健康寿命を延ばす「リフォーム」[第1回]

健康のためにまずは“暖かく涼しい”家

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健康リフォーム

浴室で命を落とす人は交通事故より多い!?

 子どもの独立、親の介護、自身やパートナーの定年退職と、ライフスタイルが大きく変わっていく50代以降。長年住み慣れた家も傷や劣化が目立ち、リフォームを考えている方も多いことでしょう。大人世代のリフォームでまず注目したいのは、「温度差の少ない」住まいをつくることです。

 自宅などで入浴中に溺れて死亡する高齢者は、交通事故よりも多いと言われています。これは「ヒートショック」によるものが最も多く、特に65歳以上の高齢者は要注意です。ヒートショックは暖かいリビングなどから寒い脱衣所で服を脱いで浴室へ入り、さらに熱い湯船に浸かるといった急激な温度差で血圧が大きくアップダウンすることから起こります。

「日本の家はリビングを日当たりのよい南側に配置することが多いので、結果的に浴室や洗面所は日当たりが悪く冷えこみやすい北側や西側にあることが多いです。なおかつ、古い家は断熱材の量が少なく気密性も低いため、冬場は冷えこみます。タイルなどの床材もヒヤッとしてとても冷たいです。ただ、そういった古い家に住んでいる方は長年その環境に住み続けているので、みなさんそれが当たり前だと思われている方が多いのです」

 それでは、どのようなタイミングでリフォームを決意されるのでしょう?

「例えば、独立したお子さんの新居に行かれたときに、最近の浴室の暖かさを感じたり浴室暖房機などの設備を見たりして、その快適さに気づき、リフォームされる方もいらっしゃいます。“ヒートショック”という言葉自体は知っていても、浴室をリフォームすることがヒートショックの予防につながるということに気づいていない方も意外と多いのです」

 浴室を暖かくするには、どんな方法があるのでしょう?

ユニットバスの施工例。LIXIL「Lidea」

「今のバスルームは断熱材や保温材がしっかりと使われています。ですから、バスルーム自体を新しくすれば、だいぶ寒さは防げます。

 浴室全体をリフォームする場合は、一体型のユニットバスと替える方が多いですね。材質は樹脂製などが多く、タイルのように冷える素材は使われにくいので床の冷たさも感じにくくなります。

 古いタイプの浴室だとユニットバスが入らないと思われている方もいますが、今はいろいろなサイズがあるので意外とスムーズに設置できることが多いようです。また、浴室のリフォームとあわせて、窓のリフォームを行うことも大切です。窓に内窓をつけて2重サッシのようにすることで、窓から熱が逃げづらくなります」

インプラス/インプラス for Renovation/インプラス浴室仕様
https://www.lixil.co.jp/lineup/window/inplus/
内窓 インプラス
https://www.lixil.co.jp/lineup/window/inplus/variation-bathroom/

 その他、窓自体をふさぐケースもあるそうです。

「もともと浴室の窓は、外に坪庭でもない限り、窓からの景色を楽しむという使い方はあまりしないですよね。それに近隣が迫っている場合、まわりからの目や防犯面も気になります。それであれば、熱が一番逃げてしまう窓を塞ごうという考え方です」

 また、窓自体をふさぐこともできますが、窓を小さくすることもできます。断熱性を高めると同時に、既存の窓の位置に制限されずに新しいユニットバスのレイアウトをご検討いただける等のメリットもあります。取替窓であれば、窓の種類やサイズを変えることができます。

取替窓 リプラス
​​​​​​​https://www.lixil.co.jp/lineup/window/replus/variation/bathroom/​​​​​​​

寒い家がもたらす健康面へのデメリット

高齢になるほど、寒さが辛く感じる

 ヒートショックのほかにも、家が寒いことはさまざまな健康面へのデメリットがあります。

「部屋が寒いことで筋肉が収縮してしまうので、肩こり、腰痛などのお悩みは増えるようです。また、寒いということは快適なことではないので、メンタル面でもマイナス方向に気持ちが傾きやすくなるといったことも考えられます」

 北海道をはじめ青森県や秋田県、山形県、新潟県など寒い地域は、暖かい季節と比較して冬の死亡率が10~15%程度増加するという結果も導き出されているそうです。寒い家は体に負担をかけていることが想像されます。
※厚生労働省人口総統計(2014年)都道府県別、死因別、月別、死亡者数より

「寒くてコタツから出るのも億劫になってしまうような家では、運動不足も心配されます。動かないと基礎代謝が低下して、生活習慣病の原因にもなりかねません」

 家中どこに移動しても快適な室温が保たれていれば、何をするにもラクで動きやすいですから、やはり、冬の暖かさを確保するための断熱リフォームは、健康寿命を保つためには大切な要素といえるでしょうね。

寒い家の結露はカビの原因にも

冬場の外と室内の温度差による結露がカビの原因になることも……

 寒い家は、結露などの問題も起こりやすいです。

「古くて気密性が低い家は、冬場の外と中の温度差が大きくなります。そのため、結露も生まれやすいです。そのままにしておくと、壁紙や床にカビが発生しやすくなり、家自体が傷みます。そのカビが暖房の風などで室内に飛び散ることで、健康にまで被害が及ぶこともあります。こうした結露によるカビの問題も、壁・床・天井などに断熱材を施すリフォームでだいぶ改善すると思います」

室内の熱中症も増えている

 温暖化が進む昨今、室内における高齢者の熱中症増加も問題になっています。

「高齢の方の中には、冷房に対して“もったいない”と思われている方も多いです。暑さを防ぐという点でも、やはり重要なのが窓です。寒さを防ぐときと同様、窓に内窓をつけることが対策の一つになります。でも、それだと予算がかかりすぎるという場合は、最近は遮熱効果のあるカーテンもたくさん出ているので、カーテンを遮熱タイプに替えるのもよいと思います。こうして窓を遮熱するのに加えて、冷房も適切に使うことが大事です」

 温度差の少ない家をつくる断熱性や気密性を高めるリフォームは、快適さのためだけでなく、健康のためにも大事なことがよくわかりました。第2回は家の中にバリアフリーを取り入れることについてご紹介します。

(第2回に続く)

≪お話を伺った方≫

石井純子さん

インテリアコーディネーターとしてハウスメーカーに入社し、14年勤務。その後フリーランスとして活動。一般住宅のほか、店舗併用住宅、高齢者福祉施設にも多数関わる。快適で安心、ストレスの少ない住まいづくりを提案している。

文◎濱田麻美
写真◎Shutterstock

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