花粉やウイルスを家の中に持ち込まない
昨今の玄関周りについて最も顕著に見られる変化は何か、府川さんに尋ねたところ、真っ先に挙がったのが「土間収納」です。
外出すればコロナウイルスほかさまざまな菌や汚れが衣服に付着する可能性があります。そこで数年前から、花粉症の方を中心にアウターやリュック・バッグなどの小物、子どもの遊び道具などを玄関に大容量のスペースを設けて収納するケースが目立ってきたのだとか。
「最近では、コロナ対策のマスクをしまう場所を玄関ドアの裏に設けた例もありました。“汚れたものを居室に極力持ち込まない”を徹底するお宅も多いですね」と府川さん。
距離感を保ちつつ、
愛用品はより身近に
また、このような土間収納が注目されるようになったもう一つの背景には、屋外で使う電気製品(例えば電気自動車の充電器や高圧洗浄機など)や趣味の多様化でグッズ(自転車やキャンプ用品など)が増えたことがあります。昔はキャンプ用品など外に置いていましたが、今は屋根がある場所に保管したいと希望する人が大部分だとか。そんな数々のリクエストの結果、以前は靴箱があれば事足りた玄関の収納事情に大きな変化が生まれたようです。
玄関開けたらすぐ、手洗い・うがい
そして外出先から帰宅すると、屋外で使用した衣類や道具を仕舞った後、すぐに手を洗う、という一連の流れをコンパクトに済ませようと、洗面台を玄関に設ける例が増えているといいます。府川さん曰く「我々の物件でも、現状3~4割は手洗場が玄関脇に付いています。手洗い・うがいのスペースは、玄関が衛生の境界線として機能するための重要なファクター。今後、さらに注目されるでしょう」
実はLIXILでもこのニーズに応えるコンパクトな手洗場のシリーズを用意。「帰宅後はできるだけ室内のものに触らずに、手洗い&うがいをしたい」という方のために、こちらをご紹介します。
家族用と来客用を
分ける2重動線
玄関に収納する物が増えたこと、衛生面の境界線としての機能がより重要視されるようになったこと──これら2つの流れと呼応して徐々に定着しつつあるのが、住人動線・来客動線を分ける回遊動線です。
例えば、玄関収納の中に、来客には見せたくないものが含まれることもあるでしょう。あるいは外出先で購入した品々を生活空間を避けて持ち込みたいと希望される方もいます。そんな場合、これらの解決策として「玄関からサニタリースペースやキッチンに直行する住人用と、来客用と2つの動線を分けた間取りを提案します」と府川さん。
必要な衛生グッズも常備したい
右:空間に浮遊するウイルス・菌・臭いを除去する「クレベリン」。中:手にとって使う、ジェル状のアルコール系消毒剤。左:天然カテキンの力を用いた除菌&抗ウイルス剤。衣類・布・空間用。
また衛生境界線という点では、ウイルス対策として推奨されている消毒液など、各種サニタリーアイテムを玄関に置くお宅も最近は多いよう。多種多様なアイテムが販売されており、目移りするほどですが、人体に直接つけるのか、あるいは外から持ち帰ったものや空間などの対象物に使用するのか、混同しないよう注意が必要。また人によってはアレルギー等もあるため、念のため原料なども確認したいもの。何れにせよ適切に、慎重にセレクトする必要があります。
そのほかにも例えば、靴底の付着物を落としてくれる玄関マットだったり、玄関周りを清潔に保つチリトリ&ホウキのセットだったり、それぞれのライフスタイルに合った対策アイテムを揃えておくといいでしょう。人体に害を及ぼす恐れのあるものは室内に極力持ち込まない──そのために玄関スペースを存分に活用して、新しい生活様式にマッチしたおうち時間を楽しみましょう。
*LIXILでは、ほかにも“新しい日常”にマッチした玄関について数々の提案を行っています。ぜひご参照ください。
■ 3密を避けるために! 住まいの換気対策
採風玄関による換気対策を盛り込んでいます。
www.lixil.co.jp/announce/s/ventilation/
■ 玄関引戸「エルムーブ2」
オートクローズ機構がお勧め。非接触で開閉可能。
www.lixil.co.jp/lineup/entrance/lmove/concept/
■ 夏の住まいの困りごとを解決するラインアップ
リフォームの際の換気対策のためのアイテムをご紹介。
www.lixil.co.jp/reform/coolreform/lineup.htm
■ 玄関まわりのリフォーム事例
工夫を凝らした玄関のリフォーム例がいろいろ見られます。
www.lixil.co.jp/reform/entrance/case-rf/?page_id=1
お話を伺った方
府川 渉さん
ふかわわたる (株)リガード 工務・工事統括部長
注文戸建住宅を中心に、家づくりのあらゆる面をトータルにサポートするリガード。特に自然エネルギーを効率よく取り入れた高性能の家(「TOSSの家」)の実績多数。また早くから玄関の重要性にも着目し、土間収納やスケルトン階段を活用した、時代を先取りする快適な住宅を数多く手がけている。
https://tokyo-chumon.com/
文◎友永文博
撮影◎太田隆生
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