小さな変化も見逃さずチェック
現在、住宅の外壁材の主流となっているのは「窯業系サイディング」です。
「コストパフォーマンスに優れ耐火性の高い窯業系サイディングではありますが、一番の大敵は、外壁の隙間から内側の基材への雨水の侵入です。きちんと防水できているかどうか、普段から目地シーリングの劣化や窓枠まわりに変化がないか確認しておくといいでしょう」
こうアドバスするのは、高気密住宅から小さなリフォームまでを幅広く手掛ける吉田工務店社長の吉田誠治さんです。
窯業系サイディングの場合、気温変化などによる膨張や収縮で外壁材同士がぶつかり合ったり反ったりして破損してしまうことから、一定の隙間を空けて壁面に貼り付ける必要があります。この隙間である「目地」にコーキング(シーリング)剤を注入し、緩衝させ防水性を高めています。
また、サイディングのボードは釘やネジで固定されます。一般的な木造住宅は釘の頭は補修液(タッチアップ)で補修して、下地が鉄骨でサイディング本体をビスで留める物件の場合は、頭の上をパテ埋めして防水しています。
サイディングボードを固定する釘やネジの頭はタッチアップやパテ埋めにし、ボードのつなぎ目はコーキングで防水処理をする。(写真提供:吉田工務店)
外壁の内側に雨水が入り込むと、外側からは気がつかないうちに劣化が進みます。その侵入ルートは、コーキングが劣化したつなぎ目や壁の基材に打ち付ける釘やネジの浮きからと考えられます。
「塗装表面の劣化だけでなく、サイディングボードの反りやうねり、地震などによるクラック(ひび)、釘やネジの浮きなども外壁のチェックポイントになります。これらはご自身でも目視できるでしょう。このような症状が現れたら補修が必要なので、プロに相談してください。一見、大した劣化ではないように思っても、実は内部からの傷みが進行して深刻化していることも考えられるからです」
雨が直接当たる部分と軒で守られている部分とでは、劣化の進行に明らかに違いがあります。また、日の当たる部分は紫外線や熱によるダメージが大きいものもあります。メンテナンスは、外壁全体を一気に行う必要はありません。劣化したところを補修していけばいいのです。
定期的なお掃除を
何らかの原因で雨水が外壁内側に入り込みが、凍結により膨張して外壁を破損させた。
凍害により剥がれ落ちた外壁。
(左右とも写真提供:吉田工務店)
「窯業系サイディングの場合、塗料を塗り替えたり、ボードのメンテナンスさえしていれば、メーカーのカタログ通りの耐用年数はもつと思います。ただ、自然環境以外にも外壁自体の性能を低下させてしまう要因がいくつかあります」
例えば、換気扇のように室内と室外の通り道がある場合。もし換気フードが目詰まりを起こすようなことがあると、サイディングと断熱材の間の通気層に湿気が漏れ出し、それが冬の寒さから凍りつくことがあります。「凍害」です。サイディングの裏側が膨張して外壁を傷めるのです。
また、軒のない住宅の場合。南側の2階の窓枠から外壁の内側に雨水が浸入し、それが凍りついて膨張し、外壁が剥がれ落ちたという例も。新築10年目の出来事で、他の場所は問題がなかったそうです。このように、1軒の家でも箇所によって外壁の寿命は大きく異なるのです。
そして、サッシ下の伝え水はサイディングを汚し、窓枠から雨水がサイディングの内側に入ることもあります。換気フード周辺の油汚れや建物下部の藻、コケの汚れも、サイディングの寿命を短くする可能性があります。藻やコケ汚れ専用の洗剤は市販されているので、建物下部の汚れ掃除は定期的に行うように意識しましょう。
外壁の塗り替えの際に、プロが高圧洗浄機を使用して汚れを落とすこともありますが、それはその後塗装を行うことが前提です。シーリング目地を含め外壁そのものを傷めないように、水を当てる角度や圧力を微妙に調節しているのです。また、スチーム洗浄はサイディングの塗装やシーリング目地に間違いなくダメージを与えるので、絶対にやらないようにしてください。
素人でも補修はできる!?
プロが使用する専門の道具や塗料。
(写真提供:吉田工務店)
窯業系サイディングの補修剤はホームセンターにも売っていますし、さまざまな塗料も手に入ります。釘やネジの浮き、クラックの応急修理は素人でもできなくはありません。
「ご自身で修理する場合は、あくまでも応急処置と考えてください。脚立やハシゴに乗っての高所作業は危険ですのでやめましょう。プロに任せることをおすすめします。
また修理したつもりでも、原因が外壁の内側にあってほころびを広げてしまう可能性も。生兵法は怪我のもと。長い目で見れば、プロに任せたほうが家の寿命をずっと伸ばし、結果的には安上がりなのです」
定期的なメンテナンスで、見栄えが良く家を長持ちさせる“外壁ビューティ”をキープしましょう。
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