健康寿命を延ばす「リフォーム」[第2回]

障害回避の“バリアフリー”を取り入れる

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小さな段差がつまずき・転倒の原因に

 年齢を重ねていくときにやはり気になるのが、暮らしていく上でのバリア(障壁)を取り除く「バリアフリー」。どんな点に注目すればよいのでしょう?

「日本の住宅は、これまでの慣例や気候風土から、多くの段差があります。これらの段差はなくすほうが安心ではありますが、段差をあえて残しておくことで体を衰えさせないという考え方もあります。ですから、一概にすべて段差をなくすことがよいとも言いきれないのです」

 その方の体の状態や年齢、家族構成などに合わせて、柔軟な対応が必要なようです。

段差が大きい場合はスロープをつける方法も

「見落とされがちなのは、洋室と和室の境の畳やドアや引き戸の下にある敷居などの小さな段差です。こうした小さな段差につまずくケースも意外と多いのです。段差を解消するには、板を載せて底上げしたり、敷居を埋め込んで平らにしたり、高さを調整する必要があります。場所によっては高さを調整するために、スロープを設置することもあります。その場合、急すぎる勾配は危険を招く恐れがあるので勾配差には注意しましょう。そして表面の仕上げは必ずすべりにくいものを使うことが大事です」

使いにくい手すりはかえって危険

手すりは使う人の一番使いやすい場所に設けることが大事

 段差と並んで、設置を検討するのが「手すり」です。

「ただ、手すりもやみくもに付ければよいというものではありません。例えば、慣れないところに取り付けしまうと、その手すりを使おうとして無理な体勢をとってしまい、かえって危険な状態になってしまうこともあります。普段動くところに、その人が使いやすいような状態で手すりを付けることが望ましいです」

仕切りは開き戸から引き戸に

 室内のドアや仕切りは、やはり開閉しやすい引き戸に替えたほうがよいのでしょうか?

「高齢になると握力が弱くなるので、ハンドルやノブのある開き戸よりも引き戸のほうが操作はラクだと思います。また、もし車椅子を使う場合、開き戸は使えませんよね。車椅子での移動や介助ベッドの搬入などを考えると、開口部が80㎝程度あるのが望ましいでしょう。ただ、引き戸は開き戸に比べて音が漏れやすいというデメリットもあります」

開けっ放しにしておきやすいのも引き戸のメリット

 車椅子を使うことまで想定してリフォームする方は多いのでしょうか?

「時々、将来的に車椅子になったことも考えてリフォームしたいという方もいらっしゃいます。ただ、最初から車椅子を使うためのリフォームをしたほうがよいとは一概には言えません。車椅子でずっと過ごすということはかなり要介護が進んだ状態ですが、それほどの状態だと施設などに入居される方も多いです。車椅子を外で使っていても、家の中では手すりなどを使って歩行されている方もいます。その方の状態や家族の状況、考え方などによると思います」

まず大事なのが部屋を片付けておくこと

 その他、バリアフリーな環境をつくるために気をつけることはありますか?

「リフォームとは関係ないですが、『部屋を片付けておく』ことです。高齢の方は段差でつまずくこともありますが、床に置いてある新聞紙で滑ったり、置いてある物につまずいたりすることも多いのです。

 私はよく『手すりを付ける前に、部屋を片付けてください』とお伝えしています。以前、リフォームで手すりを付けたお宅に伺ったとき、手すりに物がたくさん掛けてあり、すっかり物置場になってしまっていたというケースもありました(笑)。まずは床に置いてある物を片付けて、すっきり歩きやすくしておくことが大事ですね。その必要性に気づき、私は片付けのサポートも行っていますが、リフォームもまず物を片付けてから進めていくほうが効率的です」

 第3回は、家事や生活のしやすさに注目したリフォームのポイントについてご紹介します。

(第3回に続く)

≪お話を伺った方≫

石井純子さん

インテリアコーディネーターとしてハウスメーカーに入社し、14年勤務。その後フリーランスとして活動。一般住宅のほか、店舗併用住宅、高齢者福祉施設にも多数関わる。快適で安心、ストレスの少ない住まいづくりを提案している。

文◎濱田麻美
写真◎Shutterstock

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