、まずは親が見本になって、いつも空間をすっきりさせておくことが大事」とも話します。
「片付けられない親から片付けを強要されても、子どもは動きません。親が楽しみながら片付ける姿を見せることで、初めて片付けは習慣化されるのです」
(第3回に続く)
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