眠れない原因とは？

　遠藤先生のクリニックではウェアラブル端末を使い、ご自身の睡眠を知りたい方1000人のデータを集め、その中で綺麗なデータがとれた500人について調査を進めました。一般的に年を重ねるほど睡眠の悩みは増える傾向にあるといわれています。でも、データの結果を見てみると意外なことがわかってきました。

「年とともに“睡眠力”は減少するのが一般的です。睡眠も老化するのです。ただ、私が睡眠の状態を調べてみたところ、一番睡眠の状態が悪いのは、実は10代～20代という結果が出ました。この世代は睡眠時間は長くとっているものの、睡眠の質がよくなかったのです。かえって睡眠の質がよいのは50代～60代という結果が出ました。中年以降は若い頃よりは睡眠時間が短くなっているかもしれませんが、しっかり寝ている方が多いのです。
　だから睡眠に関する問題を抱えているのは中高年のほうが多いとは一概に言えないのです。若くても睡眠が問題になって、登校や出社ができなくなってしまう方が増えています」

　理想的な睡眠時間は7時間とされています。そしてそれ以上眠るほどよいというものでもないそうです。

「先ほどもお話ししましたが、さまざまなデータを見ると7時間睡眠の人が一番死亡率が低いという結果が出ています。とはいっても、毎日7時間睡眠をきっちりとるのはなかなか大変な人も多いので、少なくとも6時間は寝るようにしてください。
　逆にあまり長く寝ようとするのも睡眠の質を下げてしまいます。よく高齢者の方が早めに床に入って眠ろうとしますが、無理に長時間寝ようとすることでかえって眠れなくなったり、睡眠の質が低下したりする傾向があります」

　一般的には、年齢以外の不眠の原因はストレスだといわれています。もちろんストレスも大きな要因ですが、実は休日の過ごし方も大きく影響しています。

「私が解析した500人の一番睡眠時間が長い日の平均睡眠時間は9時間半でした。一方で一番睡眠時間が短い日の平均は6時間でした。つまり睡眠が長い日と短い日では、平均で3時間半も差があるのです。
　このデータから想像されるのは、多くの人は休みの日には眠れるだけ寝て、遅く起きているという生活スタイルです。当然休日に遅く起きればその日の夜は寝付きにくくなります。そして次の日、起きるのが辛くなります。ここから睡眠サイクルの乱れが始まるのです。
　これが休みの日に朝5時に起きて思いっきり活動したら、日曜の夜は自然とぐっすり眠れるでしょう。そうすると月曜の朝は早めに目が覚めて、1週間のリズムも整ってきます。また、思いっきり遊ぶことでストレス解消にもなります。休日はその名のせいか“休む日”というイメージをもっている方も多いでしょうが、“楽しむ日”と考えてもっと外で思いっきり遊んでいただきたいですね」

　第2回は快適な睡眠を得るための環境について考えていきます。

（第2回に続く）