住まいの防音性を上げる 第2回

防音リフォームで生活音を抑える

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音の抜け道を遮断する

 一般的な防音対策において最初にすべきことは、音の抜け道を遮断することだと清水さんは話します。

「戸やシャッター、雨戸などを閉めるのはもちろん、建物にある隙間をふさがないと、空気を介して外部の音が入ってきてしまいます。具体的には、窓や扉、換気口などの隙間をふさぐ必要があります」

 ここからは具体的な対策を見ていきましょう。

窓を二重サッシにする

 窓は壁より薄く、密閉しても音が出入りしやすい建材です。そのため、防音対策においては窓を二重サッシにすると良いそうです。

「屋外側にサッシを付ける方がより効果的ではありますが、それだと工事が大掛かりになる上、費用もかかります。また、マンションでは勝手に外に窓を付けるのは不可能です。そこで、室内側に手軽に取り付けることができる二重サッシを付けると良いでしょう。

 既存の窓ガラスに内窓を取り付けて二重サッシにすると、気密性が上がり、空気が遮断されます。また、外窓と内窓の間に生まれる空気の層がクッションとなり、防音性が高まります」

LIXIL「インプラス

既存の窓にインプラスを取り付けるだけで、交通量の多い道路レベルの騒音が、図書館並に静かになります。工事に費やす時間は1窓あたり約60分※。戸建て住宅だけでなく、マンションにもおすすめです。
※現場の状況により施工時間は異なります。

 他にも、サッシが古くなってガタツキが出てきているなら、現在の窓枠を残しながら、既存のアルミサッシを断熱性の高いサッシへ変える方法もあります。さらに、ガラスもペアガラス、トリプルガラスを選べば、遮音にも断熱にも効果があります。

LIXIL「リプラス

壁を壊さず、足場も組まず、室内作業のみで施工が完了できるリプラスなら、一日でリフォームが完了。

カーテンを防音カーテンに変える

 窓を二重サッシにするのが難しい場合は、カーテンを防音カーテンに変えるだけでも効果があります。もちろん、二重サッシにした上で防音カーテンを取り付けると、遮音性をさらに上げることができます。

 防音カーテンがデザイン的に無理な場合、一般のカーテンから選ぶ際には、なるべく厚手で重量のあるものを選びましょう。ヒダも1.5倍より2倍のほうが望ましいです。また、隙間をつくらないよう、カーテンレールの両端や上部も覆うタイプのものがおすすめです。

換気口や換気扇の防音性を高める

 防音対策には換気口や換気扇への対策が欠かせません。最近は気密性が高い住宅も増えていますが、それでも換気口や吸気口があるので、外部から音が侵入しやすくなっているそうです。

「現在の住宅には、24時間換気が義務付けられています。しかし、新築してから5年以上経っていたり、全面内装工事をしていても5年以上経っていれば、建物の内装から出るシックハウスの問題はほぼなくなってくるので、この換気を1〜2時間ほどふさぐだけなら、問題ありません。

 外部の騒音が気になったときは、少しの間、換気口や吸気口をふさいでみると良いでしょう。連続して行う場合は、1~2時間ごとに窓を開けて空気の入れ替えを行って下さい。

 または一般の部屋の換気扇については、防音室に使う音をできるだけ透過させない防音換気扇に交換することも選択肢のひとつです」

ドアを防音扉に変える

 窓と同様、ドアは壁に比べて厚みがなく、わずかながら隙間ができてしまいます。窓に二重サッシを入れるのと同時に、ドアを防音扉に変えてみるといいでしょう。

「防音扉に変えるのが難しい場合は、ドアの隙間に隙間パッドや、それに代わるものを一時的に押し込むことで、音漏れを少なくすることができます。ただし、このドアの隙間を利用して24時間換気を行っている場合は、換気できなくなるので注意が必要です。

 防音扉を選択する場合でも、24時間換気対応の防音ドアもありますので、状況に応じてそれを選ぶと良いでしょう」

壁・床・天井を防音リフォームする

 窓や扉、換気口、吸気口などの隙間をふさいでも、望む防音効果が得られない場合は、壁や床、天井の防音リフォームを検討しましょう。

DIYでリフォームする

 比較的新しい木造住宅や、鉄筋コンクリートのマンションなどであれば、防音シートを貼るといったDIYのリフォームでも、ある程度の防音効果が得られる可能性があります。
 なお、市販の防音シートは遮音の効果しかないものが多いため、防音シートの上に吸音材を重ねるのがコツです。

 また、壁の振動音は広がっていくので、壁だけなく、床、天井もDIYでリフォームする必要があります。

LIXIL「OTTO Wall DECO

お部屋の壁に両面テープを貼るだけで、気軽にお部屋の壁に貼れる「音」のプロが作った吸音パネル。

本格的な防音工事を行う

 古い木造の場合、壁、床、天井の内部がスカスカなので、表面的な防音対策だけでは限度があるといいます。その場合は、壁、床、天井の内部にグラスウールなどの吸音材を入れ、仕上げ材の下に遮音材を入れたり、仕上げ材に吸音材を組み合わせたりする本格的な防音工事が必要になります。

 壁や床、天井の防音リフォームにかかるコストは、どのレベルまで防音するかによって工事方法と使用する素材や種類、リフォームする場所の広さによって大きく変わってきます。効率的で無駄のないリフォームのため、どの場所の、どんな音をどの程度抑えたいかを明確にした上で、防音リフォームを検討してみましょう。


→ 第3回に続く

〈お話を伺った方〉

清水煬二さん

ミタス一級建築士事務所 代表。一級建築士。神戸大学工学部建築学科を卒業後、2000年に現事務所を開設。住宅の設計と監理、住宅コンサルティング、住宅の耐久性や断熱、防湿、構造に対する工事指導、セミナーや講演でも活躍中。『TV劇的!大改造 ビフォー&アフター』にも匠として出演したほか、NHKテレビなどでもミタス一級建築士事務所のリフォーム実例が紹介された。

文◎八木麻里恵
人物写真◎神出 暁
画像提供◎ミタス一級建築士事務所・清水煬二/Shutterstock/PIXTA

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