犬と暮らす家づくり[第3回]

「犬が嬉しい」家の外まわり

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足の裏は乾いていることが大切

 犬と暮らすためのリフォームとしてよく挙げられるものに、散歩から帰ってきたときなどに犬の足を洗ってあげるためのシャワースペースの設置があります。けれど、今西さんは、必ずしも必要な設備ではないといいます。

「我が家では、散歩から帰ってきたらそのまま家の中に入れてしまいます。雨などで濡れている場合は、玄関マットやタオルなどで汚れを拭き取る程度。衛生に気を配り、外出後は必ず洗うという方も多いのですが、洗ったあと完全に乾かさないまま濡れた状態で放置しておくと、肉球の間が蒸れて炎症を起こしたり、トラブルになったりするケースもあるんです」

 海外では基本的に室内も靴を履いた生活ですから、犬も家の中と外の区別はあまりしません。日本の場合、室内は靴を脱いで生活しますから、それで神経質になる方が多いのでしょうか。

「犬を飼って20年以上このスタイルで、私が病気になったことはありませんね。もし家の中が汚れてしまっても、すぐに拭き取ればいいわけです。そのほうが楽! もちろん定期的に犬をシャンプーしてあげるのはいいと思います。うちの場合は1~2カ月に1回、トリマーに連れて行ってシャンプーとトリミングをしてもらいますが、自分で洗ってあげたいなら自宅にシャワースペースをつくるのもいいかもしれませんね」

テラスには屋根を

 今西さんは散歩のための設備より、普段、家の外にも居心地のいいスペースをつくってあげることをお勧めするそうです。

「リビングの窓を開けたところに木製のテラスを設けました。テラスの上には屋根を付けています。真夏の暑いときでも、直射日光を遮ってくれるので快適に過ごせます」

 デッキスペースに屋根を付けることは、日差しを家の中に入れないためにも有用です。ただ、冬は日差しを取り入れることで室内を暖かくしてくれますから、条件によっては屋根の出し入れができるサンシェードなどを設置するのもいいかもしれません。LIXILにも「スタイルシェード」という製品があります。

LIXILのスタイルシェードの一例。

 テラスから庭に降りる階段の幅は、広めに取ったそうです。

「以前の家にもテラスはありましたが、庭に降りる階段の奥行きが狭かったんです。きららはそこで寝るのが大好きだったので、この家では階段の奥行きを30センチ以上に広く取りました」

庭の植栽に気をつける

 今西さん宅は、テラスの階段を降りたところがタイル敷きになっており、その先には芝生の庭が広がっています。

「日本の道はほとんどアスファルトです。真夏の昼間に散歩に出て、灼熱のアスファルトの上を歩かせるわけにはいきません。なので、犬が昼間に外に出たがるときは、芝生の生えた庭に出してあげるようにしています。
 トイレは基本外なので、庭に出ているときに芝生で用を足して、芝生が枯れてしまったりもしますけれど(笑)、犬のための庭なのでなんとも思いません」

 お庭には花も植えているそうです。

「植える花なども性質をちゃんと調べて、毒のない品種を選ぶことが大切です」

 犬が食べると中毒を起こす植物はいろいろあります。人間にとっても毒になるヒガンバナやスズランのほか、アジサイ、ツツジ、チューリップ、スイセン、アサガオも危険です。ユリなどは花や葉だけでなく花粉まで危険性が高いので、注意が必要です。部屋の中でよく育てられるポトスやイングリッシュアイビーなどの観葉植物も避けたほうがいいといわれます。また、果物のブドウも腎不全を引き起こす原因になるので与えてはいけません。

近隣住民に迷惑をかけない庭に

 今西さんは、庭のお隣と接している部分には、高さのある木製のパネルを設けて仕切っているそうです。

「はじめにお話ししたように(編集部注:第1回記事内、近隣との関係性はとても大切です。犬がお隣の敷地に顔を出したりしないよう、高さ1m50cmほどのウッドパネルで仕切っています。猫とは違って上を飛び越えることは少ないので、このくらいの高さで十分でしょう。大型犬で心配な場合は、『返し』を付けることもお勧めです。お隣の敷地と接していない部分はメッシュのフェンスにして、風がうまく流れるようにしています」

 最後に、犬のお迎えの仕方について今西さんにアドバイスを伺いました。

「犬をお迎えするには、いくつかの方法があると思います。ひとつはペットショップ。近年、ペットショップが批判を浴びることが多いですが、きちんとしているお店もたくさんあります。またブリーダーの方と知り合いになって、生まれてきた子を直接お迎えするのもいいでしょう。もうひとつ、保護犬をお迎えするという形もあります。犬をどう迎えるかは人それぞれの考え方があっていいと思いますが、我が家の2匹の子たちは、どちらも動物愛護センターからやってきた保護犬です。

 保護犬は、飼い主が高齢で飼いきれなくなった子もれば、野犬上がりの子もいます。虐待を受けて保護され、トラウマを持っている子も少なくありません。そういう子を迎えるのは、ゼロからではなくマイナスからのスタートからになる場合もあり、心を通わせるまでに時間がかかるケースもあります。それでも、もしチャンスがあるのであれば、そういう行き場のない子たちを迎えて、その子たちを自分の手で幸せにしたいと思ってくださる飼い主さんがいるとすごく嬉しいです」

 犬との生活は、私たちを心から癒やしてくれます。同時に、犬たちにも癒やしを与えてあげることで、みんなが幸せになれます。みなさんも、犬も人も心地よい空間をつくって犬を家族として迎え入れ、もっと素敵な人生を送りませんか?

≪お話を伺った方≫

今西乃子さん

児童文学作家。
主に児童書のノンフィクションを手掛ける。執筆の傍ら愛犬・未来をテーマに学校にて「命の授業」を展開。主な著書に愛犬の未来ときららを描いた『捨て犬・未来、しあわせの足あと』『子犬のきらら ゆれるしっぽふんじゃった!』(ともに岩崎書店)などがある。

文◎坂井淳一(酒ごはん研究所)

リクシルオーナーズクラブ(年会費無料)