「戸建て」「集合住宅の低層階」
「最上階」は「窓」が狙われる
窃盗犯は手当たり次第にアトランダムな方法で家に忍び込んでいるのではなく、その手口には特定の傾向が見られるようです。防犯対策専門家の京師美佳さんによれば、戸建てや集合住宅の集合住宅の低層階、および屋上に近い階で、最も狙われやすいのがガラス窓だそうです。
「ガラスを割ってクレセント錠を外すという手口で、“こじ破り(三角割り)”“打ち破り”“焼き破り”と呼ばれる3つの方法があります。このうち“こじ破り(三角割り)”は、窓枠とガラスの間にマイナスのドライバーをねじ込む強引な手法です。この作業を何度が繰り返すと簡単にガラスが割れてしまううえ、大きな音が発生しません」
これに対し、“打ち破り”はもっと単純で、バールなどの工具でガラスを叩き割る手口です。大きな音が発生するのが犯罪者にとってはデメリットですが、即座にガラスを割れるので、線路沿いなど騒音が激しいエリアでは、意外と大胆に用いられているようです。
残る“焼き破り”は、ガスバーナーやターボライター(キャンプなどで使う火力の強い着火装置)で施錠部に近い付近のガラスを熱するというもの。わずか10秒程度でたやすく割れてしまううえ、大きな音も出ないそうです。
ワイヤー入りのガラスは飛散しにくく
窃盗犯には好都合
では、これらの犯行を防ぐには、どのような対策が有効なのでしょうか?
「もしも自分が泥棒だったとしたら……?」という視点で考えれば、その答えはすぐに見つかると京師さんは指摘します。
侵入に手間と時間がかかるようにすることで、泥棒の心を折ってやることが大切。防犯に強い窓に交換するのが理想だが、複数の鍵をつけることでも対策にはなるという。
「警察庁が窃盗犯からヒアリングした調査によれば、彼らの約7割は、侵入に5分以上かかると断念し、10分以上に達するとほとんどが諦めるそうです。つまり侵入を防ぐには、防犯ガラスに交換したり、複数の鍵をつけたりして、なかなか侵入できない家にすること。そうすれば、この家は面倒だと退散するはずです」
ただし、防犯ガラスに関して誤解してはならないポイントがあります。金属製のワイヤーが入ったガラスをイメージする人が少なくないようですが、それは防火目的のもので、防犯ガラスとは違うのです。
「むしろ、ワイヤー入りのガラスは叩き割っても飛散しにくいので、窃盗犯にとっては好都合。防犯ガラスは2枚のガラスの間に特殊なフィルムを挟み込んだもので、ヒビが入っても形状を保つため貫通するのに時間がかかり、クレセント錠に外から手を伸ばすことができません」
100円ショップで手に入る補助鍵。これはレールに取り付けるタイプで、上と下の2カ所に取り付けることで、防犯効果アップが期待できるという。
このように効果は抜群なのですが、防犯ガラスのネックは高価なこと。1つの窓に10万円程度の費用がかかるので、予算が足りない場合は複数の補助鍵を付けておくという手段を選びましょう。
「自分で開閉するのは面倒になりますが、数多く付けておくとより効果的です。その場合は、100円ショップに売っているような安価な補助錠でも大丈夫」
窓サッシ自体に同じ機能を持つものもあります。たとえばLIXILの「スタンダード・アルミサッシ・デュオ」シリーズは、標準装備のクレセント錠やサブロックに加えて、オプション装備の「戸先錠」を併用することで3点施錠が可能となっています。
また、同じくオプションで「ダイヤル錠クレセント」を装備すれば、番号を合わせて解錠しないとクレセントのハンドルが回りません。
対応製品であれば、こうしたオプション追加によって防犯性を高められることもあるので、メーカーに相談してみるのも良いかもしれません。
(第2回に続く)
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