刺激の多い世の中を、心地よく生きる基礎知識[第2回]

固定観念が、ストレスをこじらせる!

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同じ刺激も人によってストレス度合いは変わる

 山岡先生によると、代表的なストレスには以下のようなものがあるそうです。

 また、同じ刺激を受けても、人によって影響はまったく異なるそうです。

「たとえば、仕事でパワハラを受けて、精神的に参ってしまう人がいれば、体に何らかの異常があらわれる人もいます。精神と体の両方がボロボロになる人もいますし、平気な人もいるのです」

 その違いはどこからくるのでしょうか?

「性格や気質です。遺伝的な部分を基礎として、幼少期からの生活体験を加えて形成されます。そうして出来上がった性格や気質によって、ものの考え方、受け止め方が変わってくるため、受けるストレス量もまた変わってくるのです」

 たしかに、怒りやすい人とのんびりした人、溜め込んでしまう人と発散できる人で比べると、ストレスによる影響がまったく異なるのは、想像に難くありません。

「人によって、ストレスだと感じる刺激も、そこから受ける影響も違うので、セルフメンタルケアをする際には、性格や気質の把握が不可欠です」

コミュニケーション不足がストレスを招く

「人間は生活しているだけでも、さまざまなストレスに見舞われます。そのため、原因を知り、いかに受けるストレスを減らすかが重要です」と山岡先生。

「たとえば、人間関係から生じるストレスは、『相手との相互理解不足』が原因になる場合がほとんどです。コミュニケーション不足で相手をわかっていないと、関係性が悪くなり、ストレスになります。家族関係がストレスに直結している場合がありますね」

 コロナ禍の影響による外出自粛やリモートワークなどが、家での生活を変化させました。それがストレスにつながっているということです。

「家族と一緒に過ごす時間が増えたことで、自分の時間が持てずイライラしてしまう症例が多いように見受けられます。一緒にいるのに、心理的に孤立している状態になってしまうのでしょう」

 夫婦間でイライラをぶつけあってしまったり、全く関係のないストレスの原因が相手にすり替わってしまったり、八つ当たりしてしまう場合もあるのだとか。

「そうならないために欠かせないのが、家族間の話し合い。自分のことや身近な人間関係を把握することが必要なのです」

 この機会に身近な人々に目を向けて、関わり方を変えていくのもひとつの方法でしょう。

重要なのは「自分自身」

 また、「さまざまなストレスの種類の中でも『社会的ストレス』は問題がより根深くなっている」と、山岡先生は言います。

「情報が多い現代社会は、自分と他人を比較する基準もまた多いといえます。他者と比べることは、技術向上や自己研さんには必要ですが、過度な場合はストレスになってしまうのです」

 他者との比較によって劣等感を持ってしまい、それが原因でうつ病になってしまう場合も多いのだとか。

「ストレスを溜めないためには、『自分自身が心地よい』ことを意識しましょう。この際、他人との比較や、周りの顔色を伺うことをいったんストップして、自分にとっての快適な環境を探すのです」

 日々激変する社会的な立場や環境に左右される現代人にとって、簡単なようで難しいことかもしれません。

「どのストレスにもいえますが、自分の考え方が原因になっている場合があるのです。自分で自分を追い詰めず、ストレスの原因がどこにあるのか改めて考えることが、セルフメンタルケアのスタート地点といえます」

 ストレスと付き合っていくには、原因と向き合って、どのように考えれば楽になるのか、何をすれば解放されるのかなどを考えていく必要があるのですね。

 次回は、具体的なセルフメンタルケアに役立つ方法を山岡先生にうかがいます。

■お話を伺った方

山岡昌之さん

医学博士・心療内科医・心療内科専門医。日本摂食障害治療研究所所長、認定NPO法人日本心療内科学会副理事長、一般社団法人日本摂食障害協会副理事長、公益財団法人医療科学研究所評議員などを務める。著書に『ストレスの科学と健康』(朝倉書店)、『拒食と過食は治せる』『仮面うつ病』(以上、講談社)、『人はなぜ「いじめ」るのか』(シービーアール)、監修書に『働く人の新メンタルヘルス—心の健康[最新アプローチと職場復帰支援]』(社会保険出版社)、『心療内科医が教える 家庭でできるセルフメンタルケア』(徳間書店)など。

文◎熨斗秀信
写真提供◎Shutterstock

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