木造の家は、2年くらい動き続ける
一戸建ての家も、工法によってさまざまですが、その多くは木造をベースにしています。鉄筋コンクリートや鉄骨を使ったものもありますが、すべてコンクリートということはありません。大抵は木材をどこかに使っています。
「木材というのは天然素材ですから、収縮したり膨張したり、反ったりすることがあります。無垢材はもちろんのこと、合板でも、湿気などによって木材が伸縮します。およそ2年は動き続けると言われていますが、1年目に、その兆しをチェックしておくことが大切です」
たとえば、壁に貼られた壁紙。継ぎ目が剥がれてきたり、広がってきたり、ということがたびたび見受けられるそうです。
「これは壁に使われている木材が伸縮したり、組み立てた時に若干狂っているのをそのままにしたことで現れます。あまり大きなものでなければ強度的にも問題なく、継ぎ目を埋めたり、壁紙を補修することで対処できます」
また、フローリング材のゆがみや音鳴りなども、木材の収縮や反りによって生じることがあるそうです。
「これは、表面を削って平滑にしたり、フローリング材の継ぎ目に樹脂や補修材ワックスなどを塗ることで解決できます。もちろん、家が傾いている場合などは根本的な問題を抱えているのですが、壁紙の剥がれやフローリングのゆがみは1年目の点検時に、原因がどこにあるのかをきちんと判定してもらうといいでしょう。
根本的な施工不良や欠陥はないか
現代の一戸建ては、鉄筋の入ったコンクリートで基礎をしっかり打ちます。けれど、地盤が軟弱だったり、コンクリートの質が悪い、施工時にきちんとコンクリートが固まっていなかったなどの理由で、建物の骨組みのゆがみなど、看取できない問題が生じることがあります。
「基礎にクラック(ひび割れ)が入ることもありますが、これはよっぽどのことです。家の周辺をぐるりと回って基礎の状態をチェックしてみるといいでしょう。ただし、問題のあるクラックは、幅0.3mm、深さ4mm以上の『構造クラック』と呼ばれるものです。それより細い、通称ヘアクラックと呼ばれるものは強度的な心配はありません。見た目を気にするなら、樹脂やモルタルを塗って補修することもできます」
結露や水漏れにも注意を
いまの戸建て住宅は、建築基準法で24時間換気システムの設置が義務づけられています。これはモーターを使ってファンを回し、家の中を換気するシステムです。
「よく、『新築なのに結露がすごい』という話を聞きますが、そういう方は、電気代がもったいない、音がうるさいなどの理由でこのシステムを停止している方が少なくないようです。頻繁に窓を開けるから大丈夫という方もいらっしゃいますが、やはり家の健康を考えるとこのシステムは必要です。有償になりますが、音が気になる方は点検の時にファンの移設などを相談してみるのもよいでしょう」
雨や雪、強い日差しを経験して分かることも
さらに、1年住んでみてこそわかることもあります。
「たとえば、換気扇がきちんと排気されているか。浴室がきちんと換気されているか。浴室の換気が適切でないと裏側にカビが生え、健康にもよくありません。また、大雨が降った時でないと、きちんと組み付けていないために雨どいから水がこぼれるとか、ベランダに適切な傾斜がないために排水ができないので水たまりができるとか……。このようなことなどは、実際に毎日住んでみないとわかりません。とくに、ベランダに水がたまると、木部が腐ってしまいますから、きちんと調整を依頼しましょう」
建築家の手による注文住宅はより一層の注意を
現代の一戸建ては、工場で部材を作り、それを現場で組み立てる方法がほとんどで、昔のように現場で大工さんが木を切ったり、かんながけで一から削る、ということはほとんどありません。それは、建築家がゼロから設計した住宅でも同じです。けれど、そうした住宅は、1年目のチェックがより大切なのだそうです。
「というのも、各部の部材が規格化されているメーカーの製品に比べ、一個ずつ設計された住宅は『初めて作る』部材が多いのです。いままで作ったことがないものも少なくありません。設計通り組み付けても、変化することがないとは言いきれません。もしひとつの部材が大きく狂ったときに、換えの部材はありませんから、その部分は作り直しになります」
フルオーダーで住宅を作る場合には、そうしたことに対する心構えも必要なようですね。
Vol.3では、実際に、業者さんにどんなメンテナンスを頼めるかについて伺います。
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