自分に合った寝具選び
寝る環境というと真っ先に浮かぶのが寝具ですが、寝具も年々進化していますね。
「一般的には大きなベッドほど睡眠にはよいといわれています。シングルよりもセミダブルやダブルなどのほうがよいですね。
商品によって機能も異なります。例えば独自の技術で作られた極細繊維をまるで空気を編むように絡み合わせて仕上げたマットレスの『エアウィーヴ』は、空気を含んだ極細繊維が熱を放出してくれるため、暑がりの人にはおすすめです。
一方で『テンピュール』のように体形に合わせてフィットするような商品は、どちらかというと冷え性の人におすすめです。
両方のメリットを持っているのが、西川の点で支える敷きふとん『エアー』や『アンドフリー』です。これらはウレタンフォームの点で体を支えているため布団と体の間に空気層を作ってくれます。ウレタンフォームにも通気孔があり、熱と湿気を逃がしてくれるのです。なおかつ、体を点で支えることで重力がかかる部分とかからない部分の調整をしてくれます」
枕は首のアーチに合ったものを
枕選びも難しいところです。自分に合った枕選びで悩んでいる人も多いですね。
「ホテルなどにあるやわらかくてふわふわした枕は西洋からきたものです。そして実は西洋人はうつ伏せに寝る人が多いのです。顔にあてて寝てもよいように、ふわふわでやわらかい仕様になっているのです。
一方で日本は伝統的に仰向けで寝る人が多い国です。仰向けに寝るときには首を安定して支えることが大切で、高枕やそば殻枕などが残っています。西洋式のふわふわのまくらだと首がしっかり支えられないことも多いのです。
日本人に比較的合いやすい枕は自分の首のアーチの形状にピッタリとフィットするものです。そういった枕を見つける、もしくはオーダーメイドで作ってもらうのがよいでしょう」
寝室の照明や音について
寝室の照明の明るさは一般的にはなるべく暗いほうがよいといわれていますね。
「そうですね。ただ、特に女性は部屋が暗すぎると不安を感じる方もいらっしゃるようです。自分が不安にならないくらいの、照度の低い照明をとり入れるとよいと思います」
「音に関しても、理論的には音がないほうがよい。人間の五感の刺激は脳幹網様体に入ります。そこに刺激が入ると脳を覚醒させてしまうのです。ただ、それでは無音で真っ暗の状態のほうがよく眠れるかというと、そうとは言い切れません。
人間は外から刺激があるとそこに意識が集中します。なにか音がすればそちらに意識が向きます。では外からの刺激が全くないとどうなるかというと、今度は自分の記憶から情報を引き出してきます。例えば『眠れないな……』と思って目をつぶっていると1日の記憶が蘇ってきてさまざまなことを考え始めるのです。そういうときは、どちらかというと悪いことを思い出すことが多いので、いろいろ気になって余計眠れなくなってしまうといった具合です。
だから、真っ暗で無音にすると眠れなくなってしまうという場合は、エアコンの音などの静かな音、暗めの明かりなどがあったほうがよいのです。音楽をかけたほうが寝やすいという人がいるのも、それは音楽に意識が向くため自分の記憶の扉を開けなくてすむからです」
なるほど、明かりや音に関しては本当に人それぞれと言えそうですね。
寝室に最適な温度設定は?
よい睡眠を得るための最適な温度設定についても教えていただきました。
「人は高い体温から低くなるときに眠くなります。では、冬に寒い部屋で冷えた布団に入ると眠りやすいかというと、それは難しいですよね。ではどのくらいの温度が適切かというと、平均的な体温が36.6度くらいの場合、布団は33度くらいが一番心地よい温度となります。布団を33度くらいの適切な温度に保つためのエアコンの設定温度は、だいたい冬場は18度~20度、夏場は27度~29度くらいです。夏場と冬場の温度設定が異なるのは、夏は夏用、冬は冬用の寝具を使うためです。真夏、真冬以外の季節は、特別な日を除いてエアコンを使わなくてもよいでしょう」
快適な睡眠を得るためには、寝具や部屋の明るさ、音、温度などのさまざまな条件を整えることが必要だとわかりました。睡眠の質は生活の質に大きく関わってくるので、自分に合った環境作りを心がけたいですね。
(第3回に続く)
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