新築1年 我が家は何をすべきなのか!?[第3回]

1年目限定、「タダで直せる」不具合チェック

空間
その他
関心
防災防犯お役立ちサービス

新築1年目の我が家のメンテナンスをどうすればいいのかを、不動産や住宅に関して数多くの著書を書かれている椎名前太さんにお聞ききするシリーズ最終回は、家を建ててくれた施工業者さんにお願いできるメンテナンス作業について伺います。

1年目の点検だからこそお願いしやすい細かな作業

 家の中や周辺をチェックしてみると、大きな不具合はもちろん、こまかな「こうだったらいいな」という点も見えてきます。

「じつは、そんなところこそ、1年目の点検と補修の時にお願いしてみると、無償で補修をしてもらえる可能性があるんです」という椎名さん。

「前回お話しした、壁材の収縮で生じた壁紙の剥がれやフローリングのゆがみ、床の鳴きなどはもちろん無償でお願いできますが、たとえば自分でうっかり付けてしまった壁紙の傷や、家具を引きずってできたフローリングの軽い傷なども、無償で請け負ってくれることが多いですね」

 こういった補修用のキットは、ホームセンターに売られているものとほぼ同等とのこと。けれど、補修になれたスタッフが作業すればあっという間に、素人がやるよりずっときれいに仕上げてくれます。

「ちょっとしたサービスをすることで、感激したユーザーがSNSでアップしたりして評判のよさが広がり、新しい受注に繋がりますからね」

建具の調整もお願いしてみる

 傷以外にも、ドアまわりなどの建具の調整もお願いできるといいます。

「タオル掛けなどのぐらつきや、ドア、キッチンの収納の扉などの立て付けやマグネットでのキャッチャーの調整も、ドライバー1本でできるとはいえ、知識があるスタッフにお願いした方が確実です。こうしたちょっとしたこともお願いしてみると、大抵はその場で対応してくれるものです」

 自分でやるとネジ山をなめてしまったり、ドライバーで壁を傷つけてしまったりするものですから、ぜひお願いしてみましょう。

「他にも、バーチカルブラインドの開きの方向を変えるとか、カーテンレールの位置を少しだけずらしたいなど、住んでみるとわかることもあります。ピクチャーレールのないところに絵を掛けたい、などという要望もありますが、壁の裏側になにがあるのかなどを調べる『壁裏センサー』『下地センサー』などと呼ばれる道具が必要になります。もちろんこうしたものも持っていますし、図面も残っているので、有償になるかもしれませんが、外部の業者に任せるより安心してお願いできます。業者さんによっては、『この程度なら』と無償でやってくれるところもあります」

有償でお願いできることも

 こうした、有償の変更も、家を建てた会社にお願いした方がいい場合がたくさんあります。

「たとえばコンセントの位置。テレビの位置を変えたいとか、コンセントが足りない、家を建ててみてから料理に目覚めてしまってキッチンに調理用具用のコンセントを増設したいなど、意外に要望が多いようです。こちらは、もちろん資格を持ったスタッフによる電気工事なので有償になりますが、別の業者に頼むより安く上がることもあります。収納の作り付けの棚の棚板などを増やしたい場合も、ユニットものなら部材があるはずなので、有償ですが、この機会に注文するといいでしょう」

 もうひとつ、1年目で多い変更点が「エアコンの増設」だそうです。いまは壁の中に配管や配線を行っている家屋が増えています。増設の場合、この『隠蔽配管』は行えないので、外部の業者さんに設置してもらってもいいでしょう。

 また、昨今の台風の被害を見て、当初付けていなかった「雨戸」を付ける、などという大がかりなものも考えられます。

「雨戸は、防犯の意味でもあったほうがいい設備だと思います。防犯という点では、最近は監視カメラを取り付けたり、警備会社と契約する家も増えています。監視カメラそのものは自分でも簡単に取り付けられますから、最初に付けた分では足りない、という場合、自分で増設するのもいいでしょう」

 防犯は、防災とともに大切な要素。ご近所の方に治安のことなどを尋ねて、必要なことを加えていくのもいいでしょう。

大切なのは丁寧な相談と打合せ

 新築の一軒家。1年目のメンテナンスは、新築であるがゆえに大丈夫だろうと思っていても、こうしていくつもチェックすべきことがあります。

「1回目のときにお話ししましたが、繰り返させていただくと、住んでいて感じたことは、常にメモなどに残しておきましょう。細かいことも、1年目にはお金をかけずに解消できる項目がたくさんあります。家本体は10年の保証がありますが、設備や家電などはそれぞれ保証期間が違います。気になる部分をきちんと記録しておけば、1年目、3年目、5年目、10年目と、節目節目に検討して早めに手を入れることができます」

 一軒の家に住み続けていくと、生活も、家族構成も、趣味なども変わっていくものです。その時その時に必要なメンテナンスやリフォームをして、楽しく、住み心地のいい、安心できる住まいに育てていきましょう。

お話をうかがった方

椎名前太さん

住宅ジャーナリスト。
複数の会社で営業職を経験し、在職中に自宅を建築、大満足したことから「多くの人にこ充実感を味わってほしい!」と住宅ジャーナリストに転身。書籍の執筆・編集協力の実績は30冊以上、その他雑誌やWebでも精力的に執筆。ブログ「住宅・不動産ライター椎名前太の業務日記」がある。
「こだわりの注文住宅比較」は月間約15万ページビュー。宅地建物取引士。

文◎坂井淳一 撮影◎末松正義

リクシルオーナーズクラブ(年会費無料)