地震に強い家具のレイアウトと収納[第2回]

リビングでは本棚とテレビに注意

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本棚から本が飛び出すのを防ぐには?

 前回、眠っているときに地震が起きてもすぐに逃げるのは難しいので、寝室にはなるべく倒れやすい家具を置かない、置くとしてもベッドの上に倒れない方向に、というのが防震対策の最優先事項と土谷さんに伺いました。では、起きているときにいる部屋の家具の配置はどうしたらいいのでしょうか。

 寝室とは違って、生活する空間であるリビングや書斎などは、家具や物がたくさんあります。その分、大きな地震がやってきたら被害に遭う可能性が高そうです。

「地震への備えは、倒れやすいものを極力減らすことが大切です。リビングや書斎なども、寝室と同様に、家具はなるべく背の低いものにしたほうがいいでしょう。背の高い家具といえば、代表的なものは本棚です」

 本が好きな方ほど、狭い床面積に対して蔵書をなるべく多く収納するために、背の高い本棚を選びがちでしょう。しかし、背の高い本棚はタンスよりも倒れやすく、危険なのだそうです。

「本棚は、タンスなどに比べて奥行きありません。一般的なタンスは奥行きが60cmほど。震度5強クラスの地震が来ても、背が高いものでなければ倒れるよりずれて移動することが多いでしょう、けれど、本棚は奥行きが30cm程度のものが一般的です。そこに、けっこう重量のある本がぎっしり詰まっていた場合、揺れたら確実に倒れますし、中に入っている本が飛び出します」

 本棚が倒れないようにするには、上部を2か所、壁面などに固定するといいそうです。

「耐震用の突っ張り棒を使って上部を天井と固定する方法も強度はあるのですが、決して見栄えがいいとは言えませんよね。それならば、ホームセンターなどで売っているL字型の金具を使って、壁に上部を2か所固定してしまいましょう。下の図の①の方法で留めても、背の高い本棚なら上のほうは普段生活している目線では見えにくいです。本棚の上にL字型金具を付ける余裕がないときは、②のようにサイドを固定する方法もあります。ただし、壁に穴が開くので賃貸等の場合はご注意ください」

 また、図の右側のAとBのように、L字金具の取り付け方は2通りあります。BのようにL字金具の壁に取り付ける部分を本棚の裏側に隠れるように配置して壁に留め、それから本棚にネジで止めて固定する方法にすれば、金具が目立たなくなります。サイドで固定するときもこの方法を使えます。よりスッキリした見た目になるので、本棚を動かせるようであれば、Bのやり方がおすすめです。

「ただし、重い本を入れると本棚は数ミリ沈みます。それを頭に入れて作業を行ってください。本棚が2本以上並んでいる場合は、お互いを金具で固定するのもいいですね」

 固定する壁が石膏ボードなどの場合、ネジがききませんので、石膏ボード用のネジ山が高いビスや、アンカー付きのネジを使うといいでしょう。

「賃貸物件は、ネジなどで壁に穴を開けると退去時に修繕費を取られる場合があります。最近は家具を固定できる木材が壁に設けられた賃貸物件なども増えていますから、引っ越す際にはそうした物件を選ぶのもひとつの手です」

 本の収納法にもコツがあるそうです。

「重い本を下に、軽い文庫本などを上に収納するようにしましょう。軽い本は地震で揺れて落ちてもあまり危険ではありませんが、重い本が上から落ちたり飛んだりすると、当たったときにケガをします。また、基本的に棚などは下に傾斜型転倒防止板を挟んで、手前を底上げした状態にするとよいでしょう。重心が後ろにかかっていたほうが、本が飛び出しにくくなります」

薄型の大画面テレビも倒れやすい

 リビングなどにあるもので、もうひとつ倒れやすいのがテレビです。

「現代のテレビは薄型で、しかも50インチ、60インチと大型化しています。当然、大きな揺れが来ると倒れやすいです。我が家では、テレビはテレビ台の上に置いていますが、ベルトで固定して倒れにくくしています。最近は壁掛けができるテレビも多くなりましたが、壁にしっかり固定すれば、テレビ台に置くより安全かもしれません。電源コードやアンテナ線を隠せるスタイリッシュな壁掛け用のパーツなども豊富です」

物を置くときは重心を低くするのがコツ

「一般的な家庭のリビングでは、テレビや本棚以外に倒れやすいものは少ないと思います。ローテーブルやソファは重心が低いので、大きな揺れが来ても、倒れたり空中を飛ぶようなことはあまりないでしょう。
 ですからまず、リビングでしっかりと固定すべきはテレビと本棚。そのほかは、強いて言えばさまざまな小物を飾る飾り棚などでしょうか。こうしたものも、本棚と同じように固定をしましょう。そして、背の低いものを選ぶことも大事です。

 物を置くときは、本棚同様、上に軽いものを、下に重いものを置くことを心がけるといいですね。ピラミッドのような三角形に配置すると、見た目もおしゃれになりますよ」

 次回は、大地震が来ると最も危険なダイニングキッチンについてお伝えします。

≪お話を伺った方≫

土谷尚子さん

株式会社ビケンコーポレーション代表取締役。インテリアコーディネーター歴22年。インテリアや暮らし方、インテリア写真の撮り方などをテーマに、のべ220団体の企業や行政機関での講座開催実績を持つライフスタイリスト。防災士の資格を持ち、「インテリアでできる地震対策」などの講演も行う。

文◎坂井淳一(酒ごはん研究所)
写真◎Shutterstock

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