ペットも人も幸せに暮らせる家 [第1回]

ネコちゃんのためのリフォームの基本は「床」と「壁」

空間
リビング・寝室・居室
関心
ライフスタイル悩みリフォーム

ノンストレスの環境が
ネコちゃんの健康に必要

 まずお話を伺ったのは、東京・高井戸にある、カフェ営業もしている保護猫ハウス「ふしぎねこんち」のふじわらけいさん。映画や舞台の脚本家として活躍をしながら保護猫活動をなさってきました。主宰する劇団のお店がいつのまにか保護猫で埋まり、ついには自宅を保護猫のおうち兼猫カフェにリフォームしたそうです。

「何年も保護猫活動をしてきて、多頭飼育崩壊の現場などからも猫を救ってきました。そこで気づいたのは、トラブルを抱えている現場は、例外なく『におう』こと」というふじわらさん。

自宅を改造した保護猫ハウス兼猫カフェ「ふしぎねこんち」。舞台の大道具などを立て込む作業も日常的に行うスタッフが、ほぼ自分たちで改装したそうです。

「猫は、なにかストレスを感じたりすると、吐き戻しをしたり、マーキングとして粗相をするんですね。居心地が良い空間だとそれは少なくなりますが、どうしてもにおいが染みつきます。猫のストレスを取り除いてあげることが大切ですが、リフォームの上では、家を清潔に保つこと、においや汚れを手早く掃除できる家にすることがポイントです」

 ふじわらさんは、自宅の1階の床を、すべて防水・防臭機能を持つ床材に変えたそうです。玄関からキッチン、トイレ、猫が主にいるリビングまで、すべて張り替えです。

「木材そっくりの素材ですが、耐水・抗菌・対アンモニア性に優れ、猫が吐き戻したりマーキングをしても、さっと拭き取れます。においも残りません。バケツで水を流して床掃除もできるので、常に床を清潔に保てます」

 LIXILには、ノンワックスで滑りにくい「ラシッサ」シリーズという床材があります。「ラシッサ Sフロア・ラシッサ Dフロア耐水・ペット」は、耐水性、抗菌性があり、ペットの足すべりにも配慮した表面仕上げで、機能性を高めたやさしい床材なので、老猫でも安心して歩けます。

壁材はネコちゃんの爪とぎ対策を

 床と同様、気をつけるのは壁です。猫は爪とぎが大好き。いたずら好きでところ構わず爪とぎをして、壁をガサガサにします。その対策について、猫共生型の賃貸物件をプランニングしている株式会社クラシヲの杉浦雅弘さんにお話を伺いました。

「猫が爪とぎをするのは、本能的なものなので止められません。壁は、凹凸が少ない強化クロスを選べば被害は大幅に軽減できます」

 二種類の壁材のサンプルを出してくれた杉浦さん。写真左の黒い方は、布のような目が付けられ、もう片方は表面がスムーズです。

爪とぎの傷防止に不向きな素材と向いている素材。工務店さんと相談して選びましょう。

「布目のような壁材は、ひっかくと抵抗があるので、猫は楽しくなってボロボロにしてしまうんです。一方、(写真右の)黄色い方のような表面がスムーズなものはツメがかかりません」

「ふしぎねこんち」では壁材を傷に強いものに変えた上で、あえて階段近くに布材の丸い柱を立てています。取材に伺ったときも、猫たちは交代でこの柱で爪とぎをしていました。

入って欲しくないスキマには
扉をつけましょう

階段下の作り付けの本棚にはガラスの扉を設け、猫が飛び乗れるくらいの高さの場所だけ、クッションを敷いて居場所を作ってあげる工夫も。

「ふしぎねこんち」は、元々脚本家の自宅だったので、たくさんの本棚があります。猫は本棚の狭いスペースも大好きです。

「野生の記憶があるのでしょうか。狭いところは安全だと思うみたいですね。テーブルの下なんかも大好きです。大切なものを置いたり、猫に入ってもらいたくない場所には、すべて扉をつけました。その上で、一部だけ、猫が安心していられるようなスペースを作りました」とふじわらさん

デッドスペースをトイレに

 においや汚れがもっとも気になるのがトイレ周辺です。

「ふしぎねこんち」では、階段下のデッドスペースを棚にして、その一番下に深めのバスケットを置きました。

階段脇にトイレを設置。

「ここをトイレにすると、猫がちょっとはねたり砂堀りをしても猫砂が飛び散りません。掃除がとても楽になりますし、においも気にならないんです」とふじわらさん。

 クラシヲの杉浦さんが扱う物件でも、デッドスペースを有効利用しています。

「階段下や窓の下に棚のようなものを設えて、そこをトイレやごはんのスペースにすると、汚れが広がることを防げます。猫のトイレのしつけはさほど難しくはありません。囲まれた場所を作ってトイレ置き場にしてあげることで、安心して使ってくれます」

 洗面所にトイレスペースを作るのも、すぐに洗うこともできて良いアイデアだそうです。

「トイレの中に猫のトイレを置く方もいますが、猫が便器に落ちる危険を考えるとあまりお勧めできません。むしろ洗面台の下のデッドスペースがいいのではないでしょうか。また、洗面台を隅に排水口があるタイプに変えれば、仮に猫が脚を入れてもけがをすることを防ぐことができます」

 トイレまわりの壁などに、LIXILから出ている壁材「エコカラット」を使うのもお勧めです。エコカラットは微細な孔があり、臭いを抑える効果があります。湿気を吸い込み、空気が多湿になるのを抑え、結露の発生を抑制します。多湿になると、カビやダニが発生しやすくなりますが、エコカラットなら高湿度になりにくく、カビやダニの繁殖を抑えることが期待できます。

 こちらのサイトでは、エコカラットを使ってリフォームなさった方の体験談が読めます。

 次回は、猫が大好きなキャットウォークを作るときの注意点などを伺います。

≪お話を伺った方≫

ふじわらけいさん

劇団「オルガンヴィトー」主宰の脚本家・映画監督。第一種動物取扱業の免許を取得し、猫の保護活動をしている。高井戸にある保護猫ハウス兼猫カフェ「ふしぎねこんち」のオーナー。現在は長野と東京の二カ所に拠点を持つ。
http://www.organvital.com/

杉浦雅弘さん

27年間不動産業界で活躍。賃貸物件や建物管理に携わる。現在は約370名の個人オーナーから賃貸管理・建物管理を受託。なかでも猫共生型賃貸住宅プロジェクト「necoto」は大人気、常にオファーが絶えないという。現在、猫と暮らせる賃貸物件は200軒を超えるという。

文・写真◎坂井淳一

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