ニューノーマルで自炊を楽しむ![春のごちそう] 第2回

野菜の皮むき不要! ごろごろ春野菜のポトフ

空間
キッチン
関心
レシピ

野菜の皮には旨みと栄養が
ぎっしり詰まっている

 料理をするときに面倒なのが包丁での作業。特に、「切る」ではなく「剥く」作業ではないでしょうか。大根、ニンジン、ジャガイモ、里芋など、料理のできあがりをイメージすると、たいてい皮が剥いてあります。けれど、ほとんどの野菜は皮付きの方が美味しいのです。

 例えばジャガイモ。皮付きのフライドポテトの風味のよさは、よくご存じですよね。揚げる以外にふかす、煮る、焼くといった調理法でも、皮付きのままで美味しく食べられます。ただし、芽や、傷がついていたり、日に当たって緑色になった皮の部分にはソラニンやチャコニンという毒素が含まれており、大量に摂取すると食中毒を起こすので注意が必要です。

 また、ジャガイモの皮は栄養素が豊富です。鉄、カルシウム、カリウム、マグネシウム、ビタミンなどが実の部分の数倍も含まれています。

 他のさまざまな野菜の皮も、同じように栄養豊富なものが多いです。里芋などの堅い皮やタマネギのようなものは食べづらいのでさすがに剥きますが、多くの野菜は皮付きで食べることをおすすめします。

水と食材を入れてとろ火で煮るだけ
合理的で美味しいポトフ

 そんな「皮付き野菜」を美味しく食べられる料理に「ポトフ(pot-au-feu)」があります。フランスの代表的な家庭料理で、料理名は「鍋を火にかける」という意味です。かつてフランスでは、朝仕事に行く前に、食材を入れた鍋をパン屋さんに預けていたそうです。パンを焼いた後の石窯にその鍋を入れてもらい、余熱で夕方までじっくり火を入れる。仕事帰りに鍋を受け取れば、素材の旨みが出たスープと、柔らかくなった肉や野菜などのメインディッシュができている、という「お手軽料理」として親しまれてきました。

 料理レシピのサイトでは、本格的なポトフとして、スネ肉やモモ肉などいくつもの部位を入れたり、たこ糸で縛ったり、また簡単レシピとして、固形ブイヨンなどのスープの素を足すレシピが紹介されていることがあります。けれど、家庭での普段の食事なら赤身の牛肉であればなんでもかまいませんし、せいぜい1kg程度なので、たこ糸で縛る必要もありません。そして、煮込んだ肉や野菜から旨みが十分にスープに溶け込むので、スープの素もいらないのです。

 鍋にたっぷりの水と塊の牛肉、皮付きの食材を入れ、とろ火に2〜3時間かけるだけでできあがり。グラグラ沸騰させるのではなく、ゆったり対流するような火加減だと、アクはほとんど出ません。今回は春キャベツや西洋ネギのリーキ、カブなど、すぐに柔らかくなる野菜も使います。これらは何時間も煮ると崩れてしまうので、長くても30分くらいでいいでしょう。

 できあがりの透き通ったスープをスープ皿に注ぎ、塩や胡椒、好みでスパイスを加えて味を調える。そして具を別皿に盛り、塩とマスタードをつけながらいただく。白ワインや軽い口当たりの赤ワイン、ビールや日本酒にもよく合うディナーの完成です。

たっぷり作って3段活用!
ポトフのリメイク術

 煮込み料理は大量に作る方が美味しいという原則がありますが、家庭で同じ料理を何日も食べるのは飽きてしまいます。でもポトフなら、翌日に別の料理に変身させることが可能です。

 残った塊の肉を一口大に切り、鍋にカットトマト缶を加えます。コトコト15分も煮れば、トマトは煮崩れ、トマトシチューのできあがり。鍋に塩を入れて味を調えてもかまいませんが、さらにリメイクをするなら、器に盛った分にだけ塩を加えて味を調えましょう。

 さらに翌日は、ガラムマサラや市販のカレールーを溶いて、カレーにしてみましょう。肉と野菜、トマト缶の旨みも加わったスープは、市販のカレールーでもワンランク美味しく作れます。皮付きのまるごとジャガイモやニンジンが入ったカレーは、お子さまもきっと大喜びでしょう。

ごろごろ春野菜のポトフ

【材料】(4人前)

  • 牛赤身肉(肩やスネ肉などの塊肉)
    600g〜1kg
  • ソーセージ
    4本
  • ニンジン
    4本(大きいものなら2本)
  • ジャガイモ
    8個(大きいものなら4個)
  • タマネギ
    中玉4個
  • カブ
    中玉4個
  • セロリ
    1〜2本
  • 春キャベツ
    1/4玉
  • ローリエ
    3〜4枚
  • クローブ
    10粒くらい
  • リーキまたは深谷ネギ
    2本
    • 調味料

    • 胡椒
    • マスタード

【作り方】

ニンジンやカブは皮付きのままで。

タマネギにクローブを刺します。

1:野菜を切る

(1)タマネギは外側の固い皮を剥き、頭と根の部分を切ります。そこにクローブを刺します。
(2)ニンジンは、小さいものなら頭と尻尾を少し切り落とすだけ。大きいものなら1/2〜1/3に切ります。
(3)ジャガイモはよく洗って、芽を包丁の角で取りましょう。
(4)セロリは香りつけのためなので、適当に切ってしまってかまいません。葉の部分は取っておいて、スープの浮き実にするといいでしょう。
(5)カブは尻尾と頭のところを切って、小さければそのまま、大きければ半割りくらいに。
(6)ネギは10cmくらいの長さに切り揃えましょう。
(7)キャベツは芯の部分で繋がったまま、ざっくりと大きく切ります。

2:煮込む

 鍋にカブとネギ以外の具材とローリエを3〜4枚入れ、具材がすべてかぶるくらいの水を入れて、蓋をして弱火で煮始めます。センサーのキャンセル機能があるガスコンロなら、キャンセルをしておきましょう。沸騰してきたら、グラグラと煮立たないくらいのとろ火にします。ときどき鍋を覗いて、水が蒸発して減っていたら継ぎ足しましょう。1時間半くらい経ったらカブとネギを入れます。そこから30分ほど、さらに煮込んだら完成です。

【食べ方】

 各々の皿に野菜を盛り、取り出した塊肉を人数分に切って盛ります。スープはスープ皿やスープボウルに注いで。食卓に塩、胡椒、マスタードを用意して、各自好きな塩加減で召し上がれ!


文・写真◎坂井淳一

リクシルオーナーズクラブ(年会費無料)