広がってきた玄関の役割
リガード本社の一部も、土間仕様のモデルルームのような設え。
リガードで設計と施工を統括する府川渉さんに話を伺った。
最初に、リガードの顧客の方々の、玄関に関する要望の変化について尋ねてみました。すると府川さん曰く、「コロナ前からですが、打ち合わせで、玄関周辺のプラニンングについて割く時間が以前より圧倒的に長くなりました。かつての靴を着脱する場所という枠を超え、より多様な要素・機能を玄関に求める方が増えてるようです」とのこと。
これは玄関を居室の一部として活用するのが一般的になってきたのと同時に、花粉症の流行や菌への注意の高まりから、衛生上の境界線としての重要性が高まってきたことが理由。そんな中、コロナの流行によって玄関をどうプラニングするか、ますます注目されています。
空間としての快適さが向上
そこで改めて理想的な玄関をひもとくにあたり、①快適さ、②衛生面、③機能面と3方向からアプローチしてみたいと思います。初回となる今回は玄関の「①快適さ」がテーマ。
快適な玄関であるためには、大まかに4つの条件があるようです。
まず1つ目の条件が明るさ、採光について。府川さんによると、これまではあまり着目されることはなかったそうですが、昨今の“居室化”に伴い、特に採光と開放感が重要視されるようになったそうです。
「採光については、玄関を入った空間に、地窓(床面に近い低い位置にある窓)やハイサイド窓(壁面の高い位置にある窓)を設けることが増えました。これにより外からの目線を外してプライバシーを確保しながらも、光を取り込むことが可能です」
間仕切りを減らし、鉄骨階段を活用
また2つ目の条件は開放感。府川さん曰く「昔は玄関からすぐに壁があったりしました。今は住宅全体で壁やドアの数を減らし、ひと続きの空間として連続性を持たせるケースが多い。これは住宅の断熱性能の向上にも関係します。つまり玄関でいうと、床材の三和土(モルタル)やタイルは熱を逃がしやすいため、寒い玄関を他の居室と区切っていましたが、今はその必要がなく、設計の自由度が増したのです」とのこと。
そしてもう一つ、開放感という点で効果的なのが鉄骨階段。「スケルトンになっているので奥まで視線が抜ける上、光や風も通りやすくなります」
新たな生活様式では見逃せない換気
快適な玄関であるための3つ目の条件が、この風通しです。感染症から身を守るためには密な空間にならないよう、こまめな換気が欠かせません。その一つの解決法が、先に触れた地窓とハイサイド窓をセットで用いること。府川さんは「風が単に一方向に直線的に抜けるだけでは、空気の循環はよくありません。その点で高低差をつけたり、空間の対角線上に窓を設けると換気効率は高まります」と言います。
また玄関は住宅内でもかなり大きな開口部。開ければ窓として十分に機能します。プライバシーや防犯の問題がなければ、玄関ドアを開けるのも有効ですが、残念ながらこのご時世、実際には難しいかもしれません。実はLIXILにはこのジレンマを解消するアイテムがあります。それが採風機能付きのドア「ジェスタ」(新築用)と「リシェント」(リフォーム専用)。ドアや鍵を閉めたまま、ドアに配した窓から換気ができるので、防犯上も安心。玄関が風の通り道になることで、こもりがちな湿気や靴のニオイの問題にも効果があります。
外からの視線を遮って
プライバシーを確保
そして玄関に求める快適さという点で、最も考慮すべきは4つ目の条件となる外部からのプライバシーの確保かもしれません。この点は先ほどの採光の箇所で触れたように、玄関に設けた窓の位置を視線からずらすことが一つ。同時に往来から簡単に覗けないよう玄関を少し奥まった場所に設定したり、玄関に続く壁を伸ばしたり、といったことが考えられるそう。
このような空間の快適さへのさまざまな配慮を施したうえで、玄関はどんどん居室化へ。リビングの一部、あるいは大収納を設けるなどして、多様な用途を盛り込んだ多目的な空間へと変貌を遂げつつあるようです。
*LIXILでは、ほかにも“新しい日常”にマッチした玄関について数々の提案を行っています。ぜひご参照ください。
■ 3密を避けるために! 住まいの換気対策
採風玄関による換気対策を盛り込んでいます。
www.lixil.co.jp/announce/s/ventilation/
■ 玄関引戸「エルムーブ2」
オートクローズ機構がお勧め。非接触で開閉可能。
www.lixil.co.jp/lineup/entrance/lmove/concept/
■ 夏の住まいの困りごとを解決するラインアップ
リフォームの際の換気対策のためのアイテムをご紹介。
www.lixil.co.jp/reform/coolreform/lineup.htm
■ 玄関まわりのリフォーム事例
工夫を凝らした玄関のリフォーム例がいろいろ見られます。
www.lixil.co.jp/reform/entrance/case-rf/?page_id=1
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