「やらないこと」を決めると部屋は片付く[第1回]

片付けに大事な「やらない」
3つの習慣

空間
リビング・寝室・居室
関心
整理収納

片付け習慣の第一歩は
「やらないこと」を決めること

 整理収納コンサルタントとしてご活躍の須藤昌子さんのお宅にお伺いして、実際にお宅を拝見しながら「やらないこと」を決める片付けのコツをお聞きしました。

 最初に、片付いた状態を維持するのに必要な「やらないこと」を決めるという考え方についてお伺いしました。

「私は整理収納コンサルタントとして活動している中で、多くの“片付けられない”というお悩みをお持ちの方にお会いしてきました。○○を片付けなくてはいけない、○○を掃除しなくてはいけないなど、日々やるべきことを考えるとそれに追われて息が詰まってしまいます。そしてたくさんのやるべきことは、本当にやらなければならないことを埋もれさせてしまうことにもつながります。
 そんな中で気付いたのが、やるべきことを決めるのではなくて、“やらないこと”を決めること。“やらないこと”を決めてしまえば、そのためには何をどうすればよいのかと考え、使いやすい収納を作っていくことができます」

 須藤さん自身、もともとは面倒くさがり屋の部分があるそうです。片付け上手というと、几帳面で完璧主義というイメージがあるため「自分は同じようにできない」と思いがちですが、それは誤解。片付けが上手い人は、片付けがしやすいルールを持っているのです。

まずは床にモノを置かない

 やらないルールを決めるのにまずおすすめなのは、「床にモノを置かない」ことだそうです。

「持ち帰ったバッグ、買った本や雑誌、飲み終わったペットボトルなど、ついつい床に置いてしまいがちなものを、まずは後回しにせずに片付けましょう。床は家の中でも面積が大きい箇所です。だから“床にモノを置かない”を徹底するだけでも家がだいぶすっきり見えます」

須藤さんのお宅のリビング。お掃除しやすいからこそきれいな状態をラクに維持できる。

 床にモノを置かないことで、掃除をするときにもいちいちモノを動かさなくてよくなります。また、床にモノが多いとそこでつまずいたりするので、なくなることで安全面でも安心です。

「我が家の床に置いてあるモノは、家具や観葉植物だけです。だから床のお掃除がとてもラクで、まめにお掃除ができます。そしてまめにお掃除していると気持ち的にもすっきりして、片付けに関してもやる気が出てきます。まずは“床にモノを置かない”からはじめてみてください」

ちょい置きをしない

ちょい置きしがちな机にも必要なモノ以外は置かないように。
机も部屋で広くスペースをとるので、視覚的にすっきりする。

“床にモノを置かない”もその中の一つですが、片付けが上手い人に共通するのは、“後でやろう”としないことです。後で片付けるまでの間、ちょっと置いておこうという“ちょい置き”を減らすと、片付けを維持する習慣につながります。

「いつも“ちょい置き”をしてしまう場合は、どうしてそうしてしまうのかを一度考えてみてください。大抵の理由は、“面倒だから”ということに行き着くと思います。それなら、どうしたら面倒に感じず片付けられるのかを徹底的に考えてみるのです」

書類は種類ごとに分類してすっきり。
学校からのお知らせなどもファイルにまとめて。

しまった書類で忘れてはいけないことは、ここに書き出しておくように。

「例えば私の家では、以前は郵便ポストに届いた健康診断のはがきや支払い書などの書類を、2階にしまうことにしていました。
 ただ、それだと2階に行くのが億劫で、ついつい書類を片付けるのが後回しになってしまうのです。そこで、リビング横のキッチンの奥の棚の一部に、書類を整理して納められるコーナーを作りました。
 さらに、この棚の扉の裏に書き込めるボードを設置しました。書類の中には健康診断のはがきなど、期限があるものや忘れてはいけないものがあります。そういったことを、書類をしまう際にこのボードに書き出しています」

 こうして、「どうしてモノがすぐ散らかってしまうのか」、「なぜ片付けるのが面倒に感じるのか」を一つひとつ考えてそれを解決する方法を探ることで、無理なく“ちょい置き”を防げるしくみをつくることができるのです。

 最初はしくみを考えるのに手間がかかりますが、自分に合った自分用のしくみなので、自然とモノが片付きます。

モノを増やさない

キッチンの引き出しには使用頻度の多いものを取り出しやすく収納。

 片付けた状態を維持するには、モノを増やさないことも大切です。コツは、その場でどうするかを決めること。

「片付けと同じくモノを捨てるときにも、後回しにしないことが大切です。みなさん、必要ではないものを持ちすぎているのです。片付け相談を受けた方の中には、キッチンで使うしゃもじを10個くらい持っていらっしゃる方がいました。でも、本当に必要なのはその中の何個かですよね。
 ただ、必要ないとは思っていても捨ててしまうのが不安という方には、捨てる前にまずはお試し期間を設けてもらうようにしています。保管しておくボックスなどに入れておいて、すぐに処分せず様子を見る期間を設けるのです。様子を見る期間があることで、“なくても大丈夫”と納得してモノを減らすことができます。捨てることを即決せず保留することを“決める”だけでも次のステップに進めます」

 片付けは本来、自分が心地よく過ごすために行うもの。だから、モノの持ち方も人それぞれで、その人の暮らしや家のサイズ感に合わせればよいと須藤さんは言います。モノを無理に捨てる必要はないのです。

「片付けも収納も“これが正しい”というものはないのです。ただ、家の収納スペースが少ないのにモノが多すぎて溢れている場合は、使いにくいし、ごちゃごちゃして気分的にもよくないですよね。そうしたら、どうするかを考えなくてはいけません。人それぞれの暮らしがあり、その人によって何が快適かは異なります。だからこそ、その人が何に困っていてどう解決すればよいのかを一緒に考えていくことが必要だと思っています」

 第1回は「『やらないこと』を決めると部屋は片付く」の基本的な考え方についてご紹介しました。第2回は片付けを維持するのに大切な、今までの“思い込み”を変えていくことについて考えてみます。

(第2回に続く)

≪お話を伺った方≫

須藤昌子さん

整理収納コンサルタント。もともと片付けが好きとのこともあり、整理収納アドバイザー1級の資格を取得。その後、整理収納コンサルトの資格も取得。整理収納・片付けの考え方を伝えるブログが話題になり、2017年Ameba公式トップブロガーに認定。
整理収納サポート、整理収納スタイリングレッスン、整理収納セミナー、コラム執筆、雑誌監修など多方面で活躍。著書に『死んでも床にモノを置かない(すばる舎)』などがある。

撮影◎平野晋子
文◎濱田麻美

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