滑らない床が犬の健康と安全を守る
8年半前、家を建てるときに今西さんが「マスト」だと考えたのは、フローリングの床に無垢材を使うことでした。
「加工されたフローリング材はコーティング処理などがされていて滑りやすいものが多いです。滑りやすい床だと、犬が股関節を傷めてしまいやすいです。我が家の未来は後ろ足に障がいがあり、普通の犬よりさらなる対策が必要でした。そこで、フローリングには滑りにくい無垢材を選択しました。ただ、家を建てた当時より歳を重ね、無垢材でも少し滑りやすいことがあるので、最近では一部にカーペットを敷いています」
LIXILでは、ペットの足滑りに配慮した床材として「ラシッサ」シリーズを展開しています。滑りに配慮した表面仕上げでペットの足腰の負担を軽減するだけでなく、水や湿気に強い耐水性、優れた耐アンモニア性と安心安全な抗菌仕様になっています。さらに、抗菌・防カビ・抗ウイルスに関するマークを認証している業界団体SIAAの「抗菌SIAA」マークも取得している床材です。
「うちは室内にトイレスペースを設けていますが、未来もきららも基本、トイレは外派。犬たちもそのほうが気持ちいいようです。寝床にも一応ペットシーツを敷いていましたが、汚すこともほとんどありませんでした。最近は未来が高齢になり、トイレの場所を認知できないため、オムツも利用するようになりました」
滑りにくいことを前提に、耐水や抗菌の機能を持つ床材のフローリングを選んでおくことで、犬が粗相をしてしまったときでもさっと拭けば清潔さを取り戻せますね。
階段を低く、段差をフラットに
今西さんは家を建てるときに、2匹の犬が将来老いていくときのことも考えて設計したそうです。
「足が不自由な未来のことも考えて、2階への階段の段差を低くしてもらいました。建売住宅の階段では13~15段が多いですけれど、17段にしてもらいました。未来でもひょいひょいと階段を上がっていきます。また、同じ理由で玄関も段差のないフラットなものにしてもらいました。
土間の段差は、元気な頃は特に問題ありませんが、犬も歳を取ると転んだり、うっかり落ちてしまったりすることがあります。だから、あらかじめバリアフリーにしておこうと思ったのです」
全室扉を引き戸に
さらには、部屋と部屋を仕切る扉を、すべて引き戸にしたそうです。
「これは、犬を飼う方にはぜひおすすめしたいです。一般的な開き戸の扉は、開け閉めの際に犬に当たったり、風で自動的に閉まったりしてしまうことがあり危ないです。引き戸なら、ちょっと開けていれば犬が自分で扉を開けて自由に出入りすることもできるので便利です」
何かの拍子で開き戸の扉が閉まって、犬が部屋に閉じ込められてしまったというケースもあります。夏場の留守中なら、熱中症などの危険もあります。しかし、引き戸ならそうした心配が少ないです。
雨戸を採風タイプのシャッターに
犬を留守番させるとき、特に夏の暑さ対策としてエアコンをかけっぱなしにすることが多いでしょう。けれど、真夏に停電が起きることも稀ですがあります。そんなとき、閉め切られた家では室温がどんどん上昇し、犬の体調が心配になります。
「我が家はそういうときでも大丈夫なように、雨戸をスリットの付いた採風タイプのシャッターにしました。普段はエアコンをかけて過ごしますが、犬に留守番をさせるときはひとつの部屋はエアコンをかけて扉を開けっぱなしにして、隣の部屋の窓を採風タイプのシャッターで開けておきます。そうすれば外気が入るので、最低限の環境は保てます。また防犯面も心配はありません」
LIXILでも、採風タイプのシャッターがあります。採風・採光が可能なため、室内環境を快適にコントロールできます。
犬が快適な暮らしとは「福祉」を考えること
今西さんのお宅は、犬が快適に暮らせるようにさまざまな工夫がなされ、さらには犬が歳を取っても幸せに暮らせるような備えがなされています。
「私は動物愛護活動にも携わっていますが、動物愛護とは、ただ動物をかわいがろうということではないんです。かわいいから服を着せるとか毛を染めるとか、人間が楽しむことではなく、肝心なのは犬が一生、飼い主さんのもとで幸せに暮らせるかどうか、ということだと思います。愛護と同時に、動物の福祉を考えてほしいなと思っています。
この家を建てるときに一番考えたのはそのことです。階段を緩くしたら未来も自由に上り下りができて楽だし、スリットシャッターにしたら停電のときでも2匹を熱中症から守ることができる。いかに愛犬のことを考えて、その子が安心安全に、そして幸せに暮らせるかを最優先に考えました」
今西さんは、新たに犬を飼い始めるときにも、その視点から考えることが大切だといいます。
「高齢の方が犬を迎えるとき、大型犬や生まれたばかりの仔犬は大変だと思います。犬は15年以上生きます。大型犬が歳を取って介護が必要になったとき、自分の体力でケアができるか。いつまで自分が元気で散歩に連れて行ってあげられるか。それらができなくなると、飼育放棄につながってしまったり、手放したりしなくてはなりません。実際に、高齢者が飼いきれなくて手放すという例は後を絶ちません。そこまできちんと考えることで、犬も、人も、幸せに暮らせるのだと思います」
犬と暮らす住まいづくりは、将来の姿をイメージしながら進めていくことが大切ですね。次回は、今西さんの家の外まわりについて伺っていきます。
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