
ネコちゃんと暮らす家のリフォームは、「清潔に保てること」が一番の条件というお話を伺った前回に続き、今回はネコちゃんがゆっくり暮らせるスペースの作り方についてプロフェッショナルに伺います。キャットタワーやキャットウォークを作るときには、ネコちゃんの気持ちを理解する必要があるようです。
猫が居心地良く感じるのは、狭いところ、暖かいところ、そして高いところです。猫と暮らしはじめると、まず考えるのが「キャットタワー」だといわれます。老猫はあまり高いところには行きたがりませんが、若い猫は活発で、高いところに自分の居場所を作ります。
necoto物件に作られたキャットステップ。
「猫は、周りの様子を把握できる場所にいると安心するようです。そこで、キャットタワーを置いたり、壁にキャットステップを作ったりするときに気をつけたいのは、最上段の高さです。猫は、人の頭より高いところに上ると安心できるんです」という杉浦さん。
市販のキャットタワーは簡単に組み立てられて便利ですが、あまり乗ってくれないという話をよくきます。
「それは、キャットタワーの上から部屋の中を見渡せないからです。猫は単に高いところが好きなのではなく、家族を眺めることができたり、部屋の様子を把握できたりする場所が落ち着くのです」
ドアや階段の近くなど、人が入ってくるのをすぐに気づける場所もいいそうです。
「ただし、高すぎるのは掃除の点から向いていません。人が手を伸ばして拭き掃除をできる程度の高さがいいでしょう。窓のそばもお勧めです。猫は外を眺めるのも大好きですから」
キャットタワーより猫が好きなのが「キャットウォーク」です。部屋の高いところに猫専用の通路を作ると、元気な猫は走り回ります。また、自分の定位置をキャットウォークの中に見つける子もいます。ふじわらさんは、キャットウォークを作るときは、注意するポイントがふたつあるといいます。
「まずは、上り下りができる場所を2か所以上作ることです。特に、多頭飼いをするときには必要です。猫同士がけんかをしたり、じゃれ合って追いかけっこをするときなど、行き止まりだと逃げ場がなくなってしまいます。また、猫は隅っこに行くと動かなくなりますから、一頭買いの部屋でも行き止まりがないようにするほうがいいですね」
そして、走り回る部分の高さも重要だそうです。
「高さがあって居心地が良い場所では、マーキングをすることが多いんです。そのとき、猫はお尻を上げるので、そうできないように通路の高さを低くしておきましょう」
このふたつのポイントを押さえれば、猫が楽しく走り回れる空間になります。人がいる「下界」も落ち着いたものになるというわけです。
猫を入れたくない空間はどう線引きすればいいでしょう。
例えば寝室に入ってきたり、キッチンのテーブルの上に乗って食べ物をつまみ食いしてしまう、というような事があると思います。ベッドの上で粗相をするようなこともしばしば起こります。
「寝室の中にも、ベッド以外に居心地の良い場所を作ってあげれば、上に乗ってくることは少ないと思います」とふじわらさん。
「けれど、例えばリビングなどにいつも居られる、安心できる場所を作っておけば、寝室に入れないようにしても、文句はいいません」
人が開けないと猫が出入りできないような扉。
ふじわらさんの「ふしぎねこんち」では、キッチンに猫が入れないように扉を作っています。
「猫は器用なので、スライドドアをこじ開けたり、ドアノブにとびついて開けてしまいます。そういうことができないようなドアノブにすることが必要です」
猫が家の中を行き来できるように猫専用の出入り口を作ってあげたいという人が少なくありません。けれど、杉浦さんは、猫ドア設置には消極的です。
「ふしぎねこんち」のリビングの隅には猫が出入りできるドアが。
「実は、猫ドアをつけても出入りする猫は意外と少ないんですね。トレーニングが必要だし、猫によってはどれだけトレーニングをしても怖がって近寄らない子もいます。むしろ、部屋の中で十分走り回ったり、遊んだりするスペースを作ってあげる方がいいでしょう」
一方で、外が好きな猫もいるようです。「ふしぎねこんち」は、20頭ほどの猫が暮らしていますが、それぞれ個性があるようです。
「みんなで仲良くリビングで遊ぶ猫も、それを見守るような猫もいます。リーダーがいて、ちゃんと序列ができていれば、けんかをすることも滅多にありません。けれど、中には孤独が好きな猫もいます。そういう子には、玄関先にケージなどで居場所を作ってあげるようにしています」
ただ、玄関先にいる猫が、ふいに来たお客様の隙を突いて外に出てしまう危険性も。迷子猫になるのは、そういうパターンが多いようです。
「ふしぎねこんち」は、通りから奥まった旗竿地の一軒家。ふじわらさんは、玄関から門までの敷地の天井に、金網製のキャットウォークを作りました。
玄関ドアから門までのアプローチの天井がキャットウォークに。
「猫ドアを通ってここまでは来られますが、キャットウォークから敷地の外には逃げられないようにしています。なかには外に出るのが大好きな猫もいて、寒くなければいつもここにいるんです」
外に出たがる猫も、これなら逃げてしまうことはありません。猫の性格もそれぞれ見極めながらリフォームのプランを立てて、猫も人も幸せになれる空間を作りましょう。
次回からは、犬のためのリフォームについてご紹介します。
劇団「オルガンヴィトー」主宰の脚本家・映画監督。第一種動物取扱業の免許を取得し、猫の保護活動をしている。高井戸にある保護猫ハウス兼猫カフェ「ふしぎねこんち」のオーナー。現在は長野と東京の二カ所に拠点を持つ。
http://www.organvital.com/
27年間不動産業界で活躍。賃貸物件や建物管理に携わる。現在は約370名の個人オーナーから賃貸管理・建物管理を受託。なかでも猫共生型賃貸住宅プロジェクト「necoto」は大人気、常にオファーが絶えないという。現在、猫と暮らせる賃貸物件は200軒を超えるという。
文・写真◎坂井淳一