住まいの「防犯」新方程式 第3回

警備会社はどこまで守ってくれるのか

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防災防犯ファミリー

到着まで25分!?
警備会社の守備範囲を認識しておこう

 かつては、それなりの資産家だけに利用が限られていた警備会社による防犯サービス。最近は数千円から利用できるパッケージのサービスも出回るようになり、一般家庭にも普及しています。

 もっとも、いざとなれば警備会社が駆けつけてくれるからといって、過度な期待を寄せるのは禁物かもしれません。京師さんはこう指摘します。

「本来、警備会社の役割とは、侵入された場合に被害を最小限に抑えること。けっして、侵入を未然に防ぐのがその役割ではありません。もちろん、玄関口に警備会社のステッカーが貼られているのを見て、侵入を諦める窃盗犯も数多くいることでしょう。一方で、『警備会社を雇っているなら、相応のお金があるはずだ』と考える窃盗犯もいます」

警備会社のサービスは侵入を防いでくれるわけではないし、犯人を取り押さえてくれるわけではない。警備会社の守備範囲はあらかじめ理解しておくべきという京師さん。

 そもそも警備会社は、侵入のアラームが入ったからといって、直ちに現場へ向かえるわけではないそうです。

 警備業法では25分以内に到着すればいいことになっていますし、警備員が警察に代わって犯人を捕まえてくれるというものでもありません。
 では、警備会社には何を期待すればいいのでしょうか。

「住人に代わって警察に通報し、現場の状況を確認するために駆けつけ、被害を最小限に抑えるというのが、警備会社に期待できることです。その意味では利用したほうがいいでしょうし、旅行などでしばらく不在にする際には役立つ存在です。しかし、これはあらゆる防犯対策に言えることですが、どのような手を講じても100%の安心は得られないのです」

留守番をするシニアや子ども、
ペットの見守りも!

 ごくシンプルな留守宅のモニタリング(監視)にさまざまなオプションを加えていくことで、多様なニーズに応えていくのが最近の警備会社のサービスの特徴です。
 昔に比べ料金的にも手頃になり、会社によっては月々5000円程度(初期費用等は除く)で家中に監視カメラを設置し、異常が発生したらアラームを発するパッケージも利用できるそうです。

「自宅の中や周辺の映像だけでなく、室内の気温もモニタリングできるようになっています。留守番をしているシニアやお子さん、ペットの様子を見守りつつ、必要に応じてエアコンの操作を行うようなことも可能。このようにセキュリティ面に加えて、日常生活においても便利に結びついていけば、警備会社の利用価値はより高まることになるでしょう」

「番犬を飼う」は今の世も通用する防犯策なのか?

 ところでペットと言えば、昔の家庭では番犬を飼うケースがよく見受けられました。今の世でも、犬は防犯対策において一役買ってくれそうなのでしょうか?

「番犬はいないより、いたほうが心強いのは確かです。不審者の気配を感じて吠えてくれれば、それなりの効果は期待できます。窃盗犯としても、吠えられると周囲に侵入がばれてしまうリスクが高まるので、番犬を飼っている家は敬遠しがちになります」

昔からある猛犬注意のステッカーや、警備会社のステッカーは、犯罪の抑止力にはなるようだ。

 実際、並んで建っている戸建て住宅で6軒中5軒が窃盗犯に侵入されたケースを京師さんが検証してみると、被害に遭わなかった家庭だけが犬を飼っていたそうです。
 また、昔ながらの「猛犬注意!」のステッカーも意外と効き目があるとか。

「純粋に犬が苦手な窃盗犯もいますし、どれだけの猛犬なのかをあらかじめ確認することもできないのも、彼らにとっては不安でしょう。そうなると、別の家を狙ったほうが無難だという思考になりがちかと思われます」

 ただし、京師さんは次のようにも注意を促します。

「血統がよかったり、可愛い小型犬だったりした場合には、逆に心配事にもつながりかねません。なぜなら、窃盗犯がペットまで盗んでいってしまう恐れもあるからです」

ダミーのステッカーや防犯カメラに効き目はある?

「猛犬注意!」のステッカーについては、実際には犬自体を飼っていないにもかかわらず、強引なセールスなどを抑止する目的であえて表札の横に貼っている家庭もあるようです。
 しかし、実態をともなわないこうした威嚇は、多少でも効果を期待できるのでしょうか?

「比較的安価で販売されている『セキュリティ稼働中』とか『防犯アラームセンサ作動中』といったステッカーには、意外と犯罪抑止力があるようです。もちろん、窃盗犯もそれを鵜呑みにしているわけではなく、単に貼っているだけで、それらのシステムが本当には作動していないことを疑っています。

 とはいえ、少なくとも、何も対策を講じていない家庭に比べれば防犯意識が高いことは確かで、うかつに侵入を試みたらアラームぐらいは鳴るかもしれないという警戒心が生じるものです」

 防犯カメラについても、撮影機能が実装されていないダミー製品があります。
 遠目でも偽物だと見抜かれるほど安価なものでなければ、それなりの威嚇効果はあるようです。

最近はダミーカメラも本物との区別がつかなくなってきている。また、ダミーであっても、防犯意識の高い人が住んでいると犯罪者に思わせる抑止効果はありそうだ。

「外側は本物と同等の仕上がりになっていて、近づいて確認しなければ判別できないダミーのカメラであれば、窃盗犯も警戒せざるをえないでしょう。確かめてみて本物だった場合、カメラをのぞき込む不審者として自分の姿が撮影されてしまいますから」

 もちろん、ダミーのステッカーや防犯カメラで十分という意味ではありません。
 予算的に厳しいわけではなければ、相応のお金を費やして講じた対策のほうが、より大きな安心をもたらすのは当然のことです。

 ダミー関連の話を通じて京師さんが訴えたいのは、「わが家は防犯に対する意識が高く、ちゃんと対策も打っていますよ!」と窃盗犯たちにアピールすることの重要性です。
 防犯意識が高い家庭と無頓着な家庭なら、後者のほうが狙われやすいのは当然でしょう。

(第4回に続く)

お話を伺った方

京師美佳さん

百貨店のエレベーターガール、セキュリティ企業、防犯ガラスメーカーをなど経て、2005年に独立。京師美佳セキュア・アーキテクトを設立し、防犯対策専門家として防犯アドバイザーとして、マンションや戸建ての防犯のプロデュースや設計、防犯診断、防犯の施工などを行う。4000件を超える相談や診断、企業のセキュリティ商品などの企画・販売戦略のアドバイスを行う一方、テレビ・新聞・雑誌などメディアで防犯の専門家としてコメンテーターとして活躍。全国で防犯の講演を行うなど防犯の啓蒙活動を展開している。一般社団法人全国住宅防犯設備技術適正評価監視機構理事

文◎大西洋平 人物写真◎平野晋子

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