ペットも人も幸せに暮らせる家 [第3回]

ワンちゃんのためのリフォームは“落ち着ける”空間作りを

空間
リビング・寝室・居室
関心
悩みリフォーム

ワンちゃんの鼻はとても敏感

 キーポイントホームでは、犬と暮らすリフォームの依頼を受けるときに、いくつか重視しているとことがあるそうです。
「必ずお勧めするのが、無垢材の床です。無垢材でオイル仕上げの床材は、ホルムアルデヒドなど体に悪い成分が含まれていません。さらに、マーキングなどで汚れたり臭いが染みついたりしても、削り直すことできれいにできます。犬の嗅覚は人の数千倍から一億倍ともいわれています。人間が感じないほどの臭いでも、犬にとってはストレスになる可能性があるのです」というのはキーポイントホームの阿保勝之さん。

 ドッグトレーナーの古銭さんも、床材に関しては気をつけるべきだといいます。

「滑りやすい床は、特に老犬にとっては身体に負担がかかります。犬は一生をその家で暮らすのですから、仔犬だからいいだろうと考えずに、早めに一生を考えて床材を最適化してあげた方が良いですね」

 壁材の選び方にも気をつけるべきポイントがあります。

「床材同様、ホルムアルデヒドなどが出ない天然素材が良いと思います。また、LIXILのエコカラットプラスもお勧めです」と阿保昌子さん。

 エコカラットプラスは、粘土鉱物などの微細な孔を持つ原料を焼成した内装壁材です。湿度調節機能を持ち、室内の湿度が高くなると湿気を吸収し、逆に乾燥すると水分を放出します。カビやダニの繁殖を抑え、においを抑える効果やシックハウス対策にも役立ちます。

「エコカラットプラスは静電気も起きない素材です。花粉やほこりなどが舞うのを抑えて、人間の体より低い位置にいる犬が、これらを吸いにくいのもいいと思いますね」

 エコカラットについての詳細は、こちらのサイトでご覧になれます。

ワンちゃんが安心して過ごせる
「居場所」を作る

 お客様が来ると吠える犬は少なくありません。古銭さんは、そういう犬は飼い主との関係がうまく構築できていないといいます。

「例えば、小型犬だと、かわいいからといつもソファの上にのせたり、抱いたりする飼い主さんがいます。気持ちは分かりますが、始終そうやってかわいがっていると、人間と犬の関係が崩れてしまいます。だから、知らない人が入ってくると暴れたり、噛みついたりするのです。

 また、ずっとベタベタしているのは犬にとってもストレスです。適度に距離を保ちながら、たまに飼い主の近くにやってくるときは撫でてあげたり声をかけてやる、というくらいが良いのです。実は、ドッグトレーニングの大半は、犬との距離感をうまく作れない飼い主の心のトレーニングが中心なんです(笑)」

 また古銭さんは、リビングの中に、犬が常に安心して過ごせる場所を作ってあげることが大切だといいます。

キーポイントホームの施工例。クローセットを改造。犬がくつろぐスペースを作り、クレートを配置。

「天井があるスペースを作ってあげると良いでしょう。そこにケージや、小型犬ならクレートと呼ばれるものを配置します。上から何かがやってくるという緊張感をなくし、自分だけのスペースができることで、犬も主人との適度な距離を保てるようになります」

 キーポイントホームの施工例でも、3匹の犬のためにそれぞれのスペースを作り、クレートを置いた物件があります。

「ケージやクレートは、できれば海外製の頑丈なものがお勧めです。犬を連れて車で移動するときも、ケージやクレートを乗せることまで考えられているのです。ケージやクレートにはその犬のにおいが付いているので、移動の時も安心できるのです。ケージを置くのはにおいがこもりにくい場所がいいですね。適度に空気が流れる場所なら、花粉やハウスダストも溜まりにくいのです」

ワンちゃん専用ルームは必要?

 広めの戸建てに住んでいる方や、複数の犬を飼っている方の中には、犬の専用室を望まれる場合があるようです。しかし、古銭さんは犬専用の部屋は必要がないといいます。

「人間と犬の主従関係がきちんとできて適度な距離感があればストレスを感じませんから、専用の部屋を作る必要はありません。トリミング台を設けて、温水シャワーで洗えるような部屋を作った方はいます。寝室は飼い主によって入れたり入れなかったりさまざまです。中にはベッドの中に潜り込んで、夫婦の間に割って入ることで存在感を主張する犬もいます。けれど、別室を作って閉め出すのではなく、寝室に犬が落ち着けるスペースを作れば、ベッドには乗ってこなくなります」

 そして阿保昌子さんは、キッチンに犬を入れないことが重要だといいます。

「例えば、リビングダイニングの厨房部分などに犬が入って食材を食べてしまうのはよくありません。猫のように高いところに飛び乗るわけではないので、I型の対面型カウンターの入口にドアを設けたりすれば十分でしょう」

 LIXILでは、ペットと暮らすためのリフォームに最適な床材や内装材を取りそろえています。ぜひこちらのWebカタログもご覧になられてはいかがでしょうか。

 次回は、犬のための、家の外周りのリフォームについてご紹介します。

≪お話を伺った方≫

古銭正彦(こせんまさひこ)さん

アメリカで介助犬、聴導犬のトレーニングや動物介在活動を学ぶ。帰国後、東京で介助犬協会のインストラクターとして活動するほか、クリッカー、シェイピング理論を生かした家庭犬の出張トレーニングを行っている。オフ・リードドッグトレーニング代表。著書に『あきらめないで! 必ず直せる愛犬のトラブル―犬の行動学から考えた最新の欧米流同伴犬のしつけと飼い方』(共著)

阿保勝之(あぼかつゆき)・昌子(まさこ)さん

青森兼弘前市の工務店「有限会社キーポイントホーム」を経営するご夫婦。愛犬家で、ペットと暮らすための建築やリフォームを得意とし、ご夫婦とも愛犬家の住宅コーディネーター。昌子さんはペット食育士の資格も持つ。2020年5月から常設住宅展示場内に「dog café 木-point」を併設オープン、飼い主と犬が一緒に愉しめ、飼い主の情報交換・交流の場を提供している。
www.ki-pointhome.com

文・写真◎坂井淳一

リクシルオーナーズクラブ(年会費無料)