
カビ対策は、比較的乾燥している梅雨前にすませておくのが効率的です。カビ専門家として知られる千葉大学真菌医学研究センターの矢口貴志准教授に、家の中でもとくにカビが生えやすいエアコン、浴室、台所のカビ対策について解説していただきました。
エアコンで除湿した後は、送風機を使って乾燥させる
家の中でも一、二を争うほどカビが生えやすい場所が「エアコン」です。前回、エアコンを梅雨時の除湿に活用することをおすすめしましたが、「除湿する前に必ずフィルターの掃除を」と矢口先生。
「フィルターにはカビを含んだホコリがたまっており、それを放置してエアコンを使用すると、部屋中にカビをまき散らしていることになります」
また、エアコンの内部は、除湿や冷房によってしけっているため、水分を好むカビが多く生息しているといいます。
「フィルターなど、ホコリがたまる部分と、水気を含んだエアコンの内部にいるカビは違います。そのため、フィルターのホコリを掃除するだけでなく、エアコン内部の湿気対策も必要になります。
エアコン内部を乾燥させるには、エアコンを使い終わったらすぐに電源を切らず、15〜20分ほど送風するのが一番です。送風機能がないエアコンをお使いの場合は、温度設定を30度くらいにして冷房をかけると、風だけが出てくるので、送風として利用することができます」
高温多湿で、湯垢や髪の毛といった栄養源にあふれている浴室は、水分を好むカビが繁殖しやすい場所です。掃除しても掃除してもカビが生えてくる……という経験をした方も多いでしょう。
矢口先生によると、すぐにカビが生えてきてしまうのは、掃除でカビを取り切れていないからだそうです。
「カビ発生の原因となるカビの胞子が浴室の天井に付着していると、壁や床をいくら掃除しても、すぐにまたカビが生えてきてしまいます。まずは一度、天井も含めて掃除しましょう。天井に手が届かない場合は、モップの先にカビ取り剤を染み込ませて吹いたあと、水拭きをしてください。きれいにした後は、煙タイプの抗カビ剤を使うと、煙が浴室の隅々まで行き渡り、きれいな状態を長く保つことができます」
また、タイルやゴムパッキンなどに生えてしまったカビは、以下のように対処すると良いそうです。
「カビが内部にまで浸透している場合、一回の掃除ではなかなか取りきれません。カビ汚れがひどい場合は、キッチンペーパーをあてた上からカビ取り剤をスプレーし、その上にラップを貼って10分程おきましょう。
なお、カビを取るためにブラシやタワシなど、硬い素材でこすってはいけません。表面に細かい傷がついてしまうと、次にカビが生えたときに落ちにくくなってしまい、逆効果です。とくにパッキンなどの柔らかい場所は決してこすらず、カビ取り剤を浸透させて水で流せば十分です」
掃除でカビをきれいにした後は、カビが生えにくい環境を整える必要があります。
「お風呂掃除はできるだけ、入る直前ではなく、湯上がりの時にやるのが効果的です。とくに浴槽の中は非常に汚いので、残り湯はその日のうちに捨てて、浴槽のなかも掃除してから浴室を出ることをおすすめします。掃除といっても、汚れが目立つ部分を柔らかいスポンジで拭いた後、洗剤をスプレーしてから1〜2分おき、水で流せば十分です。
浴室を掃除した後は、湯気がこもらないように換気扇を回しましょう。なお、浴室に水分が残らないよう、100円ショップで売っているようなT字型のデッキブラシなどで水をかきとると、より効果的です」
また、浴室のカビを防止する上で、浴室乾燥機が非常に役立つといいます。
「梅雨時は部屋干しをすることが多いと思いますが、部屋中に大量の水分を撒き散らすことになるのでおすすめできません。浴室乾燥機がついている場合は、ぜひ浴室で衣類を乾燥させましょう。浴室乾燥機を使うと約50℃程度の温風が吐き出され続けるので、カビが生息しにくい環境をつくることができます」
お風呂場と同様、キッチンもカビが発生しやすい場所です。とくに、料理や水で高温多湿になりやすいシンク周りは、カビの温床になりやすい場所。中でも、水道の蛇口の裏は意外とカビで汚れているそうです。
「とくにシャワータイプのものだと水道口に水がたまりやすい上、食器を洗う際などに跳ね返りで汚れがついてしまい、カビが繁殖しやすいのです。食器を洗うときに、食器用の洗剤でシンクと蛇口の裏も一緒に洗うと良いでしょう」
また、カビは低温でもゆっくりと増殖していくため、冷蔵庫内も注意が必要だそうです。
「冷蔵庫内の4〜5℃程度の温度では、カビの発生を完全に抑えることはできません。野菜に付いた土やくずはカビの栄養源なので、冷蔵庫にしまう前に土埃を落とすのはもちろん、こまめに野菜室を掃除しましょう」
次回は、カビが生えてしまったあとの対処法について解説します。
→ 第3回に続く
1961年生まれ。早稲田大学理工学部応用化学科卒業。明治製菓株式会社を経て現千葉大学真菌医学研究センター准教授に就任。生活環境のカビ、特に病原性のカビを専門に研究している。
文◎八木麻里恵
人物写真◎加々美義人
画像提供◎Shutterstock