ふるさとの「空き家」活用大革命[第2回]

低家賃の空き家を活用して、宿泊施設を兼ねた福祉施設を開設

空間
その他
関心
ライフスタイル老後リフォームお金

民泊が空き家対策に

 2018年6月15日より住宅宿泊事業法(民泊新法)が施行されました。これにより、それまで存在した民泊施設の多くが、法的に規制されてしまい、4万軒減少したともいわれています。

 しかし同時に、合法的な施設が次々と誕生し、宿泊施設としての認知度も高まりつつあります。
 2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、東京だけでなく、全国を旅して巡る外国人も数多く見込まれることから、さらに注目されています。

 とはいえ認可を受けるには提出書類が多く、個人ではなかなか面倒なため、民泊運営会社の協力を得るのが近道といわれています。実際、2019年上期で受理された件数は、新法施行時の6倍以上の1万3000件に増加。
 宿泊者数も200万人を超えたとも推定されていますが、多くは運営会社やその協力会社によって、新法をクリアしているようです。

 相変わらず、届け出をしない「ヤミ民泊施設」も残り規制の対象になっていますが、外国人だけでなく、日本人利用者もじわじわ増え、民泊もようやく市民権を得はじめました。
 特に、増え続ける空き家の利活用の一つとして、民泊は注目されています。

空き家を自力で許可を取り
宿泊施設兼福祉施設に

 そんな中、民泊運営会社の力も借りず、空き家を宿泊施設にして活動しているUNEというNPO法人が、新潟県長岡市の栃尾にあります。

「泊りがけで農作業や田舎の生活を体験してもらい、地元のばあちゃんの手料理や自家製のどぶろくを味わっていただきたくて、宿泊施設をつくりました」
 こう語るのは、UNEの代表理事を務める家老洋さんです。

食堂スペース。近所のおじいちゃんやおばあちゃんがつくるお昼ごはんが評判になっている。

 どぶろくの醸造免許を取った翌年の2016年に「簡易宿泊所営業免許」を取得。人口300人、世帯数110ほどの限界集落、栃尾の一之貝地区にUNEHAUSを開業しました。
 第1回で紹介した「あぶらげストリート」から車で10分あまり。
 便利とはいえませんが、美しい棚田や山の景色が広がる素晴らしい立地です。

 UNEとは、U=ユニバーサル、N=農園芸、E=越後の頭文字を取ったもので、実は宿の母体は、障がい者、高齢者、生活困難者、そしてスタッフが農業を軸に活動している福祉施設でもあります。

宿泊施設になりそうな空き家も点在

 当初は、中山間部で冬は雪が深い地域なので、「福祉施設もちろん、宿なんて無理」と思われていましたが、地道な交流の中から、いまでは地域にはなくてはならない存在になっています。

「一之貝地区には空き家が点在していて、UNEHAUSの近くにも、宿にできそうな物件があるんですよ」
 こう話す家老さんに集落を案内してもらうと、いくつもの立派な建物が、もったいないことに空き家になっていました。

家老さんが家主さんに貸してもらえるように相談中の空き家の一つ。

「相続で発生した空き家や、おじいちゃん・おばあちゃんが施設に入居したため無人になった空き家が、あちこちにあります。今後、持ち主に相談して貸してもらおうと思っています」

 築年数がたった古民家でも、雪国の建物なので体躯がしっかりしています。断熱を見直し、水まわりをリノベーションすれば、素敵な宿泊施設になりそうです。なにしろ、景色も素晴らしいし、おいしい食べ物やお酒も魅力です。

 ただ、民泊施設にするにはなかなかハードルが高いそうで、UNEHAUSも認可を受けるのに相当苦労したそうです。それでも、宿泊施設にして、地の食べ物お客様に喜んでいただければ、この地域の活性化に役立つはずという思いが強いそうです。

 また、各地の障がい者施設では、就労支援を兼ねて障がい者がさまざまな仕事を行っていますが、多くの売り上げを期待できずに「補助金頼り」となっている施設も少なくありません。
 しかし家老さんは、障がい者に加え、生活が厳しい人たちも働ける環境を整え、自立できる事業を目指しています。第3回では、その事業をご紹介していきましょう。

(第3回につづく)

お話を伺った方

家老 洋さん

大学時代農業土木を学び、(社)国際農友会(現国際農業者交流会)に勤務、7年間ドイツ勤務を経て帰国、故郷長岡市に戻り測量の仕事に従事。同市市議会議員を3期12年務めたあと、NPO法人UNEを立ち上げ、社会の弱者が農業を軸に自立できるように活動を続ける。現在、空き家を利用した民泊施設を運営。

文・撮影◎三星雅人

リクシルオーナーズクラブ(年会費無料)